表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/56

水玉物語

短編恋物語、です。

最近幸せに終わるお話が書きたくなったので。

その日は、窓からの風が気持ちよくて

時間がゆっくり穏やかに流れていた。

「こら。起きなさい!」

背後から溜息混じりの女の子の声が……と、ぼんやりした意識の中で何と無く感じ取った。

ただ、その声が自分へと向けられていることには

中々気づかなかった。

それから、自分が今、

どこにいるのかということも。

「う――――…」

ふわふわした感覚のまま、目を覚ます―――と思ったけどやっぱムリ…

そうやって

もう一度眠りに着こうとしたとき。

「お・き・ろっ!!

部長ってば!

おきろ――っっ」さっきと同じ声。

幼気の混じった可愛い声。

なんだか妹に起こされている感じがして、

僕は苦笑しながら薄目を開けた。声と見合った、小さくて細っこい女の子がそばにいた。

桜色の唇をほんの少し尖らせている。

微かな春の匂いが、絵の具や筆や、様々な画材の匂いと共に鼻をくすぐった。

僕のよく知る、同級生の女の子。

「ははは。おはよ。」

彼女の顔を見ると、安心してなんだか笑えてきてしまう。

「部活の時間ですよ。

寝ちゃだめです。」

くるりと後ろを向いてしまった。

猫の尻尾みたいな、二本のお下げが少しだけ跳ねる。そのまま去ってしまいそうな彼女の細い腕を、優しく掴む。

「……だめ。敬語禁止!」

やんわりと笑ってみせると、驚いたように瞳をまぁるくする。

「う……わかりました。」

眉間に皺を寄せ、頬をうっすら染める。

そんな一つ一つの動作が可愛くて、自然と口元が綻んでしまう。

僕と彼女の二人だけの部室に、幸せ色の風が吹き抜けた。

「結衣、」

その風にそっと乗せるように彼女の名前を呼ぶ。


「好き。」


部室に小さく小さく響いた、たった二文字の言葉。


君に届け。


世界一大切な人、

僕はあなたが大好きです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ