ブラシック?(2)
「よし! それじゃあまだ準備があるんでな。明日の放課後またここに来てくれ!」
翔兄はそういって俺を教室から追い出した。
「じゃあまた明日ね! ばいばいきーん。」
二つくくりの先輩が最後にそういってドアを閉めた。・・・・なんなんだばいばいきーんって、そんなの中学の時だって言ってる奴いなかったぞ。いや、小学校の時ですらいなかったか。
そして、すこしの間俺は廊下に一人突っ立っていた。が、いつまでもそこにいたって何もないので俺は再び昇降口へ向かった。
そこには丁度希が降りてきていた。
「あれ? もう部活見学終わったの?」
希は少し不思議そうに聞いてきた。ふん、お前なんてどうせ、~ズやらに加入してきたんだろうが。俺は活動内容不明の部活に反強制的に入れられたというのに。俺は軽蔑の目線を希に送った。
「じゃあ一緒に帰ろっか!」
希はまるで俺の視線なんてまるで気にしていなかった。まぁどうせ一緒に帰る友達のいない俺は希と並んで歩いた。
「教室で喋ってた人達と帰らなくていいのか?」
「んー? だって皆電車通学なんだもん。だから私は先に降りてきたんだよ。」
へー、案外電車通学って多いんだな。そんな事を考えつつ俺達は自転車置き場に向かった。
俺と希の家は、高校から自転車で10分ぐらいの距離にある。電車通学になんて全く憧れていなかったので、一番近いこの高校を選んだのだ。
俺達は自転車を押して校門までたどり着いた。校内では自転車をこいではいけないと校則で決められているのだ。
「そういえば部活はどうだったの?」
思い出したかのように希は質問してきた。
「あー、何か変な二つくくりの先輩に無理やり連れて行かれて、お前の兄貴に無理やりサインさせられたよ。」
俺は無理やりという部分を強調した。
「へー、もう入部したんだ。」
希は意外そうな顔をした。
いやいや、せっかく無理やりというとこを強調したというのにそこは無視ですか。希は俺の話をあんまり真剣に聞いていないようだった。
「一応な。正式な活動は明日からなんだってさ、よくわからんけど準備があるって言ってたな。」
一体なんの準備があるというのだろう。というか部員はあの二人だけなのか?いや、でもあの教室他にも誰かいたような気がしてきたぞ。気のせいかな?
「ふうん、そうなんだ。」
そういうと、希は自転車にまたがった。俺も同じように自分の自転車に乗る。
そして、今日の授業の事などを喋っている内に希の家についた。俺の家は希の家から3分ぐらいのとこだ。ちなみに二人とも2階建ての一軒家である。
「じゃあ、また明日だね。」
希はそういって玄関の中に入っていった。高校に入学する前にショートにした希の髪を少し眺めてから俺も家路についた。
「ただいまー。」
そういって俺は靴を脱いだ。玄関には弟と妹のものであろう靴がばらばらに散らかっていた。当然のように俺はそれを無視して自分の部屋へと向かった。
部屋に入り俺はすぐベッドに横になった。高校初めての授業で多分疲れていたのだろう、すぐに眠りに落ちていた。が、
(がんがんがん!! がんがんがん!!)
いきなりドアから騒々しい音が聞こえて俺は目が覚めた。
「にいちゃーん! あけてよーー!。助けてよー。」
まぎれもなく弟の悠の声だった。
「うるせー! 黙ってそこから去れ!」
俺は兄としての威厳を込めて怒鳴った。
「プレステがつぶれちゃったんだよー。」
この糞ガキ!勝手に俺のプレステ使いやがったな!
俺はドアを開けてやった。と同時に言った。
「言い訳を聞いてやる。言ってみろ。」
「なんかカセットいれるとこがはずれたんだよ。」
何だと?なぜそこが外れるんだ、そんな壊し方俺は聞いたことがないぞ。
「とりあえず見せてみろ。」
きっと何かの間違いだろう、そうでないと困る。
弟は頷いてそのままリビングにプレステを取りに行った。
ちなみに弟は小学2年生だ。妹はその1歳下の1年である。
(ガッシャーーー!)
「ゴラァァァあああ!!!」
俺はぶち切れてリビングまで走った。そこには、悠がディスクを入れる場所だけを持って立っていた。そして、その下にはプレステがあった。というか落ちていた。
弟は目に涙を浮かべて言った。
「ご、ごめんなさい・・・。」
すると、母さんがキッチンからやってきた。
「奏! また悠君泣かしたの!? お兄ちゃんが弟いじめてどうするの!」
そうか、これは俺が悪かったのか。自分の小遣いを半年貯めて、中1でやっと手に入れる事のできたプレステを弟に壊された兄は、その弟に一言怒鳴っただけで、自分の否が多くなってしまうのか。
俺は涙をこらえ、プレステを拾い、弟から残骸をうばってから部屋に帰った。
ああ、まだやっていないカセットがたくさん残っていたというのに。
俺はこの日、晩御飯も食べずにそのままプレステを抱いて寝た。