34話目:疑惑
僕達は、無言のまま今夜泊る宿屋に向かっていた。何か聞きたそうな感じだったが、とりあえず落ち着いて話がしたかったので、まっすぐ宿屋に向かっていた。
宿に着くと、1階は食堂になっていてたくさんの机が並んでいた。そしてその中の一つにアイシャが座って果実水を飲んで待っていた。
「あっ!お兄ちゃん、お帰り。どうだった?」
「お兄ちゃん!?」
「ああ、ただいま。そうそう、一応2人は初対面だから紹介しておくね。こっちは、さっき話してた僕の友達で竹中七海さん。で、こっちが僕の今のパーティで組んでる獣人のアイシャ。」
「よろしくね。」
「ね、猫耳!?か、かわいい…。はっ、こ、こっちこそよろしくね。」
なんか、竹中さんのアイシャを見る目が怖いが…。
とりあえず、宿はまだとってなかったみたいで、2泊3人分の部屋を取っておいた。ちなみにかなり出費がかさんだので、ぎりぎりな値段になってしまい、一部屋だけしか取れなかったので、そこは勘弁してもらおう。
2人を宿の部屋まで連れて行き、情報交換をすることにした。
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「あー、ところで、どうして奴隷なんかに…。」
「う、うん。実は、あれから…。」
なんでも、王国から出発してから隣町で狩りをしていたところ、盗賊に襲われてつかまってしまったそうだ。それで、そのまま奴隷商人に売られて今に至るわけだが、ここで疑問に思う事があり聞いてみた。
「そういえば、僕とは違って、みんなには仲間がついてたはずだけど、その人達も一緒につかまたの?」
「ううん、その時はクラスの仲間だけのパーティだったの。クレアさんの提案で、もしもの時に対処できるように私達だけで戦うのも慣れなきゃって言われて…。あっ、ちなみにクレアさんて、私のパーティメンバーで教会のシスターさんなの。」
「教会のシスター…。」
はっきりいって怪しさ満載だ。そもそも、そんなことに慣れる必要なんてまず無いだろう。あきらかにパーティの分担が目的みたいだ。それに、教会の者っていうのがさらに怪しい。僕の考えすぎかもしれないが…。
「あ、あと、私達盗賊に捕まったけど、そ、その、奪われてないから、大丈夫だからね…。」
「え!?…あーー、うん。あ、あの、そ、そんなつもりで買ったわけじゃないから…。と、友達だから、ねっ。」
「う、うん…。で、でも、私、村井くんの奴隷だし…。」
「わ、わかったから、その話はまた今度ね!あ、あと、村井くんて呼びづらいだろうから、セイジでいいからね。」
「う、うん。じゃあ、私もナナミで…。」
と、、まあ2人して真っ赤になりながらあたふたしていたが、アイシャは一人だけ冷めた目で見ていたのだった。
「あー、ところで話は変わるんだけど。」
「な、何?」
「あの奴隷商のとこにいたの、クラスの女子だよね?」
「…うん…。今井さんと、高橋さん…。」
「そっか…。今回はお金が足りなかったから、皆助けることはできなかったけど…。」
「ううん。仕方ないよ。捕まった私達が悪いんだし…。あっ、あと、奥村くんは盗賊に殺されちゃって…。」
まあ正直、彼女以外どうでもよかった。今井も高橋も、クラスでは女子のリーダー的存在で、率先して僕を無視してきたやつらだし、奥村に至っては、よくからかわれていたからね。でも、一応顔見知りが死んだとなると、やっぱりそれなりに悲しいものがあったが…。
「まあ、でもこんな世界だし、仕方ないよ。ましてや、みんな魔王退治に向かってたんだしね。それくらいの危険はあると、覚悟してただろうし…。」
「うん、そうだね…。ねえ、ところで、これからどうするの?教会に行って、助けを求める?」
「うーん。いや、教会へは行かないほうがいい。教会は信用できない…。」
「え…。教会が信用できないの?」
「ああ、実は…。」
僕は教会で聞いたことを七海に話した。自分達がすでにバス事故で死んでいた事。起きてこないクラスメイトはおそらく処分されたと思われることも話した。
「そ、そんな…。じゃあ、もしかして真奈美ちゃんも…。」
「改めて考えてみると、今回の盗賊に襲われた件も、教会が絡んでるんじゃないかと思う。」
「え?まさか、クレアさんも?」
「うん。そもそもパーティを分ける事自体、意味がないことだしね。なんらかの理由で、七海らを切り捨てたんじゃないかな?」
「・・・。」
正直ショックだろうけど、現実を知らないと前に進めなくなるからね。それに、これでもう魔王退治になんて行こうとは思わなくなるんじゃないかとも期待してた。現に僕はもう思ってないしね。
「まあ、しばらくは僕と一緒に暮らしてみない?幸い、拠点には持ち家もあるし。」
「え!?家持ってるの?誠二くん、すごいね!」
「お兄ちゃんはすごいのだ!」
「!?」
と、いままで黙っていたアイシャが突然声を掛けてきた。と、思ったら、ベッドでぐーすか眠りこけていた。寝言だったか…。
そんな、寝顔を見ながら、二人でひさしぶりに日本の話でもりあがっていった。




