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夏の涼風  作者: 海獅子
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第15話 やっと会えた

 先輩の事が何となく分かった僕は。

その事を直接、先輩に聞いてみたい思い、図書室へと向かう。


普通、そんな事になったら恐怖で、その場を退散するのだろうが。

なぜか僕は、先輩の事が怖いとを思わなかった。




 「(先輩は来るかな・・・?)」




 僕は、期待と不安を同時に感じつつ、先輩を待っていた。



 ・・・



 結局、昼休み中待ったが、先輩は来なかった。




 *********




 それから二日、昼休み、放課後と図書室に通っていたが。

それでも先輩は、姿を見せなかった。


 少なくとも、先輩と出会ってから、こんな事は初めてである。


 それで今日の昼休みは。

図書室ではなく、あの大木の所に来てみた。




 ”図書室と校舎外れの大木の所で多く目撃されている”




 あの噂話を信じて、ここに来たのだ。




 「先輩、今日こそ会えるかな?」




 そう思い、木陰で腰を下ろして、待っていると。




 「・・・諒くん、来たんだね」




 隣から、先輩の声がした。


 その声を聞いて、僕は思わず立ち上がる。




 「涼子先輩! どうしたんですか?」


 「・・・諒くん、私の正体に薄々気付いたでしょ」




 2日間会えなかった焦りに、思わず先輩に問い詰めようとしたが。

しかし先輩は、イキナリ僕にそう言ったのだ。




 「えっ・・・」


 「諒くんの思った通り、私は人間じゃないの」




 そう言って、悲しそうな笑顔になった。




 「諒くんは、私の事が怖くないの?」




 先輩が僕の顔を、不安気な表情で、覗き込む様にして見ている。




 「いいえ、怖くないです」


 「えっ!」


 「だって、こんなに側に居て、居心地の良い存在が。

人を呪ったり、(たた)ったりする訳が無いじゃないですか」


 「・・・」


 「それじゃ、先輩は誰かに取り憑いたりしたんですか?」




 僕がそう言うと、先輩が首を横に振った。




 「じゃあ、それで良いじゃないですか。

先輩は、先輩でしょう?」


 「諒くん・・・」




 先輩がそう呟く(つぶやく)と、イキナリ僕の胸に飛び込んだ。


 そんな先輩を僕は、しっかりと抱き止める。


 僕の腕の中に居る先輩は、とても幽霊だとは思えない。


 まず、人一人分の質量は確実にある。


 それに、この柔らかな感触と甘い匂い。

どこからどう見ても、人間の女の子にしか見えない。




 「良かった・・・、図書室で、私が急に消えた後。

諒くんが3年の教室を駆け回って、私を探しているのを見たら。

もう正体がバレて、君に会えなくなるんじゃないかと不安になったの・・・」


 「・・・」


 「だから距離を置いてみて、私を避ける様になっていたら。

君の事を諦めるつもりだったのよ」




 僕は先輩の話を黙って聞いていた。




 「でも、諒くんの事を諦めなくて良かったんだね」


 「僕は、先輩の事を嫌いになんか成れませんよ」


 「良かったぁ・・・」




 そう言って僕は、先輩に微笑み掛けた。


 それを見た先輩が、嬉しそうにしながら。

僕の肩に頬を乗せると、身を僕に(まか)せていた。


 僕は、先輩の柔らかだけど、少しヒンヤリした感触を感じながら。

二人は、お互いに抱き合っていたのだった。



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