21話目:シンガルの街
あのあと、街道をまっすぐ進んでいった。2日くらいで、街道の先に街の城門が見えてきた。石でできた壁がぐるりと街を覆っているような造りになっている。ここからは一つしか門は見えないが、おそらく各方位にあると思われる。
僕は自分の格好とアイシャの格好を見てみた。死体さん達からもらった服を着て、靴もちゃんと履き、足枷もない。普通に旅人に見えるだろう。
僕達は、城門に並んでいる列の最後尾につき、順番を待っていた。前には、2組いるみたいだ。すぐに順番が来て、門番の人が話しかけてきた。
「シンガルの街に入るには、証明証をみせてもらおう。」
「すいません、実は来る途中で盗賊に襲われまして、何もかも奪われてしまったのです。」
「何!?盗賊だと?」
僕は、ここに来るまでに考えていた、【言い訳】を話していた。なんせ、奴隷に落とされて何もかも奪われていたので、せっかく作ったギルドカードもないのだ。
あれがあれば、証明書になったのに!
「たしか、昨日商人が襲われた跡を見たとか言っていたが、もしかしてそれか?」
「おそらくそれでしょう。私は、商人に雇われた冒険者だったのですが、盗賊にやられ、妹と共に命からがら逃げて来たのです。」
「そうか、それは災難だったな…。しかし、規則は規則だ。証明証がなければ、銅貨1人1枚だ。・・が、盗賊に盗られたんだったな。ふう、しかたない。これは貸しにしてやる、小さい妹もいることだしな。今回だけだぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
「ありがとう、門番のおじちゃん。」
「おう。お譲ちゃんも無事でよかったな。」
門番にお礼を言って、中に入れてもらうことに成功した。
でかした、アイシャ。
シンガルはかなり大きな街だった。石造りの建物が並び、地面はちゃんと土が固められ舗装もしっかりしていた。人の住む場所と、店舗の場所ががきれいに分かれており、道を挟んで右が店舗通りとなっていた。その店舗通りの一角に、目指すギルドも建っていた。
ギルドはすぐにわかった。なんせ、前の街と同じ看板が出ていたからだ。前の街では1週間毎日通っていたのだから、嫌でも覚えるってもんだ。
早速ギルドに入り、初期登録をすることにした。僕だけ登録しても良かったのだが、身分証がないと街の出入りに毎回お金が必要になるので、アイシャも登録することにした。
ここでやっかいなのが、登録にもお金がかかるということだ。以前、出張ギルドの人が言ってたように銀貨10枚もかかるのだ。で、もちろん払えるわけがないので、駆け出しのやつは、ギルドに借金ができてしまい、その返済に依頼の報酬の半分を持っていかれるのだ。
でも、結局ここで稼ぐしかないんだよね。
僕達は2人分の借金、銀貨20枚を背負い、冒険者となった。まあ、前のようにちまちま稼ぐしかないだろう。今度は、ホイホイ騙されないように注意しよう。今はアイシャもいるから、余計に気をつけねばならない。
僕達は、さっそく薬草採集の依頼を受け、ギルドを後にするのだった。
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王国の執務室で、二人の司祭が報告を受けていた。
「勇者の一人が奴隷商に売られ、その後行方不明になりました。」
それを聞いた、司祭のひとりが、
「そうか、して、その勇者は、誰ぞ?」
「はっ。セイジという、勇者です。」
「セイジ?はて?聞いたことが無いのぉ。」
「ほら、あれですよ。あの花しか出せない、役立たずの…。」
「あー、あやつか…。まあ、あやつはこちらを怪しんでいたからな。それにしても、奴隷になるとか、どんだけできないやつなんだか。」
「まあ、そのおかげで、処理する手間もはぶけた事ですし…。」
「ふむ。それもそうだな。」
「まあ、他の勇者もそろそろ成果を出してほしいとこだがの。」
「まあ、おいおいですな。」
それを、報告した男は黙って聞いていた。そして、その後、その話題に触れる事もなく、話は続くのだった。




