表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/56

ナミダの証明〜cry in sympathy〜

朝から雨が降っていた。

たったそれだけのことが理由ではないだろうがけど、確実に心が沈んでいる。

普段はよく理解できない自分が、今は意外にもはっきりわかるような。

けれど

ひどく冷たいくせ、ジクジクと喉元を焼く熱のカタマリに喘ぐのは、他の誰でもない。

私自身なのだ。



「はははっ…… 」


灰色のぼんやりとした部屋で、小さく笑った彼の声は疲れたように力無く。

曖昧さ故か、静かに分散して消える。

ぐずりだした空はナミダの止め方を忘れてしまったみたいに困った顔をしている。


「なんか、泣きすぎたみたいだ」

はは、と。

ほんの少し空気を震わせるだけの浅い吐息だった。

ねぇ。

あなたが私に教えてくれた"笑顔"って、そんなのじゃないでしょう?

もしかしたら、彼は私に嘘でもいいから微笑み返して欲しかったのかもしれない。一時であっても、本物みたいな安堵が欲しかったのかもしれない。

だけど私は笑わなかったし、何も言わなかった。

椅子に座り、私よりも少し低い位置にある顔を眺めるだけで。

どうすることも。




「私のせい?」



弱々しく掠れた声がしたと思ったら、自分の声でびっくりした。

それはあちらも同じだったようで、目を見開き、口を微かに開けた。

しかし、その口から紡がれるのは一言もなく、すぐに唇を引き合わせた。

彼は首を横に振る。

"ちがう"と。


世の中の不条理に

理想を捨てるみたいに。

諦めたように首を振る。


―ここにいるのに。

私、ずっといるから。


冷たい雨に、一人、

泣いたりしないで。



ねぇ

聞いてる?


「愛してる」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ