6話目:ぼっちな勇者
ですよねーー
そりゃあ、誰も、死にたくないよね。
こんな花を出すだけの能力なんて、戦闘では役に立たないし、他のみんなの能力のほうが良すぎて、誰も僕に見向きもしなかったようだ。
そんな様子をみて、クラスのみんなは憐れんだ目でみていたが…。
やめてくれ、余計悲しくなるから…。
白おっさんも微妙な顔していたが、顔を戻して話し始めた。
「こ、ここで仲間をみつけられなくても、勇者だと名乗れば、いろんなところで仲間が集まってくるでしょう。ここでは、暫定的なものですから、この先どんな運命が待っているかわかりません。どうか、勇者達に神の祝福を。」
と都合よくお開きにした。
おいっ、けっきょくフォローもなしかよ!
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僕は、一人寂しく広場を後にした。
他のみんなは、自己紹介やら何やらで、楽しそうに話していたので、あの場には1秒でも居たくなかったからだ。
僕は自室に戻る道すがら考えた。僕のこの世界での在り方は、勇者として英雄になることではなく、細々と生きることだと。なんせこんな戦うのに向いてない能力だから、生き残るだけでも大変だ。
まあどうせならせっかくだから、異世界旅行でもしながら、余生を過ごそうなど、じじくさいことを考えながら歩いていた。
そして、ある一室を通り過ぎようとした時、ふと異世界という単語が聞こえてきて、気になったので立ち止まり耳を傾けてみた。
「…やはり、残りの勇者はダメでしたね…。」
「ああ、もう目覚めはしないだろう…。」
「もう少し、戦力が欲しかったですが、しかたないですな…。」
「ああ、やはり死者をこちらに呼ぶのだからな。その辺は仕方なかろう…。」
「!?」
いま、死者を呼ぶって言ったか?もしかして、僕ら死んでしまっていたのか?いやいや、落ち着こう…。いま、確かに生きて呼吸してるし、つねっても痛いし、生きてはいるよね。
(いててて…)
つまり、今は生きているが一度は死んだってことか?
それを、この世界に来るときに同時に蘇生もしたってこか…。あと、もうひとつ気になることを言っていたな…。他のみんなはもう起きないとか。
つまり、蘇生に失敗したってことか?
それにしても、こいつらはなぜそのことを黙ってるんだ?何か都合の悪いことでもあるんだろうか?
「!?」
やばい、話が終わったみたいだ。早くここを立ち去ろう…。
僕は、早足に、なるべく音を立てずに、その場を離れ自室に籠った。
「ふう…。どうやら、気づかれてはいないみたいだな…。」
どうやら、この国は何かを隠しているらしい。勇者召喚に関する何かを…。何を隠しているかは分からないが、ここは何も知らないふりをしておくことにしよう。たぶん、それを知ってしまえば、消されるか良くても監禁されるか…。僕なんて、ほぼ居ても居なくてもかわりはないのだから尚更だろう。
みんなに相談するという手もあるが、そもそも仲良くもないし、逆に不審がられるのがオチだ。
となってくると、これからの10日間ですることは大まかに2つだ。
1つは、何も知らないふりをして、できるだけ召喚とこの国の情報を仕入れる事。
2つ目は、この世界で一人で生きてくための知識を集めること。
仲間とかは、よほど信頼してないと怖い。白ローブなんて、監視してるみたいで疑わしい。
仲間はおいおい探せばいいだろう。しばらくは、安全第一で地道に鍛えることが必要だな。
そして、残り10日となった訓練期間を、独自の方法で鍛えていった。
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執務室には、白髪に白髭のいかにも偉そうな人物が座っていた。その二人の服装はこの教会ではかなりの地位にあるものだと、見る人が見れば一目で分かっただろう。そんな2人は、グラスを傾けながら、先ほどの話の続きをしていた。
「さきほど誰かいませんでしたか?」
「ん?わからんが、もしかしたら聞かれたかもしれんな。だが心配はいるまい。やつら勇者の監視はつねにしているのだからな。」
「それもそうですな。それより今は、他の勇者の始末の方でしたな。」
「ああ、どうせ国には他の勇者の存在は知らせてないのだし、どうせなら有効活用させてもらうことにしようか。」
「というと、まさかあの方法を使うのですかな?」
「ああ、こちらの思いのまま動く、忠実な勇者でも作ろうではないか…。」




