30話目:護衛依頼
それは、そんな魔法の修行をしていたある日のことだった。その日も、魔法と瞑想を繰り返し、今は瞑想で回復している時のことだった。何人かの気配がこの果樹園に向かってきているのだった。
僕は瞑想を中断し、その相手達を出迎えてみることにした。
すると、来たのが最初の日にここに案内してくれたおっさんと、後は知らないおっさんらが2人こっちに歩いてきていた。
「こ、これは、いつのまにこんな立派な果樹園が…。」
と、来て早々驚きながら見ていて、こっちに気がついたのか紹介を始めた。
「あ、どうも。私はここの管理を王より依頼されたデュフォイといいます。こっちはカロットです。」
「よろしくお願いします。いやー、話を聞いた時はほんとどうするんかと思っておったが、ここまで見事な果樹園ができとるとわ…。」
あっ、そうか。そういえば依頼の報告をすかっり忘れていたよ。報告があんまりないもんだから、きっと様子を見に来たんだろう。まあ、あんまり早すぎても怪しまれるから、丁度よかったかもだけど。
果樹園を2人にまかせて、王様に報告にいくことにした。これで、こっそり修行できるとこもなくなったか。
まあ、なんなら家の庭ででもできるし、たいして問題はないかな。
「なんと!もうできたのか?果樹園とは…。たしかに、それならば食糧の問題はなくなりそうだが。」
「まあ、方法は言えませんが、ある力を使ってということで。」
「ふむ。魔法や特技の中には、たしかに強力なものもあるというし、それを隠したいのもわかる。冒険者にとって、特技は死活問題になりかねんからの。」
王様に報告をすませ、今は一緒にお茶を飲んでいた。この国の王は、割とフレンドリーな人だな。まあ、それがこの国のいいところなのかもしれないな。
「ところで、最近そちらのアイシャ殿と家の2人が、とても仲良く遊んでいるのだが。」
「あー、確かに。最近は、2人と遊んだという話を良く聞きますね。」
「ああ、この国には子供が少なくてな。同年代の相手というのがおらんかったのだ。なので、外から来たということもあり、余程うれしかったのだろう。」
「さて、話は変わるのだが、セイジ殿はしばらく冒険には出ないのかの?」
「いえ、それでしたら、近々町の方に出ようかと考えてます。いろいろ揃えたい物もあるので。」
「そうか、ならば一緒に商隊も町にいくので、護衛の任務を受けてくれないか?」
「ああ、いいですよ。目的地は一緒なんで。」
「そうか!では、よろしく頼んだぞ。」
そんなわけで、今回は町に行くついでに護衛もすることになった。そろそろ、武器とかも新調したいし、町ではいろいろ買い物もしたかったから、行くついでにお金が稼げるなら、一石二鳥だしね。
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2日後、準備のできた商隊(といってもこっちの国でできた作物をつんだ馬車なのだが)と一緒に町に向かって出発した。街といっても、来る前にいた街ではなく、その反対側にあるランダという街に行くのだが、基本道中にでる魔物の強さも出現頻度も大差ないそうだ。
今回は、護衛ということで来る時よりは難易度も高いのだが、問題はないと思っている。
なんせ、前回と違い魔法を覚えたことで、遠距離の攻撃ができるからだ。それにより、戦略性が大幅に増える事で敵を難なく倒せると思ったからだ。
なんて考えてると、さっそく敵が現れた。灰狼の群れで、5頭がこっちにむけ走ってきた。
さっそく火の魔法を、灰狼めがけてぶつけてみた。
野球球くらいの火の玉が飛び出し。灰狼の先頭に届く直前で爆発させた。一気に炎が燃え広がり、5頭をまるまる飲み込んでいき、火の勢いが消えたころには文字通り、灰になった狼がいた。
「・・・予想以上の威力だな…。」
ほんとに、予想以上に高火力だった。いままで練習していたが、実際に敵に使うとイメージ通りとはいかなかった。まあ、今回はいい意味でなのだが、手加減しないと味方まで巻き込みかねないので、まだまだ練習が必要だと思い知ったかな。
御者の人はあまりの魔法に度肝を抜かれていたが、すでに気にした様子もなく、むしろ強力な護衛だとわかったので喜んでいた。
「いやぁ、それにしてもセイジ殿はとてもお強いのですな。さぞかし、ランクも高いのでしょう。」
「そんなことないですよ。まだまだ駆け出しの冒険者だし、たまたま魔法が使えるだけだし。」
「いやいや、魔法を使えるだけでもすごいですよ。あれほど強力な魔法は見たことがないですし。」
まあ、たしかに威力だけならかなりのものだったな。学校で習った知識との組み合わせで、威力が上がるのだから、もしかしたら異世界人が強くなるってのはこういうとこからきてるのかもしれないな。
こうして、魔法を使う実験も兼ねながらの進行だったので、ほとんどの戦闘があっという間に終わってしまい、じつに簡単に街までついてしまった。本気で、魔法使いに転職しようかと考えたくらいだった。
まあ、職業といっても名前が変わるだけだから、大したことではないのだけどね。




