31話目:トラウマ
ランダの街は、人口2000人近くの人が暮らしている街らしい。この街のすぐ近くには、大きな川が流れており、この川はシローア帝国と、イータ王国との交易に使われているそうだ。で、この街はちょうど中間ぐらいにあるので、その恩恵にあやかって発展しているということだ。
さて、今回この街に来たのには生活用品を買うことと、もうひとつ武器を買うことの目的があった。さいわい結構な依頼をこなしていたので、資金はけっこうあるのだ。金貨10枚の予算があるので、かなりのいい装備が買えるだろう。
「さて、さっそく武器屋にでも見に行くか?」
「うん。」
一緒にきた商人のおっちゃんと別れ、帰りの便はあさってということなので別行動になった。おっちゃんに武器屋の場所を聞いて、道を歩いていると、ふと見覚えのある馬車が通りかかった。
どこかで見たような馬車だな?と思って見ていると、アイシャが僕の服をギュッと握ってきた。
「あっ!?」
そうか!奴隷商の馬車とそっくりなんだ。あの馬車もこんな感じの屋根があったし、荷物を積む馬車ともあきらかに違った形をしているから、すぐに気づいたんだ。まあ、アイシャにしたらトラウマみたいなもんだろうな。かくいう僕もなんだけどね。
どうも、この世界では奴隷というのは当たり前の存在らしい。この世界ではよくあることで、借金のかたに売られたり、盗賊などに売られたりとか…。そして国もそれを認めているというのだから、この問題はもはや問題にすらなっていないのだろう。
元の世界にも奴隷制度はあったし、おそらくは今もなくなってはいないだろう。平和な日本に暮らしていると、どうもその辺が道徳的にひっかかるが、この世界では仕方のないことなのだろう。
そうやって立ち止まって馬車が過ぎるのを眺めていると、中の奴隷と目が合ってしまった。それは、薄汚れた黒髪の女の子で、歳は自分と一緒くらいだろうか?というか、どこかであった気がするが?
あっちも、僕を見て驚いた顔をしていた。あっ、思い出した!クラスメイトだ。クラスメイトの女の子で竹中七海だ。出発の時に誘ってくれた子だ。
馬車はそのまま通り過ぎ、路地の向こうへ行き、そこで停まると、ぞろぞろと奴隷らが降りて建物の中に入って行った。もちろん、クラスメイトもその中には含まれるのだが…。
「アイシャ、ごめん!武器を買う約束だったけど、ちょっとまって欲しいんだ。」
「ん?どうしたの??もしかして、さっきの…。」
「ああ。実は、僕の知り合いが奴隷になってたんだ。なんで、どうにかしてやりたいんだ。」
「うん。いいよ。お兄ちゃんお友達でしょ。助けようよ!」
「ああ。ありがとう。」
アイシャも奴隷になった時のことを思い出して、二つ返事でオッケーを出してくれた。アイシャには、宿で時間を潰してもらうことにして、自分一人で奴隷が入って行った建物へ向かった。
-------------------------------------------------------------------------------
その建物は、割と大きな建物だった。2階建ての木造の建物で、入口には堂々と「奴隷商」の文字が書いてあった。それと、奴隷を買うというのは割と裕福ということなのだろう。所々、高級感があるように置物が飾ってあった。
しばらく、入口の前に立って悩んでいたが、意を決して中に入った。
「いらっしゃいませ。」
出迎えてくれたのは、漫画でしか見たこと無いようなクルりんとした髭をはやした、太った男の人だった。割と高級そうな服をきて、手を揉みながらこっちを見ている。
「当館は初めてでございますか?よろしければ、こちらへどうぞ…。」
僕は頷いて、男の後に続いていった。
案内されたのは、応接室みたいな部屋で、ソファーが二つあり、真ん中に机を置いた部屋だった。部屋に入ると、メイドみたいな服を着た女の人が入ってき、お茶を置いて出て行った。
「ささ、どうぞ。私は、当館の主でクルカンと申します。」
お茶を進めながら、名前を名乗ってきた。こっちも名乗った方がいいのだろうか?と考えてると、
「さて、この度はどのような奴隷をお探しでいられますか?」
「あー、あの…。こういうところ初めてで、いろいろ教えてもらえるとありがたいんですが…。」
「もちろん、かまいませんよ。誰でも初めてはあるのですから。…そうですね、では奴隷について少しお話いたしましょう。」
クルカンさんの話だと、この国に奴隷制度ができたのは、ほぼ500年前ということだった。ほとんどの国ができる前よりあったことで、かなり歴史が深いようだ。奴隷といっても、なんでもしていいというものではなく、最低限の人権というものはあるそうで、むやみに傷めつけたり死に至らしめた場合は、主人の方が罪に問われるということだ。
それから、奴隷にも種類があり、労働奴隷や戦闘奴隷とか用途によって呼び名が変わるらしいが、特に区別しているわけではないみたいだ。なんの種類かというと、犯罪者がなる奴隷と、そうでない奴隷の違いだ。犯罪者がなるのは、犯罪奴隷といい、鉱山などの地獄でこき使われるそうで、もちろんこの館にはいないとのことだった。
「さて、お客様はどのような奴隷をお探しでいられますか?」
「じつは、僕はこう見えて冒険者をしておりまして、パーティの充実を考えてるんですよ。」
「あー、なるほどなるほど。でしたら、当館にも戦闘奴隷がいますので、お眼鏡に叶うかもしれませんね。」
さて、これからどうやって、クラスメイトを探すかだな。慎重にいかないとね。




