36話目:我が家
さらに次の日、僕らは来た時と同じ商人の護衛の為、一緒にマーレ王国に帰る準備をしていた。帰りの馬車にも大量に荷物が積んであった。まあ、大量とはいっても、王国の人数分の資材やら食糧なので、けっして多いとは言えないが…。
パーティメンバーが増えたことを商人に伝え、さっそく帰路についた。今回も、戦闘は僕の魔法で瞬殺していこうと思う。まあ、七海はろくな装備も買ってないから、戦闘には参加できないからね。
「そういえば、僕達が来る前はどうしてたんですか?」
「ああ、君達が来る前は、王国からは一人で来て、帰りには護衛を雇って帰るって感じがな。魔物避けの【シイラギの葉】を持ってたから、道中は魔物の心配はないからね。」
「へー、そんな便利な物があるんですね?」
「ああ、ただ、この地域だと生えてないし、買うと高いので中々手に入らないんんだよね。」
そんな便利なものなら、大量に召喚して皆に渡せば、ここの流通も良くなるんじゃないかな。
「それって、現物はないんですか?」
「あー、すまんがこの前使いきってしまってね。年に一度くる商人に頼まないと無いんだよ。」
「そっか、残念…。」
「まあ、今は君らが護衛してくれるから、必要ないけどね。」
まあ、確かに、今の僕らなら何の苦労もなく行き来できるだろう。魔法の恩恵はかなりありがたい。七海も魔法を使えるみたいだし、さらに無双ができそうだな。
数時間後、無事にマーレ王国に到着し、商人のおっちゃんと別れ、さっそく自分の家へと向かった。護衛依頼の報酬は後日城に行ってもらえばいいので、特に急ぐことはない。
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「さ、ここが僕らの家だ。部屋は余ってるから好きに使うといいよ。」
いつの間にか仲良くなったアイシャに引かれ、七海は家の中に入っていった。僕も後に続き入り、部屋に荷物を置いてから、リビングでくつろいでいた。すると、
「ねえねえ!もしかして、庭に生っているのってリンゴとみかんだよね!」
「ああ、僕が能力で出したんだ。良かったら食べるといいよ。」
「ほんと!わー、うれしいな。みかんとか懐かしいよね。もう、かれこれ3カ月くらいだもんね、こっちにきてから…。みんな元気にしてるかな…。」
七海は俯いて泣いていたので、僕は黙って、庭から捥いできたみかんとリンゴを渡してあげた。まあ、ようやく落ち着いてきて自分のことを振り返れたんだろう。僕も、日本には家族もいたし、友達・・・はまあ、あんまりいなかったけど、知り合いはたくさんいたから、思い出すと寂しくなったのだろう。
しばらく、落ち着くのを待ってから、今後の話するのに、アイシャも含め、リビングで向かいあって座った。
「まず始めに言っておくことがある。僕は、魔王討伐になんか行く気はまったくない。むしろ、この世界をのんびり満喫したいと考えてる。だから、日本に帰るために積極的に行動はしないだろうから、それだけは分かってほしい。あとは、教会ともなるべく関わらないようにしたい。基本的に信用できないのと、最近知ったんだけど、教会は亜人差別主義の教義らしい。」
「亜人差別ってなに?」
「うーん、簡単に言うと、アイシャみたいな獣人を嫌いって言って差別してることだよ。」
「えー、アイシャ何も悪い事してないのにね。」
「そうなんですか…。なんだか、教会を離れてみると、教会の悪いとこばかり見えてくるね。」
アイシャは怒ってるようだし、七海はショックをうけているようだ。
教会の亜人差別主義は根強く、今思えばトウキ王国で亜人を見なかったのも頷ける。さすがに、教会の総本山近くで亜人が歩けるほど生易しいものではないだろう。反してここマーレ王国では、教会自体がないためもあるが、亜人にはむしろ寛容であった。
それと、どうやら亜人の多くはここ南の地に多く住んでおり、亜人差別など行おうもんなら、逆に袋叩きにあうだろう。
「七海には悪いけど、日本に帰りたいなら、たぶん教会に援助を求めた方がいいかも…。」
「ううん!日本には帰りたいけど、それよりもこの世界で生きてく方が大事だし。それに、私も教会は信じられなくなってきたから、誠二くんと一緒にいる!。」
「う、うん、わかった。」
「私も、お兄ちゃんと一緒にいる!」
「お、おう、よろいくな。」
なんだか告白を受けたみたいになって、顔を真っ赤にしていたが、気を取り直して話を戻した。
「そ、それで、話は戻るけど、今後どうするかなんだけど。しばらくはこの付近でLVを上げて、この国を豊かにしたいと思うんだ。そこで・・・。」
僕は、七海の能力を見て思いついたことがあり、それでこの国が復興できるんじゃないかと考え付いたんだ。七海と僕の能力を使えば、すごいことができるかもしれない。
ちょっと、わくわくしてきた。




