第10話:模倣できない理由
放課後の調香室。静寂の中、ユウは香料瓶を前に深く息を吐いた。胸の奥の熱がまだ残っている。昨日のレイナとの出会い、視線と香りが交差した瞬間の余韻が、肩先や指先まで微かに震える感覚として残っている。
「僕の香り……模倣されるのか?」
呟く声は小さく、しかし胸の奥の熱が耳まで伝わる。呼吸がわずかに乱れ、掌がひんやりと汗ばんでいるのを感じた。香りを混ぜる指先の微細な感触も、体の奥のざわめきと連動している。
師匠の言葉が思い出される。
「香りは、人の心に触れ、体に余韻を残す。真似できるのは形だけだ」
胸の奥がじんわりと熱くなる。香りは単なる技術ではない。心と体に触れ、記憶や感情を映すものだと実感する。微かな呼吸の乱れ、肩先の熱、指先の感覚――すべてが官能的余韻としてユウの体に残る。
ユウは一滴の香料を垂らす。微かに漂う香りが、胸の奥に柔らかく広がり、心と体の両方を揺さぶる。昨日のバトルやレイナの評価が、胸の奥の熱と微かなときめきとして反応する。指先の震え、肩先の温かさ、呼吸の微細な変化……すべてが香りの作用だった。
「模倣できない理由……それは、感覚そのものだ」
ユウは小さく頷く。香りに込めた自分の感情、胸の奥で生まれる熱、呼吸や肩、指先に伝わる微細な反応。それらは、誰にも完全には再現できない。香りの形ではなく、心と体に触れる余韻こそが自分の個性だ。
微かに教室のドアが軋む。振り返ると、レイナが静かに立っている。胸の奥が熱くなり、呼吸が少し重なる。視線が交わるだけで、肩先や指先まで微かにざわめきが広がる。香りの余韻と心理的緊張が絡み合い、体が反応しているのがわかる。
「君の香り……やはり、他の誰とも違う」
胸の奥がじんわりと熱くなる。香りと心理、体感が交錯する瞬間、ユウは自分の香りの価値を再確認する。微かに震える指先、肩の熱、胸のざわめき――すべてが、模倣ではなく、自分だけの表現だと告げている。
ユウは掌の震えを感じながら、小さく息を吐く。香りを通じて心と体に触れること――それが自分の強みであり、模倣できない理由なのだ。胸の奥の熱が、甘くも熱い官能的余韻として残り、次の挑戦への力に変わっていく。




