第12話 先輩、あなたは一体・・・
それから数日後。
放課後になり、いつもの如く。
僕は、図書室に来ていた。
当然、涼子先輩も来ていて、僕にジャレ付いていた。
「もお先輩、止めてくださいよ〜」
「ふふっ、い・や・よ〜♪」
椅子に座っている僕の背後から、首に抱き付き、頭に顎を乗せている。
首に巻きついた腕の苦しさも少しあるが。
それよりも、後頭部に当たる柔らかい感触と、漂う甘い匂いに。
僕は、ドキマキしていた。
そうやって、二人でジャレ合っていると。
「ちょっと、君!
ここは図書室よ、静かにしなさい!」
僕の横から、声がした。
そちらの方を見上げると、あの、おかっぱ頭に眼鏡をした”委員長”風の図書委員の娘が居た。
「いっつも、一人でブツブツ独り言をいってるでしょ。
それが耳障りになってしかたないのよ!」
そう言って、腕組みして怒っていた。
一人で? 先輩は?
僕は彼女の言葉に、頭にクエスチョンマークを浮かべた。
「一人って、先輩が・・・」
後ろに指を差し、振り返ると。
「あれ?」
「一体、後ろに誰が居るのよ」
後ろに居るはずの先輩が居なくなっていた。
同時に、僕の首に巻きついていた腕の感触も消えている。
「はあ〜、独り言といい、ホント頭大丈夫なの?
とにかく、ここでは静かにしなさいね!」
「・・・は、はい」
僕は、今まで居た先輩が、蒸発したかの様に消えた事に混乱していた。
こう言うのを、狐につままれると言うのだろうか?
しばらくの間、僕は椅子に座りながら呆然としたのだった。
*********
その翌日。
一時間目が終わり、僕は急いで教室を飛び出す。
昨日、先輩が忽然と消えた理由を知りたいかった。
その思いで、先輩に会いに僕は、3年C組へと向かう。
・・・
「す、すいません」
3年C組に着くと、出入り口付近に居た、女子生徒に尋ねてみる。
「あ、あの〜、すいません・・・。
芝山 涼子先輩は居ますか?」
と僕は言うと。
「えっ? このクラスに、そんな名前の娘は居ないよ?」
「ええっ?」
そ、そんな、それじゃあ隣のクラスかな?
「す、すいません、多分間違えました。
隣のクラスで聞いてみます」
「んん・・・、多分、隣のクラスにもそんな名前の娘は居ないよ」
僕が聞いた女の子は、そう言って教えてくれた。
僕は、その足で、隣のクラスに行こうとしたが。
もうすぐ次の授業が始まる為、一旦、自分の教室に戻ることにした。
・・・
その後も、休憩時間になると、3年の教室に向かい尋ねるが。
その度に。
「そんな名前の娘は居ないよ」
と答えが帰った。
・・・先輩、あなたは一体、何なんですか?
僕は、先輩の事が分からなくなってしまった。




