20話目:逃走2
獣ッ子のアイシャを引き連れて、僕達は森の中をさまよっていた。
こんな状態で魔物に襲われたら、ひとたまりもない。だが幸いなことに、アイシャは鼻が利くのか魔物の居場所がだいたいわかるそうだ。なので、魔物に遭遇しないように森の中を進んでいた。
正直自分一人だと確実に死んでいたな。
アイシャは猫耳の生えた獣人だ。歳は10歳くらいかな。髪はセミロングくらいで、割とかわいい顔立ちをしていたが、栄養不足なのか、けっこうガリガリにやせていた。
ぐぅぅ~
アイシャのお腹から、空腹を訴える音がしていた。そういえば僕も腹がへったな…。ここなら特に見られる心配もないし、アイシャになら知られても、まあ良いだろう。
僕は、神技を使いリンゴを2つ召喚し、1つをアイシャに手渡した。アイシャはびっくりした顔で固まっていたが、僕がそれを食べるのを見て、おそるおそる食べだした。
「!?」
一口がじると、さらに驚いた顔をしたが、一心不乱にリンゴを食べきった。
「こんなにおいいしいリンゴ、初めて食べたよ。」
この世界にもリンゴはあった。あちらとほぼ一緒な物で、しかも、名前まで【リンゴ】だった。が、この世界では品種が違うのか、はたまた栄養がないのか、とてもすっぱくて食べれた物ではないらしい。なので、もっぱら貧民層の食べ物になっているのだが…。
「お兄ちゃん、どうなってるの?」
「ああ、これは僕が出した物なんだ。僕って、そういう能力があるんだよ。」
「へー、すごいね!ごはんに困らないね!」
って、すごく目をキラキラさせて言ってきた。いつのまにか、お兄ちゃんということになっているが、まあ悪くはないのでそのままにしといた。なんか妹ができた気分だ。
「ああ、でも、みんなには内緒ね。みんなに知られると怖いことになっちゃうから。」
「ふ~ん、よくわかんないけど、わかった。」
僕はもうひとつリンゴを出し、アイシャの頭をなでながら横に座った。アイシャは、喜んでリンゴにかじりついていた。
もう少しで夜が明けそうだ。だんだん明るくなってきた。とりあえず、ここですこし休んでから、人のいるところを目指そう。街道に出れば、行く方角も分かるだろうし。
僕達は、アイシャと交代で仮眠し、街道を目指して森の中を歩きだした。
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街道はすぐにみつかった。馬車の跡もあるから、おそらく昨日の道に戻ってきたのだと思う。たぶんこのまま道を進めば町か村にでも行けるだろうが、問題がある。この格好だと、また捕まる恐れがあるのだ。
「まあ、考えててもしかたないか。行こう、アイシャ。」
「うん。」
昨日でアイシャは、すっかり俺になついた。まるで餌付けしたみたいな形になったが、まあいいだろう。獣ッ子はデフォで探知能力がすぐれているし、僕も一人だと不安になるから。
ふたりで街道を進んでいると、少し前の方に馬車の残骸が見えた。残骸?いやあれは、襲撃後だ。昨日の場所に戻ってきてしまった。
「ア、アイシャ。昨日の場所にきてしまった。逃げるぞ!」
アイシャの手をひいて来た道を戻ろうとしたが、
「でも、お兄ちゃん。今は誰もいないみたいだよ。」
「え!?まじで?」
「うん。近くにも、誰の気配も感じないよ。」
罠?とかないよな…。盗賊も盗る物だけ盗って、さっさとトンズラしたのかな?まあ、ああいうのは長居してもいいことないから、引き揚げたんだろう。
「じゃ、じゃあ、ちょっと様子を見てくるから、アイシャはここに隠れててくれ。」
「う、うん。気をつけてね、お兄ちゃん。」
僕はアイシャを近くの茂みに隠し、一人で近よってみた。
ひどい有様だった。奴隷商も護衛の人も無残に殺され放置されていた。馬車は黒こげになって、ボロボロになっていて、もちろん中の物も黒こげだった。他にあった3台の馬車は、おそらく持ち去られたのだろう。
ふと、ごっつい兄さんの方を見ると、もちろん死んでいたのだが、腰に鍵束をみつけた。枷の鍵だろう。ラッキーこれで枷を外せる。
さっそく枷を外し、死んでいる人達からいろいろ失敬していった。服とかナイフとか、使えそうなものはとりあえずもらって、手を合わせておいた。
もちろんその後、アイシャの枷も外してやったよ。




