第2話 どうしたんだ?
「おい、諒。
何、ボ〜ッとしているんだよ・・・」
「(ビクっ!)」
5時間目が終わった休み時間。
机に座っていた僕は、イキナリ話しかけられビックリした。
「何だ、螢一か・・・」
「”何だ”じゃないだろ。
どうしたんだ、お前。
昼休みが終わってから、ずっとその調子だろ」
僕に話しかけて来たのは、浜山 螢一。
僕とは正反対の、スポーツ人間で、陸上部に所属していたが。
何故か馬が合い、いつの間にか友達になっていた。
螢一は、もうすぐ大会と言う事もあり、落ち着いて居られないとかで。
特に最近は、昼休み時間も練習しているのだ。
「昼休み、何か有ったのか?」
「・・・いや、別に何にも無いよ」
「だったら良いが、授業中もそうだと、指されるぞ」
「わかったよ」
そんなに呆けていたのか・・・。
授業中、気を付けないと。
*********
6時間目の授業中。
・・・
「(ボ〜っ)」
授業が始まって、最初の方は気を付けていたが。
次第に、昼休みの時を思い出し、意識が内側に向かって行った。
「(しかし、綺麗だったなぁ・・・)」
僕は、あの綺麗な女の子の事を考えていた。
小さい顔だけど、目が大きく、やや切れ長で鼻筋が通っていて。
身長が女子にしては、高めで。
だけど、かなりの細身なので、モデル体型に近い。
髪は背中までの黒髪で、ツヤツヤしていた。
それらを引っくるめて、一言で言えば。
“和風美人”と言えるだろう。
しかし何より、一番目に付くのは、その雰囲気である。
今時、居ない様な、落ち着いたオーラを纏わせた姿は。
“和風美人”と言う印象を、一層強めている。
だが、そう言うと、何だか冷たくて近寄りがたいと思われるが。
それとは別に、ふんわりとした心地良い感覚も同時に有るので、冷たさを感じられなかった。
例えるなら。
真夏の木陰に入って感じる、涼風の様な物か。
そう、彼女の事を例えて言うなら。そう言えるだろう。
・・・
*********
「・・・ま!」
「(ボ〜っ)」
「・・・ぬま!」
「(ボ〜っ)」
「・・・かみぬま!」
「(ボ〜っ)」
”ビューーーーン”
”ビシィ!”
「イテッ!」
「お前は授業中、何をボケッとしている!」
「(・・・クスクスクス)」
チョークを投げられたらしく、額に突然痛みが走ると同時に。
壇上の先生の声と、周囲の笑い声が聞こえた。
どうやら、ボケッとしている間に、先生に指されたみたいである。
しかし相変わらず、この先生のチョーク投げの腕前は、百発百中だ。
「ここの問題の答えは何だ!」
「えっ、え〜と・・・」
「お前は、授業中に何をしている。
なんなら特別に、お前だけ課題を出そうか?」
「い、いえ、遠慮します・・・」
「だったら、授業を聞かんか!」
「(・・・クスクスクス)」
授業中に、自分の世界に入っていたら、先生に叱られ。
周囲の笑い物になった。
あれ程、螢一に注意されたのに。
トホホ・・・・。