お題 「帰宅部」「ギャルのパンティーおくれ」「アイドル」
「帰宅部って、何してるの?」
「ばっか、そりゃあ帰ってアニメ見たりラノベ読んだりドラマ見たりゲームやったりして、翌日にその内容について語り合う人の集まりに決まってんだろ!?」
……そう、俺の通っている学校には帰宅部が存在する。
部に所属していない生徒のことを指す一般的な帰宅部とは違い、俺の所属する帰宅部とは正式な部として生徒会から認められており、実際に部費も出ている。
ちなみに、俺は帰宅部の部長だ。
「……で、あんたの他に誰がいるの?」
「……」
俺は無言で彼女を指差す。
「……は?」
「……名前、借りちゃった♪」
「ふざけんなよぉ!?」
「おいおい、女子としてダメな声をいまだしてるぞお前」
「……ま、減るものでもないし、いいんだけどね」
「あー、そういうヤツだったなお前は」
小さい頃からの腐れ縁である彼女とは、まぁ10年前後の付き合いだ。
「にしても、まさかあんたが部を設立しちゃうとはねぇ」
「俺も、まさかできるとは思ってなかったよ」
春に入学して、生徒手帳を見ていたら部活動についての項目に目が行き、二人以上の部員がいたら部として生徒会が認可してくれるとかなんとか書いてあったし、アニ研やマン研が何故かなかったので作ってしまおうと思い、ダメもとでやってみたら何か通っちゃった、そんな感じだ。
さらに加えるなら、兼部が認められていたために、夏休み前になる今まで幼なじみ(仮)にバレなかった、そんな展開である。
「……で、夏休みには何するの?合宿?」
「え? 何参加するの? うちの活動に?」
「そりゃ一応部に入ってるんだから、一応聞いておこうかと思ってさ」
「聖地巡り? コミケ? それとも全国ツアー?」
「せ、聖地? なんなのそれ?」
……忘れていた、彼女は非ヲタだったんだ。最近会話してなくて忘れていたや。
幼なじみの趣味とか色々忘れていた俺はどうやら最低なのかもしれない。
「まぁ、そんな気はさらさらなくてだね、ガチニートするに決まってるじゃんか、何いってんの?」
「……」
「いや、七つ集めると願いが叶う玉的ななにかがあるんだったら、俺も探しに行くために聖地巡礼したりコミケ行ったり全国ツアー行ったりするかもよ?」
「全国ツアーってアイドルとかの?」
おいおい、何を言ってくっれてるんですかねぇ、彼女は。
「そこらへんのちょっと顔がいいだけのやつらとあの御方を一緒そうだ!!」
「あの人声いいもんねー」
「そう! だから願いが叶うのならどっかのハゲの人みたく、ギャルのパンティーおくれ、なんて願いじゃなくて、俺はあの方のライブのチケットをもらうんだ」
「ああ、パンティーじゃないんだ」
パンティーよりもライブの方が大事なんです。
「で、結局どうするの?」
「・・・話聞いてなかったの? ニートするんだよ」
「・・・そっか」
「積みゲーとかたくさんあるからな。それに部費の為にも色々やらなきゃならんことがたくさんあるんだ」
「じゃあ、明日遊びに行くねっ」
「話聞けよ。やることあるんだよ」
「聞いてる聞いてる。邪魔にならないようにするからさ」
どうやら、説得は無駄のようだ。
「じゃあ、明日な」
……やっぱり来ないで欲しいなぁ……。
翌日。
「で、結局来ちゃったのね」
「今日は何するの?」
「……く……」
「……?」
「創作活動とかだよチクショウ!」
「……」
「笑えばいいだろ! だからもう忙しいの!」
「良いと思うよ?」
「……へ?」
「帰宅部の部長なんだし、それくらい普通でしょ? なんなら手伝うよ?」
あぁ、なんか知らないけど俺、幼なじみに攻略されてるわ。
「俺を攻略してもいいことなんてないぞ?」
「……あんた何言ってんの?」
あぁ、いつもの彼女だ。
「じゃあ、手伝ってもらおうかな」
「あれ、おばさん? どうしたんですか?」
はい、いきなり登場してくる俺の母親。引っ込んでて欲しいけどそういうわけにもいかない。
「実は、母さんの会社の企画の手伝いもあったりするんだよ」
「え、おばさんの会社ってたしか化粧品関係の・・・」
「そ。だからよろしく」
「アンタまさか、謀ったのか・・・?」
「何をおっしゃってるんですかねぇ?私はただの物書きでございますよ?」
攻略してるのは、プレイヤーはお前だけじゃないんだよ。
「じゃ、母さん。あとはよろしく」
「はいはーい任されましたぁ」
さて、俺も創作活動しますかね。
たくさん賞を取って、有名になって、いつか彼女に釣り合う男になるために。
「まずは、帰宅部を有名にしますかぁ!」
別の部屋からなにやら悲鳴っぽいものが聞こえてきたけど、そんなものには目もくれず、俺は今日も創作をする。
……そのあと、雰囲気の変わった彼女に、というか綺麗になった彼女に一泡吹かされるんだけど、これはまぁお約束なのかもしれないね。