部員
俺達は部室についた。
「ようし! それじゃあ自己紹介を始める!」
翔兄が一番奥の席に座って言う。
奥の席というのは何ていうか、小学校の時の給食の時間に机をくっつけただろう。そんな感じに並べられた机の一番奥ということだ。
「じゃあ奏君、京也君、座ってもらえるかな。」
愛海先輩が一番入り口方向の椅子を出して言った。とりあえず、それに従って俺達は座る。
すると、翔兄がおもむろに立ち上がった。
「俺がこの部の部長をしている園峰翔だ! 身長は191,2センチ、体重は82,3キロ、好きな食べ物はバ・・・。」
「部長! 簡潔にお願いします!」
愛海先輩が言う。
「ん? あぁ、すまん。楽器はピアノ、キーボードを担当している。ちなみにピアノと出会ったのは・・・。」
「次はあたしの番だね!」
翔兄の言葉をに割り込んできた。
愛海先輩は翔兄の右斜め前に座っている。
「あたしは3年の西野愛海! 担当はパーカッションだよ! でも大体ドラムかな。」
愛海先輩はドラムだったか。どう考えても翔兄のが似合ってるのになぁ。
「さぁ次は芽衣ちゃんの番だよ!」
そういって愛海先輩の対向席のショートカットの小さな女の子を指さした。
部室に向かっている時から気になっていたが、やっぱり部員だったのか、何年だろう、もしかして新入生だろうか。
「小見島芽衣。パートはチューバ。」
そういうと不機嫌そうにそっぽを向いた。かと思うと、
「翔、何でこんな金髪ともやししかいないわけ? 意味わかんないんだけど。」
一瞬何を言ってるかわからなかったが、それが俺達に言ってるものだとわかった。
「芽衣、そういう言い方はよくないぞ! たしかに金髪ともやしだが、だからといって非難していいわけじゃない。」
翔兄は大事なとこを完全に無視している。
なんだと? この俺をもやし呼ばわりしやがったのかこのちびは。ていうか、なんで翔兄にタメ語聞いてんだよ。
不思議に思い靴を見てみる。
「え? 3年?」
おもわず声に出る。
「は? 今なんつった、もやし。」
カチーン、さすがにむかつく。
「いやぁ、あまりに身長が低すぎるんで新入生かなぁ、と思ったんですけど僕の間違いみたいでした。」
嫌味100%で言ってやる。
「おい、さすがに失礼だろ。」
横で京也があせっている。
「向こうからけんか売ってきたんじゃねえか。」
そうだ、俺は悪くないぞ。
「一年の分際で舐めた口きいてくれるじゃない。」
うっ、さすがに言いすぎたのか、芽衣先輩はすごいオーラで包まれていた。
「め、芽衣ちゃん、どうどう。」
愛海先輩が猛獣を扱うようにしてなだめる。
「謝っといた方がいいんじゃねえか?」
京也が俺にささやく。何か俺もその方がいい気がしてきたぞ。
「すいません、ちょっと言いすぎました。」
誠意をこめて謝った。
「ほら、芽衣ちゃんも謝って!」
愛海先輩がうながす。
「ごめん。」
全然気持ちが込められていなかった。が、いちいち言ってたら話が進まないのでやめておこう。
「次はちーちゃん! どうぞ!」
そういって愛海先輩は俺の目の前の子を叩く。
ちなみにこの人も芽衣先輩と同じく、初めて見る顔である。すごく長い髪の毛、特に前髪が印象的だ。
「か、かげや・・・えです・・・。」
ん? 全然聞き取れなかったぞ。
「もっとはっきり言わんか、影山。」
翔兄が言うと、その人はもう一度名乗った。
「か、影山智慧、です。パートは、えっと、サックスです。」
ははぁ、智慧先輩はシャイなんだな。やっとこの部にまともな人を見つけることができたぞ。
さりげなく俺は喜んでいた。
「そういう訳で、自己紹介を終わりにする! あんまり遊んでいる時間はないんでな! なぜなら、来月の体育祭で演奏する事になったからだ!!」
翔兄は、はっはっはと笑い出した。
え、来月本番ってそれ本気で言ってるのか? 俺、今日初めて楽器に触れたんだかいけるのか?
「じゃあ奏君と京也君は、芽衣ちゃんと一緒に練習してくれるかな。」
愛海先輩が言う。
「は? なんで私がこいつらと練習しなきゃいけないわけ?」
芽衣先輩は猛抗議にでる。俺だってこの人とやるのは難しい気がするよ。
「何でって、金管どうしじゃん。という訳で頑張ってね~。」
そういって愛海先輩はどこかに行ってしまった。
「ちっ、仕方ないわ。とりあえず待っててちょうだい。」
そういうとやたらでかいケースのもとに行ってしまった。
「初めての練習があの人とって、大丈夫かなぁ?」
京也が心配そうにしている。ほんとに見かけによらなすぎるだろ。どんだけ気が小さいんだよ。職員室で暴言はいてたのは何だったんだ?
そんな事を思いながら、内心俺も心配でしかたなかった。