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想うは貴方、漆黒にシズム
ちょっとした小話。
過去、少年を助けた黒い女。助けてもらった少年。
少年の視点からのオハナシ。
「私はもう、ダレカのために生きるって決まってるから。
死ねない。」
黒髪に黒のスカート。
風に靡かせ女は泣いた。
そのカナシミは深く
深く、
誰にも触られないほど
奥に。
人の孤独を癒すためだけに存在する彼女は
"幸せ"というものの温かさを知っているだろうか。
どうしてそんなに
哀しそうに泣くのですか。
――ひとりで。
闇の中、
淋しさに震えて。
細い彼女の手首。
気づいてる?
俺がココにいるってこと。
あなたが癒してくれた傷だらけの少年は
こんなに生きていますよ。
貴方は、
気づいていますか……?