第1話 不思議な出会い
ご存知の方は、お久しぶりです。
始めての方は、はじめまして。
相変わらず、チラシの裏でしかありませんが。
それでも、どうか宜しくお願いします。
「暑そうだなぁ・・・」
冷房が利いた室内から、外の陽炎が立つ校庭の様子を見ると、そう呟いた。
・・・
今、僕は学校の図書室にいる。
図書室の窓際にある、テーブルの丸椅子に座り、外を見ていたのだ。
僕は神沼 諒、私立陣立学園の一年生だ。
僕は、この学園に入学して、始めての夏を迎える。
僕は、余り運動が得意でなく、本が好きなインドア派の人間である。
友人は居ない訳が無いが、彼らは、どちらかと言えば体を動かすのが好きなタイプなので、休み時間は別行動になってしまう。
そんな訳で、僕は今、図書室で一人で本を読んでいたのだ。
*********
「ん?」
テーブルで本を読んでいる途中、目が疲れたので本から視線を外し、目を回転させて運動をしていると。
本棚の間で、本を読んでいる一人の女子生徒が目に入った。
その娘は、背中までの長い黒髪をしており。
横顔は、大きいが切れ長気味の目が、印象的である。
当然、この学園の制服であるセーラー服を着ていて。
それも、白を基調にした袖の短い夏服であった。
上靴の色を見れば、3年生で上級生である
しかし、彼女は普通の女子生徒には見えなかった。
なぜかと言えば、彼女の周囲だけ上品で、落ち着いた雰囲気に包まれていた様に見えたからだ。
それは今まで、同級生どころか、上級生や今まで会った年上の女性からは感じられないものである。
その女子生徒を、いつの間にかジッと見ていると。
女の子が視線に気付いたらしく、おもむろに顔を上げてから。
こちらを振り向き、僕を見て、すごく驚いた顔を見せた。
しかし、驚いた顔をした次の瞬間。
「(ニッコリ♡)」
僕に優しく微笑んだ。
振り向いた女の子の顔は、可愛いと言うより綺麗、しかも伝統的美人と言った感じの綺麗である。
だが、それでいて、その手の美人に有りがちな冷たさが全くなく。
フンワリとした柔らかさが感じられる。
その上品でありながら、優しい矢に心臓を射抜かれた僕は。
思わず赤面すると、慌てて本に視線を戻した。
そうやって、心臓がバクバクと高鳴っているのを無視して、しばらく本に意識を向けた後。
ようやく、心臓が落ち着いてきた頃、恐る恐る、視線をもう一度本から上げると。
「あれ?」
・・・その女の子は居なくなっていた。
周りを見るが、居るはカウンターの中で、本を読んでいる女子の図書委員と。
残りは、僕と2、3人の生徒だけ・・・。
元々、この学園は私立校特有のスポーツで売り出そうとしている側面が強いため。
どちらかといえば、運動系の活動が盛んである。
その影響か、最初、図書室に来た時の人の少なさに、ビックリしたものだ。
そう訳で、図書委員の方もヤル気が全くなく。
生徒が居ても、存在を無視するが如く、カウンターの中で一人本を黙々と読んでいるだけだった。
「えっ! いつの間に・・・」
いくら何でも、この静かな図書室だから。
出入りしたら、音がするから分かるはず・・・。
僕だけが、聞き損ねているのかと思えば。
図書委員を初め、他の生徒も出入り口の方を見て反応していない
僕は、居なくなった彼女を首を傾げつつ。
その存在を、図書室中を見回して未練がましく探しているが。
図書室には、下を向いて本を読んでいる図書委員と。
何事も無かったかの様にしている、他の生徒が居るだけであった。