表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏の涼風  作者: 海獅子
11/36

第11話 木陰の膝枕

 その翌日の昼休み。



 今日もまた、空調は治ってない。


 したがって、今日の授業も灼熱地獄だった。


 授業の最中、生徒の(ほとん)どが机に沈んでいた。


 普通だと、先生の怒鳴り声が飛んでくるのだが。

その先生自体が、授業するのが精一杯で、声を出す気力すらなかったのである。




 *********




 今日も、いつもの様に、食堂で昼食を取っているけど。

サウナ状態なった食堂で、食欲がほとんど湧かない中。

食べられる分だけ胃袋に入れると、急いでサウナ状態の食堂を後にした。




 「ふう〜・・・」




 暑さでバテたのに加え、無理やり胃袋に食べ物を詰め込んだせいで。

フラフラになったまま、僕は例の木陰に着いた。


 木陰に着くと、校舎の段差に腰を下ろし。

体に当たる涼風の快感に、一息、息を()く。




 「(あ〜、キツかった〜)」




 涼風を体に受け続けていると、次第に体から力が抜けていった。



 ・・・



 「(ふわっ)」




 しばらく涼風を受けている内に、意識が段々薄くなって行く。


 そんな薄い意識の中で、僕は突然、後頭部に柔らかな感触を感じた。


 柔らかい感触を感じてから少しして、とても甘い匂いが漂って来て。


 それと同時に、何かが頭を滑り出した。


 頭をある存在は、優しく滑って行き、まるで僕を(いと)おしむ様だ。




 「・・・ん?」


 「うん? 気が付いた?」




 頭を滑る存在の気持ち良さに、(かえ)って目が冴えた僕は。

少しづつ目を開いて行くと、なぜか目の前には笑顔の先輩が居た。


 笑顔の先輩は、僕を面白そうに見ている。


 そして僕は、目が覚めるにつれ、自分の状況に気が付く。




 「えっ?」




 気が付くと、僕は先輩に膝枕をされていたのだ。




 「せ、せんぱい!」


 「ん?」


 「僕は一体・・・」


 「ふふっ、諒くん。

私がここに着いた時、諒くん寝ながら横に倒れ掛かっていたんだよ。

だから、倒れる前に私の膝に頭を乗せたの♡」




 そう言って、可笑(おか)しそうにしている先輩。




 「昨日、放課後、図書館に行かなかったから。

ここに急いで来たら、諒くんが、眠りながら倒れそうになってたのが、見えたのよ」




 先輩が、続きを言いながら、僕の頭を撫でている。


 僕は、先輩の話を聞いて、次第に頬が熱くなってゆく。


 すると、それを見た先輩が、今度は熱くなった僕の頬を撫でてくれた。


 熱くなった頬に、先輩のヒンヤリとした手の感触が心地良い。




 「何か諒くん、バテてる様に見えるから。

しばらく、私の膝で休んでて良いよ」


 「すいません、先輩・・・」


 「ふふっ、良いのよ♡」




 申し訳無さそうに言う僕に先輩は。

優しい瞳で、微笑み掛けてくれる。




 「まだ時間もあるから、このまま寝てなさい」




 僕は、先輩の言葉に甘え、膝枕をされたまま寝る事にした。


 そのまま瞳を閉じると。

流れる涼風、頭に感じる柔らかさ、周囲に漂う甘い匂い、そして僕を撫でるヒンヤリとした手。


 それらを受けている内に僕は。

再び、意識が薄くなっていった。



 ・・・



 こうして僕は、先輩の太股に膝枕をしたまま、昼休み中寝ていたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ