第8話：師匠の言葉
試合後の調香室は静まり返っていた。ユウは掌の震えと胸の奥の熱を感じながら、師匠・香坂トウマの前に立つ。空気に微かに残る香りが、体の奥まで熱を伝え、肩先にじんわりと余韻を残す。
師匠は静かに瓶を手に取り、視線をユウに向ける。白衣の裾が微かに揺れ、微細な香りの波が空気に漂う。その香りが胸の奥まで染み込み、微かなときめきと緊張を呼び覚ます。ユウは自然と背筋を伸ばし、手元の香料に意識を集中する。
「ユウ……今日の香式、お前の香りは人の心に触れた。だが、それ以上に体に余韻を残していたな」
師匠の言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる。香りを通して心だけでなく、体まで揺さぶる力――それが香式の本質だと、改めて感じた。呼吸がわずかに乱れ、指先や肩の微かな感覚が熱を帯びる。
「香りは、勝敗や数字で評価できるものではない。人の心に触れ、体に余韻を残す。それを体感できたかどうかが、真の評価だ」
胸の奥で熱がさらに膨らむ。微かに指先が震え、肩の奥が柔らかく火照る感覚。香りが、心と体の両方に触れる瞬間の甘く切ない余韻を、ユウははっきりと覚えている。
師匠は微笑み、ユウの肩に軽く手を置いた。その瞬間、胸の奥で温かい熱が広がり、指先に微かな電流が走るような感覚。香りの力と身体感覚が交わり、微妙にときめく余韻を残す。
「お前の香りは、まだ不完全だ。でも、だからこそ面白い。心と体を同時に震わせる香りを作れる力が、お前にはある」
胸の奥がじんわりと熱くなり、呼吸が重なる感覚。ユウは小さく頷く。掌の震え、肩の熱、胸の奥のざわめき――すべてが、香りによる官能的余韻として体に残っている。
「忘れるな、ユウ。香りは、人の心に触れるだけでなく、体にも触れる。触れた時に生まれる感覚こそ、香りの真価だ」
ユウは息を整え、胸の奥の熱を感じながら微笑む。香りで心に触れ、体の奥に余韻を残す。それが、自分が進むべき道であると確信した瞬間だった。香りの力が、心理と体感を同時に揺さぶり、甘くも熱い官能的余韻として胸に刻まれる。
初めての香式から、ユウは大切なことを学んだ。勝敗ではなく、心と体に触れる感覚――その余韻こそが、香りの本当の価値なのだと。胸の奥の熱が、これからの道を静かに照らしている。
