捨章3
終わりのない気候の狂乱と異常な熱波により、世界は人々が生きられる限界を超えつつあった。
かつて文明を育んだ広大な大陸は、海が干上がり、すべてを灰に変える致死性の熱風が吹き荒れる不毛の焦土と化している。特別な備えもなく立ち入れば、数分で血が沸騰する死の世界だ。
人々は殺人的な陽射しから逃れ、かつては厚い氷に閉ざされていた、わずかに命を繋ぐことのできる地の果てへと押し寄せた。しかし、そこも決して安住の地ではない。朽ちゆく古い設備と、枯渇していく水や食料を巡り、血で血を洗う凄惨な生存競争が絶え間なく続いている。
その争いに敗れた者、あるいは最初から何も持たない者たちは、生存圏の外縁――熱波が容赦なく襲いかかる痩せ細った荒野へと追いやられる。彼らに残されたのは、極限の飢餓と貧困に苛まれながら、ただ緩やかな死を待つだけの地獄の日常だ。
そんな絶望に支配された泥濘の中で、貧者たちの間にまことしやかに囁かれている噂がある。
――世界のどこか、大地の底深くには、かつて権力者たちが建造した完全な楽園が隠されている。
噂によれば、その隔絶された地下空間では完璧な秩序と気候が保たれ、飢えも、争いも、病すらも存在しない。そこへ辿り着くことさえできれば、心穏やかな人々とともに、緑豊かな庭園で永遠の静謐を生きることができるのだという。
現世のあまりの苦しみと焦燥に耐えかねた者の中には、その真偽も定かではない噂にすがり、狂気じみた希望を胸に「地下の楽園」を探す旅に出る者たちがいる。
しかし、熱波の彼方へと歩み去った彼らの中で、帰ってきた者はただの一人もいない。
彼らが本当に約束された楽園へと辿り着き、安息を手に入れたのか。
それとも、果てしない熱波と渇きに焼かれ、名もなき砂丘の一部となって力尽きたのか。
それを知る者は、この荒れ果てた地表には誰一人として存在しない。




