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忘れられない優しい歌
とても好きな歌がある。
"生きろ"
言われるだけで
こんなにも生きようって思えること、知らなかった。
心にでっかくて深い
孤独の穴があった。
生きるのが辛くなったら
自らその穴に潜り、
一人ぼっちになる。
漆黒の熱くて痛い闇。
怒鳴り声すら
聞こえない世界。
温もりは何処?
優しさは何処?
泣きながら手を伸ばす。
虚しく空中を切るだけ。
膝を抱えて愛を待つ。
待っていても
愛は来るはずないのに。
午前零時。
息を殺して泣く僕を
包んでくれる人はいなくて。
耳を塞いで寝るしかなかった。
吸い込む酸素が
吐き出す二酸化炭素が
震える。
こんな自分
生きることが許されていいんだろうか。
答える者はいない。
でも
死にたいと思ったとき
聞こえたのは
生きてくれと愛を歌った
ひとりの歌い人。