表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/46

癒しの時間、もしくは兄の策略

やっと妹が出せた……!

「ふふふー」


俺は今、ユインを後ろから抱きかかえてご満悦である。


「おにぃたま、ちょっとくるしいよぅ」

「苦しゅうない苦しゅうないー」


使い方が激しく間違っている気がするが、それすらも気にならない。


あの宣戦布告は、あくまで子どもの言葉として受け取られてしまった。

「お前、あれがお気に入りだったのか。そうならそうと言えばいいものを」と、さながらペットやオモチャかのように吐き捨てたあの父親には腹が立ったが、そんなささくれ立った心も妹という癒しの前にはどんどん治っていく。


「ユーイーン」

「なぁに?」

「ふふー呼んだだけー」

「……へんなおにぃたま」


と首を傾げるのがまた天使である。

ああ、この時間がいつまでも続けば……と思ったが、残念ながら、終わりはあっさりと訪れた。


コンコン、とノックの音が響く。

ドアを開けて入ってきたのはミゼットだった。

ミゼットは一瞬、ニヤニヤしている俺に引いた表情を見せたが、すぐに取り繕って「勉強のお時間です」と告げた。


「おにぃたま、おべんきょー?」

「ああ、うん……」


勉強ももちろんだが、ユインとまた離れるのも辛い。

嫌だなぁ、と呟きかけた時、ユインが振り返ってニッコリと笑った。


「がんばってね」

「うん、超頑張って来るね!」


この笑顔が見れるなら、たとえ火の中水の中、退屈な勉強も苦ではない。


「なんだよ、ミゼットなんか言いたげだな」

「いえ、ただ気持ち悪いな、と」

「ひでぇ!」


それにユインの前で言うなんて、ユインが変な言葉覚えたらどうすんだ。


「なー?」

「本当に気持ち悪い……」


ボソッと呟いたが、おい、聞こえてるぞ。


これ以上は先生をお待たせしてしまいます、というミゼットの言葉に従って、

「じゃあねーおにぃたま」

と可愛く手を振るユインに手を振りかえし、俺はユインの部屋を出た。


「さて、行くか」

「……エル様って、本当にユイン様と関わっている時といない時とでは、まるで別人ですね」

「そうか?」


確かに多少緩んでいる気はするが、と言うと、多少……? と首を傾げられる。


「ん、なんか文句あるのかよ」

「……いえ」


学習室に向かって歩きながら、周りに人影がないのを確認して、ふと口を開く。


「それで、ミゼット。アレ(・・)の首尾はどうだ?」

「ええ、順調です」

「そりゃあいい。両親らはどうせすぐまた王都に行くだろうからな。そうしたら早速、作戦開始だ」


俺は今、ちょっとした(・・・・・・)領地改革を考えていた。

あの領主夫妻(欲のかたまり)がどうなろうか知ったこっちゃないが、反乱でも起きてユインが巻き込まれては困るのだ。


そう、つまるところは全ては妹のため。


「俺は人生を妹に捧ぐ!」

「重い上にとてつもなく気持ち悪いです」


ズバッとミゼットにぶった切られた。

……うん、やっぱり俺人選間違えたな。


「で、あっちの“臆病な羊”の方の調査は進んでるんだろうな?」

「もちろん、ぬかりなく」

「引き続き頼むぞ」

「かしこまりました


やっぱり優秀ではあるんだよなぁ。ただ、性格に難ありってだけで。


「それで……」

「ああ、給金引き上げの件は手配しておいた」

「ありがとうございます」


……金の亡者だしね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ