間章 正義は何処に
センターが終わった\(^o^)/ので、一時浮上です。
男が幼少の頃。
彼は正義に憧れる、普通の……いや、普通よりいささか夢見がちなきらいがある程度の、ただ子どもにすぎなかった。
誰かを助けることに喜びを覚え、誰かのために何かをしようとした。
絵本やらに出てくる騎士や救世主に憧れ、悪者退治には胸を踊らせた。
彼は“正義の味方”だった……少なくとも、彼自身はそう思っていた。
彼は悪くなかった。
そう、この時までの彼に限って言えば、彼は悪くなかった。
ただ悪かったとすれば……それは彼の“周囲”と、そして自分を含めたその周囲を善だと疑わない、その“純粋さ”だった。
「いいか、××。私が、そしてお前がやることは正義なのだ」
彼の父は、彼が“正義”に心酔していることに付け込んで、“正義”の言葉を多用した。
その効果はきっと、父が思った以上のものだっただろう。
彼は、愚かにもそれを信じた。
他領の内乱の隙にその領地を掠めとることも、民から税を搾り取ることも、全て正義と疑わなかった。
彼は自らを正義であると信じていた。
——そして。
成長した彼は、自分を正義の味方だとまでは思わなかった。
だが、自分のしていることを悪と思ったことは一度もなかった。
幼い子供の純粋な正義は、歪められ、歪まされ——
そしてその“歪んだ正義”が今、エルたちに迫ろうとしていた。
「あの領地は、俺のものだ」
——正義を夢見た少年は、もういない。




