表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/46

新たな騎士、もしくは妹の一撃

アンケートにご協力くださいまして、ありがとうございました!

これにて、アンケートは締め切らせていただきます。


そして、結果……こうなりました。

「まずは、名を名乗れ」


俺がそう言うと、膝をついていた()は失礼しましたっ!と大きな声を返した。

……うるさい。


「私は、クロエ・シラルド・フォン・ルクセント……」


クロエっていうのか、と俺は言おうとしたが。


「セルシテムル・アラン・シクラム……」

「まだ続くの!?」


異世界風じゅげむか!


「タターラオ・エルバ・……あれ、この後なんだったかな……」

「忘れるくらいなら短くしろよ!」


そしてこいつ、自分の名前忘れるとか、大丈夫か。

クロエ……なんたらはガバッと頭を下げた。


「申し訳ありませんっ! 忘れましたっ!」

「お、おう……」


正直で何よりだが、この体育会系すぎるノリは苦手だ。

最近、醤油や味噌関連で色々外に出て行動しすぎたきらいがあるが、俺は前世のころから基本的に引きこもりならぬインドア派(とじこもり)なのだし。


ちらり、とユインを見れば、疲れたのかウトウトしかかっていた。

ああ、癒される。

胸が大きかろうが美人だろうが、やっぱりユインに勝てるものはいないよね。


ユインをぎゅーとしてみれば、突然で驚いたのか、ビクッとして俺の方をマジマジと見つめてくる。


「おにぃたま?」

「〜〜っ!」


可愛い!

悶絶してさらにギューと抱きしめていると、


「あの、エル様っ! それでご返事はっ!?」


クロエなんたらに声を掛けられた。

ちっ、ミゼットに負けず劣らず鬱陶しいやつめ。


「あ、えーと。とりあえず、幾つか質問させてくれ。まず一つ。何でこんなに名前が長いんだ?」

「私の地方の風習に、親や祖父母、曾祖父母の名前を入れるというのがありましてっ!」「じゃあ、自分の名前だけだと?」

「クロエ・ザクルールです!」

「それだけなのかよ!」


あれを聞いた後だと、びっくりの短さだ。

と、ミゼットが俺の耳に囁く。


「ザクルールと言えば、騎士の名家ですよ」

「そうなのか?」

「ええ、王家に仕える者も多く輩出しております」


名家出身……これが、か?

偶然おんなじ苗字なんじゃなくて?


「じゃあ、二つ目だ。俺の、護衛になりたいって言うのは……?」

「あっ、 はい!」


なんだか、敬礼でもしそうな勢いだ。


「私は、エル様のお祖父様、レイアン様にここに雇っていただきまして、その恩を返したいのです!」

「恩?」

「レイアン様だけが、私の腕を買ってくださったのですっ! 我が実家は、知っての通りのザクルール家ですから、女と言うだけで爪弾きにされていたのですが」


会話している印象からしたら、爪弾きにされてたのは女であることだけが理由じゃない気がする……。


「しかし、そのレイアン様が亡くなり、今の領主様がこの領地になかなかいらっしゃらないとなれば……そう、あなた様しかいないのですっ!」

「消去法かよ!」


レイアン……俺の祖父に当たる人は、ほんの八年前までこの領地を治めていた。

彼の時代、この館には優秀なものばかりがいた。

ただ、その者たちは既に他領に流れてしまったと思っていたが……。


まだその時からの者もいたわけだ。

なんだかちょっと脳筋(バカ)っぽいけど。


……うん、こいつなら、任せてもいいかもしれない。


「お前の思いは十分に伝わったよ、クロエ」

「ほ、本当ですかっ!?」

「ああ、護衛になってくれ」


喜びの叫びでも上げそうになったクロエを、ただし、と制す。

俺は、自分の腕の中に視線を向けた。

つられて、クロエの視線も動く。


「俺じゃなくて、(ユイン)の、な」









数秒後。

しっかり意味を理解したらしいクロエはぷくーっと頬を膨らませた。

可愛くないぞ、ユインじゃないんだから。


「なぜ、ユイン様なのですか」

「何故も何も、ユインだってレイアン()の孫だぞ?」

「しかし、私は次期領主様であるエル様に仕え、この家に恩返しをしたいのですっ! だからユイン様では……」


自分の名前が出ているからか、ユインがキョロキョロと俺とクロエとを見つめる。


「おにぃたま、ユインがなにー?」

「あ、いや、なんでもないよ」

「むー」


仲間外れにされたと思ったのか、今度はユインが頬を膨らませた。

やっぱり、こっちは可愛いよなぁ。


と思っていると。


「もういいもん、おにぃたまじゃなくて、もふもふとあそぶもん!」

「え?」

「もふもふー」


ユインはそのまま俺の腕をくぐり抜け、トウガの尻尾に飛びついた。

俺がショックのあまり固まっていると、そういうことですか、とクロエが納得がいったとばかりの声を出す。


「あの者がいるからダメなのですね! ならば勝負ですモフモフ! さぁ、どこからでもかかってきなさい!」

「いや、もふもふは名前じゃねぇよ……」


というツッコミもユインショックにより威力半減中である。

ユインに声をかけてみれば、


「ゆ、ユイン」

「かくしごとするおにぃたまなんて、やっ!」


ぷいっと顔をそらされた。


「くっ……!」


ガクッと崩れ落ちそうになるが、まずはこの女騎士をどうにかしなきゃならない。


クロエ、と呼びかければはいっとまた体育会系の挨拶が帰ってきた。


「……いいか、俺がお前をユインの護衛にするのは、むしろ、お前を買っているからだ」

「私を買っている?」


明らかに表情が変わった。

分かりやすいな……。


「そうだよ。俺の一番大切なのはユインだ。だから、俺は自分が怪我することよりユインが傷つくことの方が怖い。つまり、だ」

「つまり?」

「ユインを守るってことは、俺自身を守る以上に、俺を安心させてくれる。俺の護衛以上に、俺の役に立つってことだよ」


おお、とクロエが感嘆の声を上げた。

ここぞ、とばかりににっこり笑ってみる。


「やってくれるな、ユインの護衛」

「もちろんです!」


チョロい、チョロすぎるぜ、クロエなんとか……!


「嫌な子供ですね」

「うっせ」


ミゼットに言い返すと、俺はユインに近づいていった。


「ユイン?」

「……なぁに、おにぃたま」


またぷくーっと頬を膨らませられるけど、チラチラッと俺を窺っている。


「ユイン、ちゃんと話すからお兄ちゃんのとこ、来ない?」

「……ほんと?」

「本当だよ!」


ユインはトウガの尻尾をパッと離して、俺の元にタタタッと寄ってきた。


「その……クロエには、ちょっとお願いしてたんだよ」

「おねがい?」

「そう、ユインの遊び相手になってくれないかなって、話」

「……?」


ユインがゆっくりと首を傾げる。


「クロエ、ユインとあそぶの?」

「え? 私は護衛……」

「クロエ」

「じゃなくて、ユイン様と遊びます、はい」

「……そうなの?」

「そうですっ!」

「そうなの、おにぃたま」

「そうだよ!」


ユインがもう一度むーと唸って、それから、


「ふわっ!」


変な声が出た。出たけど、仕方ないだろ。


だってユインが抱きしめてきたんだもん!


「おにぃたま」

「……な、なぁに」


ユインが、上目遣いで俺をじっと見てくる。

……昇天しそう。俺、昇天しそう。


「や、なんていって、ごめんね、おにぃたま。だいすきだよ」

「っ! うん」


ああもう、可愛いなぁ。








そして後日。


「おにぃたま、おかえり〜!」


エミス村へ戻った帰り、ユインが駆け寄ってきた。

後ろからはクロエもやってくる。


満面の笑みでこっちに向かってくるユインを手を広げて迎える。

しかし。


「ユイン、ただいまー! ……ぐふっ!?」


強烈なボディーブローを食らい、思い切り咳き込む。


「ゴホッゴホッ、ゆ、ユイン……!?」


パッと上げられた顔は、満面の笑みのままだ。


「あのねっ! クロエがね、ユインはせがひくいから、ふところにずつきしたらいいんだって!」


どうだったおにぃたま、と楽しそうに聞いてくるユインに曖昧に笑う。

その後ろを見れば、ドヤ顔が目に入った。


クロエ……。


「ねぇ、どうだったおにぃたま!」

「う、うん……」


ちょっと早々に、業務内容を確認した方が良さそうだ。

クロエの名前、動機、性格など、様々な方の意見を参考にさせてもらいました。

本当に面白いものが多くて、とても迷ったのですが、こうなりました。


今回使えませんでしたものも、いずれ使えるときがあらば使わせていただきたく思うので、よろしくお願いします!


本当に、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ