24話目:水桃
次の日、朝から依頼のあった商人の所へ向かった。それにしても、改めて見てみてもこの町は寂れていた。王国にあるから城下町といえばそうなんだろうけど…。
依頼のあった商人は、なんと城にいるそうだった。なんでも、この国では見たとおり物資が不足しているので、国管理の商人が滞在しているのだそうだ。なので、僕達はさっそく依頼の手紙を届けるため城の門を叩いたのだった。
すると、すぐに門番の人が来て、要件を離すと城の中へと案内されれた。で、しばらく通された部屋で待っていると、一人のおじさんが入ってきた。
「ようこそ、マーレ王国へ。私はここで国営の商人をしております、グレイスといいます。」
「あ、どうも。俺はセイジ、こっちはアイシャです。冒険者です。」
「です。」
俺の後にアイシャもおじぎをし、鞄から手紙をだし、グレイスさんに渡した。
「これは、依頼の手紙です。確認してください。」
「・・・はい。確認できました。では、依頼終了のサインです。」
といって、2人のギルドカードにハンコのようなものを押した。すると、ギルドカードが少し光り、その後カードを見てみると、【依頼完了】と明記されていた。あとは、これをギルドに見せれば、依頼完了で報酬をもらえるらしい。
「ところで、お二人はここまで来れるのですから、かなりの冒険者ですか?」
「あ、いいえ、最近なったばかりで、まだランクもEなのですよ。」
「そうなんですか?そのわりには、かなり高LVですが?」
「ああ、それは採取系を中心に依頼をこなしてたからですよ。ただ、魔物が襲ってくるので仕方なく狩っていると強くなってしまって…。」
「ほうほう、なるほど。では、それなりに強いということですな。」
そうやってなにか考えていたグレイスさんが、思いついたように顔をあげ話をふってきた。
「実は、その強さをみこんで、依頼をしたいのですが?」
「えっ、依頼ですか?」
「ええ、そうなんですよ。ギルドへは事後承諾という形で依頼しますが、早急に解決したい問題なのですよ。」
「はあ、まあどんな依頼か内容を確認してもいいですか?」
「ええ、もちろん。」
その内容というのは、なんでもこの国に今起こっている問題なのだそうだ。
この国は、見たとおり貧乏で寂れているらしい。原因は魔物の住む森に囲まれているため物資がなかなか届かないことにあるのだ。普段は自給自足で生活しているので特に問題はなかったのだが、今年は少し違っていた。
今年は、例年よりも雨が少なく作物が不作なのだそうだ。それだけならまだしも、飲み水まで不足しているらしく、早急に水を集める必要があるのだそうだ。そこで、その水を調達するのが今回の依頼らしい。
方法はまかせるということだが、正直ドインの町からここまで水を持ってくるとなると、かなりの重労働だ。しかも、魔物が闊歩する森を通り抜ける必要があるので、なおさら難しいといえよう。
だが、ここで思いついてしまった。俺には【全花召喚】という神技がある。これで例の【水桃】を大量に召喚してしまえばいいのだ。あっというまに依頼完了だ。
【水桃】は冒険者が旅先での水を確保するために持ち歩く果物だ。以前市場で聞いた時の記憶では、掌サイズ1個でバケツ5杯分の水が確保できるらしい。しかも、味はなく純粋に水なので、料理への転用もできるすぐれものだ。なんか容量的に矛盾している気がするが、そこは魔法のある世界ということで、誰も疑問にすら思ってなかったが…。
「わかりました。その依頼受けます。」
「おお、そうかね。では詳細を話ましょう。」
内心、ウシシと思いつつ話を聞き、城を後にしたのだった。
その後、宿の部屋でアイシャと話をした。
「なわけで、僕の力を使って、【水桃】をたくさん出そうと思うのだが。」
「おお!さすがお兄ちゃん、すごいね。」
「ふむ。だが、この力はなるべくなら隠したいから、明日森に出てからこっそり使おうと思う。」
「どして、内緒にするの?」
「ふむ、それは悪い奴が寄ってこないようにするためだ。」
「おお!よくわかんないけど、そなんだ。」
「ふむ、というわけで、明日はこっそり森にいくぞ!」
「おお!」
と、ふたりで悪だくみ?をしながら明日に備えて、買い出しに行った。
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次の日
昨日買った、大きな麻袋を背負い、町の外の森の中に入って行った。しばらく行ったところで、まわりを確認し、人と魔物がいないのを確かめてから、【全花召喚】を使った。
今回は、マーレ王国の人数を賄えるだけの水がいるとのことだから、なるべく多くいるだろう。俺は今できるだけの魔力を使いすべて【水桃】に注ぎ込んだ。
全部で300個近く召喚したことで、俺の魔力が底をついたらしい。まあ、以前はもっと少なかったから、かなり成長した方だろうが。
それから、桃を袋につめ意気揚々と王国へ戻っていくのだった。




