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夏の涼風  作者: 海獅子
18/36

第18話 木陰のハグ

 その日の放課後。



 授業が終わると最近の習慣で、図書室に向かうのだが。

今日は先輩から、例の木陰に来て欲しいとリクエストがあった。


 図書室で会話すると、延々と独り言をしているみたいに見えるので、僕が不審がられるし。

特に、ここ2、3日会ってなかったから、周りに気兼ねなく、会話したいと言う事らしい。



 ・・・



 先輩の正体と身の上を聞いて、あれから僕は。

先輩をどうすれば一番良いのか、午後の授業中、考えていた。


 おかげで、授業を聞いてなくて、先生に指されてしまったけど。



 ・・・



 そうして考えた結果。


 先輩は、存在がどうであれ。

このままだと、いつまでも、この学校に縛られるかもしれない。


 それでは、あんまりではないか。


 せめて、弟さんの所に送ってやるのが一番良い気がする。


 せっかく、出会えたのに寂しい気もするが、それが先輩の一番の幸せだと思う。


 そう思いながら僕は、あの木陰へと向かった。




 *********




 ・・・



 今、僕は、例の木陰に居る。


 さすがに夕方でも、まだ太陽は角度があって。

空は、突き抜けるような青さが残っている。


 でも木陰に吹く風は、昼間よりも涼しい。


 そんな中、僕は今、先輩を両足の間に入れ。

後ろから、抱き締めながら座っているのだ。


 なぜ、こんな状態になっているかと言えば・・・。



 ・・・



 例の木陰に着いた。


 しかし、いつもの様に、先輩はまだ居ない。


 僕が着いてから、姿を見せるのが、いつものパターンだからだ。


 そう思い、先輩を待っていると。




 「お待たせ♡」


 「わっ! あ〜、ビックリしたぁ〜」


 「驚いた? ごめんね♡」




 僕の横に、先輩が突然出現した。


 予想以上の現れかたに、思わず驚いた。


 しかし、先輩は悪気があるようには見えない。


 相変わらず、この人?は、も〜。




 「ねぇねぇ、そこに座って、ねっ」




 僕がそんな風に思っていると、先輩が急にそんな事を言った。


 先輩は、思いっきり甘えるような表情で、僕を見ている。


 先輩の様な清楚な美人に甘えられると、弱いので。

仕方なく僕は、校舎の段差に座った。




 「よいしょっと」


 「わっ、わあっ」




 先輩が、座った僕の脚の間を無理やり開き。

その間に、強引に座った。


 そして、僕の腕を取ると、じぶんの身体に巻き付ける。




 「ちょっ、ちょっと!」


 「久しぶりに、諒くんに会えたからスキンシップをしたいんだけど。

だめかな・・・?」



 僕が、先輩の強引な行動に、抗議しようとしたが。

先輩が振り返り、上目遣いで(うかが)うような視線で、僕を見た。




 「もお〜、しょうがないですね〜」


 「ありがとっ♡」




 僕は、その視線に負け、渋々了承すると。

先輩が、一転して笑顔で、そう言った。



 ・・・



 そんな訳で、こんな状況になっていた。


 先輩に聞かないとイケナイ事があるけど。

出だしを挫かれたので、聞くタイミングを掴めない。




 「諒くんの身体は、男の子だから大きくて。

抱き締められていると、包み込まれている様で、とても気持ち良いの」




 ウットリする様な声で、そう言う先輩。


 僕も先輩を抱いていると、気持ちが良い。


 夏だけど、先輩の体温は幽霊?なのもあるのか。

ヒンヤリして、とても気持ち良い。


 しかし、同時に、柔らかい感触と良い匂いを感じると。

心臓がドキドキする。


 特に、脚が痛い位に大きなお尻と、腕に感じる胸の感触が。

僕を、とても落ち着かせなくしてしまう。


 かと言って、離れようと言う気にもなれない。


 ずっとこのままで居たいと言う、矛盾した感情もあったのだ。


 そうやって、先輩の感触を感じている内に。

僕は聞かなければならない事を、しばらく忘れてしまっていた。



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