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夏の涼風  作者: 海獅子
12/36

第12話 先輩、あなたは一体・・・


 それから数日後。


 放課後になり、いつもの如く。

僕は、図書室に来ていた。


 当然、涼子先輩も来ていて、僕にジャレ付いていた。




 「もお先輩、止めてくださいよ〜」


 「ふふっ、い・や・よ〜♪」




 椅子に座っている僕の背後から、首に抱き付き、頭に顎を乗せている。


 首に巻きついた腕の苦しさも少しあるが。

それよりも、後頭部に当たる柔らかい感触と、(ただよ)う甘い匂いに。

僕は、ドキマキしていた。


 そうやって、二人でジャレ合っていると。




 「ちょっと、君!

ここは図書室よ、静かにしなさい!」




 僕の横から、声がした。


 そちらの方を見上げると、あの、おかっぱ頭に眼鏡をした”委員長”風の図書委員の娘が居た。




 「いっつも、一人でブツブツ独り言をいってるでしょ。

それが耳障りになってしかたないのよ!」




 そう言って、腕組みして怒っていた。


 一人で? 先輩は?


 僕は彼女の言葉に、頭にクエスチョンマークを浮かべた。




 「一人って、先輩が・・・」




 後ろに指を差し、振り返ると。




 「あれ?」


 「一体、後ろに誰が居るのよ」




 後ろに居るはずの先輩が居なくなっていた。


 同時に、僕の首に巻きついていた腕の感触も消えている。




 「はあ〜、独り言といい、ホント頭大丈夫なの?

とにかく、ここでは静かにしなさいね!」


 「・・・は、はい」




 僕は、今まで居た先輩が、蒸発したかの様に消えた事に混乱していた。


 こう言うのを、狐につままれると言うのだろうか?


 しばらくの間、僕は椅子に座りながら呆然としたのだった。




 *********




 その翌日。



 一時間目が終わり、僕は急いで教室を飛び出す。


 昨日、先輩が忽然と消えた理由を知りたいかった。


 その思いで、先輩に会いに僕は、3年C組へと向かう。



 ・・・



 「す、すいません」




 3年C組に着くと、出入り口付近に居た、女子生徒に尋ねてみる。




 「あ、あの〜、すいません・・・。

芝山 涼子先輩は居ますか?」




 と僕は言うと。




 「えっ? このクラスに、そんな名前の娘は居ないよ?」


 「ええっ?」




 そ、そんな、それじゃあ隣のクラスかな?




 「す、すいません、多分間違えました。

隣のクラスで聞いてみます」


 「んん・・・、多分、隣のクラスにもそんな名前の娘は居ないよ」




 僕が聞いた女の子は、そう言って教えてくれた。


 僕は、その足で、隣のクラスに行こうとしたが。

もうすぐ次の授業が始まる為、一旦、自分の教室に戻ることにした。



 ・・・



 その後も、休憩時間になると、3年の教室に向かい尋ねるが。

その度に。




 「そんな名前の娘は居ないよ」




 と答えが帰った。


 ・・・先輩、あなたは一体、何なんですか?


 僕は、先輩の事が分からなくなってしまった。



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