第11話 木陰の膝枕
その翌日の昼休み。
今日もまた、空調は治ってない。
したがって、今日の授業も灼熱地獄だった。
授業の最中、生徒の殆どが机に沈んでいた。
普通だと、先生の怒鳴り声が飛んでくるのだが。
その先生自体が、授業するのが精一杯で、声を出す気力すらなかったのである。
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今日も、いつもの様に、食堂で昼食を取っているけど。
サウナ状態なった食堂で、食欲がほとんど湧かない中。
食べられる分だけ胃袋に入れると、急いでサウナ状態の食堂を後にした。
「ふう〜・・・」
暑さでバテたのに加え、無理やり胃袋に食べ物を詰め込んだせいで。
フラフラになったまま、僕は例の木陰に着いた。
木陰に着くと、校舎の段差に腰を下ろし。
体に当たる涼風の快感に、一息、息を吐く。
「(あ〜、キツかった〜)」
涼風を体に受け続けていると、次第に体から力が抜けていった。
・・・
「(ふわっ)」
しばらく涼風を受けている内に、意識が段々薄くなって行く。
そんな薄い意識の中で、僕は突然、後頭部に柔らかな感触を感じた。
柔らかい感触を感じてから少しして、とても甘い匂いが漂って来て。
それと同時に、何かが頭を滑り出した。
頭をある存在は、優しく滑って行き、まるで僕を愛おしむ様だ。
「・・・ん?」
「うん? 気が付いた?」
頭を滑る存在の気持ち良さに、却って目が冴えた僕は。
少しづつ目を開いて行くと、なぜか目の前には笑顔の先輩が居た。
笑顔の先輩は、僕を面白そうに見ている。
そして僕は、目が覚めるにつれ、自分の状況に気が付く。
「えっ?」
気が付くと、僕は先輩に膝枕をされていたのだ。
「せ、せんぱい!」
「ん?」
「僕は一体・・・」
「ふふっ、諒くん。
私がここに着いた時、諒くん寝ながら横に倒れ掛かっていたんだよ。
だから、倒れる前に私の膝に頭を乗せたの♡」
そう言って、可笑しそうにしている先輩。
「昨日、放課後、図書館に行かなかったから。
ここに急いで来たら、諒くんが、眠りながら倒れそうになってたのが、見えたのよ」
先輩が、続きを言いながら、僕の頭を撫でている。
僕は、先輩の話を聞いて、次第に頬が熱くなってゆく。
すると、それを見た先輩が、今度は熱くなった僕の頬を撫でてくれた。
熱くなった頬に、先輩のヒンヤリとした手の感触が心地良い。
「何か諒くん、バテてる様に見えるから。
しばらく、私の膝で休んでて良いよ」
「すいません、先輩・・・」
「ふふっ、良いのよ♡」
申し訳無さそうに言う僕に先輩は。
優しい瞳で、微笑み掛けてくれる。
「まだ時間もあるから、このまま寝てなさい」
僕は、先輩の言葉に甘え、膝枕をされたまま寝る事にした。
そのまま瞳を閉じると。
流れる涼風、頭に感じる柔らかさ、周囲に漂う甘い匂い、そして僕を撫でるヒンヤリとした手。
それらを受けている内に僕は。
再び、意識が薄くなっていった。
・・・
こうして僕は、先輩の太股に膝枕をしたまま、昼休み中寝ていたのだった。




