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ブラシック  作者: 簿沌論
6/8

同級生(3)

 驚愕だった。あのうるさい愛海まなみ先輩までもが目をぱちくりさせている。

「いやぁ、久しぶりだったんで口がもうばてちゃいましたよ。」

あはは、と京也は笑っていたがこっちは尚も唖然だ。さすがに二人の視線に気まずくなったのか、京也は続けて言った。

「あの、どうでしたかね?」

その言葉に先輩がはっと気づいた。

「い、いや~、予想外だったねぇ。うん、ほんと君は予想GUYだよ。」

相変わらず変なことを言っているが、その言葉には切れ味がなく、弱弱しいものだった。

そうなのだ、こいつ、京也は劇、撃、激うまだったのだ!

吹いてみてと言われてからの3分弱、京也は短い曲だが一曲を丸々吹ききったのである。そして、その演奏が終わった後、音楽室の教室の方まで聴こえていたのであろう、コーラス部からの惜しみない拍手が聞こえてきたのだ。

「いやぁ、たいした事ないっすよ。」

京也が照れながら言う。

この野朗、どう考えてもできないキャラだろ! なんで俺みたいな素人でもわかるぐらいうまいんだよ!

「たいした事大有りだよ! 京也君、出身中学を教えてくれるかい?」

「えっと、桐陽です。」

桐陽中学って言ったらたしか俺の中学と同じ学区内だったよな。案外こいつの家も近いんだろうか。

「ほぅ、そりゃうまいわけだ。」

愛海先輩は呟いて頷いている。

「え? どういう事ですか?」

吹奏楽の事を何も知らない俺は聞くしかなかった。

「桐陽っていったら吹奏楽の名門校だよ。全国大会にも常連で、去年もたしか金賞だったはずだよ。」

そんな強豪校がこの地区にあったのかよ!

「すごい戦力になるよ! 奏君も頑張ろうね!」

まじか、俺にこんなうまくなれる気が全くしないんだが。ていうか、他の部員もそれなりにうまいんだろうか。だとしたら俺なんか邪魔になるんじゃねぇの?

「はぁ。」

ため息もでるさ。憂鬱になってきたな。

「奏! 俺も教えてやるから頑張ろうぜ!」

「お、おう。」

偉く上から来るじゃねえか。まぁ仕方ないか、練習すりゃなんとかなるだろ!

俺は無理やり納得しておいた。

「よし! 一旦部室に戻ってくれ!」

翔兄しょうにいが無駄にでかい声で叫んだ。

「自分の楽器も持ってね。」

愛海まなみ先輩が付け加えるように言う。京也はホルンとトランペットの両方のケースを持った。

え、俺トロンボーンの直し方なんてわからないんだけど。

「これ、直し方わからないんだけど。」

京也にさりげなく聞いてみる。

「あぁ、そこのねじ回してスライドとベルをわけていれるんだよ。」

ねじ? あぁ、これのことかな。

俺はくるくると外した。が、

「これ、滅茶苦茶かたいんだけど。」

「んー、結構力入れないと取れないようになってるんだ。ひねる感じに取ると外れやすいかもな。」

ひねる感じねぇ。

俺はトロンボーンを持ち上げた。瞬間にスライドがシャーッとすべり落ちる!

「「ああああああああああああ!」」

京也がいち早くそのスライドを受け止めた。

「っぶねえ! ちゃんとロックかけとかねぇと。」

「お、おう、悪かった。」

心臓とまるかと思ったよ。まさかこんなトラップがしかけられているとは。

トラップなんか誰も仕掛けていないが、何が起こるかわからないので、俺は細心の注意をはらってトロンボーンを片付けた。


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