ナミダの証明〜cry in sympathy〜
朝から雨が降っていた。
たったそれだけのことが理由ではないだろうがけど、確実に心が沈んでいる。
普段はよく理解できない自分が、今は意外にもはっきりわかるような。
けれど
ひどく冷たいくせ、ジクジクと喉元を焼く熱のカタマリに喘ぐのは、他の誰でもない。
私自身なのだ。
「はははっ…… 」
灰色のぼんやりとした部屋で、小さく笑った彼の声は疲れたように力無く。
曖昧さ故か、静かに分散して消える。
ぐずりだした空はナミダの止め方を忘れてしまったみたいに困った顔をしている。
「なんか、泣きすぎたみたいだ」
はは、と。
ほんの少し空気を震わせるだけの浅い吐息だった。
ねぇ。
あなたが私に教えてくれた"笑顔"って、そんなのじゃないでしょう?
もしかしたら、彼は私に嘘でもいいから微笑み返して欲しかったのかもしれない。一時であっても、本物みたいな安堵が欲しかったのかもしれない。
だけど私は笑わなかったし、何も言わなかった。
椅子に座り、私よりも少し低い位置にある顔を眺めるだけで。
どうすることも。
「私のせい?」
弱々しく掠れた声がしたと思ったら、自分の声でびっくりした。
それはあちらも同じだったようで、目を見開き、口を微かに開けた。
しかし、その口から紡がれるのは一言もなく、すぐに唇を引き合わせた。
彼は首を横に振る。
"ちがう"と。
世の中の不条理に
理想を捨てるみたいに。
諦めたように首を振る。
―ここにいるのに。
私、ずっといるから。
冷たい雨に、一人、
泣いたりしないで。
ねぇ
聞いてる?
「愛してる」