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第六話

もうすぐ2026年ですねぇ…。

大掃除したんですけど、懐かしいゴミたちがたくさんでてきました。いやぁ、時って早いですね。

「誰」

ケイが放ったその言葉は初老が連れてきたある青年に向けられていた。

「こんにちは」

青年はにこりという表現がとてもふさわしい笑顔をガルたちに見せた。

「こいつは…」

「僕はハスイ。味方と言っていいかは解りませんが、こちらの陣営にいると思ってもらって構いません」

ガルとケイは顔を顰めた。それを見てハスイは苦笑する。

「あぁ。僕は少し脳を弄ってましてね。外部からの干渉はできないようになってるんですよ。ということで、僕を探ることはできません」

ハスイは自身の頭をこつんと叩きながら「どういうふうにしたかは秘密ですが」とまたもやにこやかに笑った。

「こいつは研究員ではないが使えるやつでな。上とのパイプを持っているから便利だ」

「便利って…。僕は物じゃないんですが」

「?何を言っている?人間は道具だろう?」

「…」

ハスイは少し引いたような表情をした。ガルとケイはそれに同情する。真正面から人間は道具だろうと言われたら、そういう表情にもなるだろう。

「まぁ、とりあえずよろしくお願いします‥‥」

そう言い、ハスイはガルとケイに手を差し出す。

「って言うわけにもいかないですよね」

ハスイは差し出した手をもとに戻す。今後の人生、命が関わっているガルとケイはそう易々と警戒を解くわけがないのだ。

まあ、それも解って冗談半分でハスイも手を差し出したわけなのだが。

「僕も初対面の相手に信頼しろとか言われても無理ですし」

大げさにハスイは肩を竦めた。そして初老をじろりと睨む。

「ここに僕を連れてきたのは、このクソじじ、ゔゔんっ、所長ですから」

ケイは初老をじろりと睨んだ。双方から睨まれた初老だがひょうひょうとしていた。

「こいつは少し訳ありでな。私が匿っている。人質も私が持っているし、こいつが逆らうことはないだろう。私が人質を処刑しろと思えばこいつの人質は死ぬ。使える奴は使ってなんぼだ」

「‥‥その人質っていうのは効力があるの?」

ケイがハスイを見ながら、そう聞いた。ハスイは相変わらず初老を睨みながら、不機嫌そうにしていた。

「あるとも。断言できる」

「…それならいいけど」

ケイは不満げにしながら、こくりと頷いた。ちなみにガルはただ傍観しているだけである。話し合いに参加するつもりもないし、発言するつもりもない。

「後のことはこいつに聞け。私はもうすぐ会議がある。作戦等はこいつと立てろ。私はそれに協力する」

そういい初老は、すばやく観察室を出ていった。

「え、あ、ちょっと」

ケイは1テンポ遅れて慌てて止めるが、初老の耳に届くことはなかった。まぁ、届いていたとしても止まらなかっただろうが。

取り残された警戒し合う者たち。気まずい沈黙が観察室を支配していた。

「‥‥」

「‥‥」


五分ほど沈黙していたが、ハスイは呆れたように溜息を吐いた。

「こんな不毛な時間が好きとは思いませんでしたよ」

「私もだよ。気があうね」

何故だろうか。ガルには二人の間に火花が散っているように見えた。ガルは内心溜息を吐きながら、二人を傍観し続ける。会話に入ったところで邪魔になるだけである。

正直なところ、巻き込まれたくない。飛んで火に入る夏の虫にはなりたくないのだ。

「ケイ、とガル…、ですよね?」

確認するようにハスイはそう尋ねた。ケイが肯定もせず否定もしなかったので、ガルは変わりに頷いた。

「なるほど。ガルのほうが物わかりはいいようですね。よかったです」

ケイを呆れた目で見ながら、そうハスイは言った。

「…能力が高いのはケイのほうだ。俺は頭が回らない」

「それを言えるだけで素晴らしいと思いますよ。ここは素直な、きれいな人が埋もれてしまう場所ですから。君のような人がいて嬉しいです」

「そこまできれいな人間じゃない」

「いいえ。きれいですよ。穢れを知らないわけではないでしょうが、とても純粋です。強い人なんですね」

ハスイの脳裏にはある人の姿が浮かぶ。

「‥‥本当に、強い」

そう言って、ハスイは自身の手を見つめる。白い、手。

「憧れますよ」

そうハスイはガルを優しい目で見つめた。誰かと重ねるように。

その様子にケイはむっとし、ガルの前に立った。

「ガルはガルだ。他の奴と同じにしないで」

その言葉にハスイはきょとんと驚いたような、虚を突かれたような、変な顔をした。

「ふ」

「ふ?」

「ふふっはっ!ははははっ」

急に笑い始めたハスイに、ケイは固まった。何故笑い始めたのか一切見当がつかなかったからだ。そして心底気味が悪いというようにケイはハスイを見つめた。

ガルも何が起こったのかが解っておらず、困惑し、今だに固まっていた。

「‥‥いやぁ。本当に君たちは」

「何」

「僕のと似ている」

ハスイの瞳には隠し切れない独占欲が滲み出ていた。

「正直、僕は貴方達がやろうとしていることには大賛成ですよ。僕だって、人質を取られている立場ですからね。こんな都市、早く潰れたらいいのにとは思います。ですが、この都市が世界を回しているのも事実。潰してしてしまったら、それこそあの戦争の二の舞になりかねない。君たちは、その責任を負う覚悟はあるんですか?」

あの戦争――。それが何を指しているのか、二人は解った。だてに何年も情報を取り込んでいないのだ。

「責任なんて、知らない。私たちは、ただ奪われている私たちの全てを、人生を、生を、自由を、取り戻したいだけだ。責任を負う覚悟?なんで、そんな覚悟を負う必要があるの?私たちは私たちのものを取り戻すだけ。異常を通常に戻すだけ。それの何が悪いっていうの」

そうだ。ただ、ケイは、ガルは取り戻したいのだ。奪われたものを。二人は、少なくともケイはその信念で動いていた。

「悪いですよ」

その信念を、ハスイはばっさりと切り捨てた。

「君は重大な勘違いをしています。あなたたちの人生、生、自由は、この世界のものです。決して君たちのものじゃない。君たちは生かされているんです。今この状態こそが通常なんです。それを君たちは異常にしようとしている」

ケイは反論しようとするが、それを許さないといわんばかりにハスイは口を開いた。

「君たちは世界の力です。世界に生かされ、世界のために尽くし、世界を愛し、世界を平和にしなければならない。それが、力があるものの義務です。自身で手に入れた力なら、責任など負わなくていい。ですが、君たちの力は生まれたときからあった。それは世界に選ばれ、世界を託されたということです。勝手に選ばれたと思うかもしれませんが、そんなことは知りません。理不尽と思うでしょう?僕もそうです。何度世界を恨んだかわかりません。でも、享受しないといけない。理不尽に耐えなければならない。それが、この世界を生きるための理です」

ケイは強く下唇を噛んだ。反論ができないからだ。いや、反論できるが意味がないといったほうが正しいだろうか。

根本からケイとハスイは解りあえない。

「…とまぁ、僕は思いますが、それぞれに譲れないものがありますからね。僕の考えを押し付けるつもりはありません。ですが、世界の中にはそう思う人がいるということを忘れないでください。世界はそう簡単には回っていない」

何回も失敗し、また創り直し、壊され、それを繰り返しながらできている。


―――――

世界は生きている

俺は世界。世界は俺。

僕は世界。世界は僕。

俺が死んだら、世界も死ぬ。

僕が死んだら、世界も死ぬ。

世界が崩壊しかけたら、俺も死にかける。

世界が崩壊しかけたら、僕も死にかける。

世界の理を壊そうとしたならば、排除しなければならない。

俺を害するならば、世界を害すること。

僕を害するならば、世界を害すること。

俺は生きなければならない。

僕は生きなければならない。

世界を守るために。

お前を守るために。

俺は、

僕は、

戦う。

―――――


私は、世界から生まれた産物である。


完璧になってしまった、ただの人間だから。


だから、神ではない。

世界の前には等しくただの生き物なのだ。


私も創り出せるといっても、それは世界の許しを得てだ。


今、世界はなにやら分身を作って楽しんでいるようだけれど…


私はただ、世界の意向に従うだけだ。


私は生かされている状態だ。


死なず、意思を保ち続けられているのも、世界に許してもらっているからなのだ。


だけれど、今度ばかりは…、少し反抗せざる負えない。


私の子の未来を、潰すやつらは、どうやっても排除しなければならない。


それが生かされるための誓約。


世界に反抗するか、我が子を守るか。


そんなの一択だろう。


我が子を、愛おしい子らを、守る。


ごめんなさい。世界。


私は、私の思いを優先する。


…私も反抗期に入ったかな。最近世界にとてつもなく苛ついて反抗したくなる。

―――――


Ⅰ. 起源

・世界によって設計された一族。

・世界を害するものを排除するために存在する。

・名称は伝わっておらず、「山の一族」と呼称されている。


Ⅱ. 生物学的特徴

身体能力:常人を大きく超える筋力・耐久力・反射速度を有する。

血液特性:一族の血液を摂取した他生物は、未知の細胞変異により急速に死に至る。

脳構造:

・人間とは異なる層構造を持ち、情報処理経路が独特。

・思考の形式が人間の言語体系と一致しない。


Ⅲ. 言語と文化

独自言語:

・共通語を理解するが、内部では独自言語を使用。

・記録は存在せず、外部からは解読不能。

信仰:

・世界を「我らを作り給われた主」として崇める。

・抑止力としての役割は伝説として語られるのみで、日常的には意識されていない。

・代々“世界の使い”と呼ばれるものが生まれ、神聖化している。


Ⅳ. 生活環境

居住地:高山に囲まれた隔絶地。外界との交流は極めて少ない。

人口規模:推定100名程度。閉鎖的共同体を形成。


Ⅴ. 歴史的経緯

アラング帝国との衝突:王と腹心を信仰する帝国と、信仰対象の違いから対立。

滅亡:帝国軍による侵攻で一族は壊滅。

生存者:十数名が逃亡したが、山を越えられず多くが死亡。最終生存者数は不明。

―――――


「長々と語ってしまいましたが、本題に入りましょうか」

ケイは不機嫌ながらも、その言葉にうなずいた。

「…そうだね。とりあえず、科学都市のどこから壊すかだけど」

「あぁ。すみません。今日は作戦を立てません。情報交換です」

基本がなってないのに、応用をするなんて無謀の極みでしょう?とハスイは笑った。そこには完全にケイへの侮辱も混じっていたが、ケイは苛つきながらもスルーする。

「確か、ヒャルの体を使って、コミュニティを増やしたんですよね?」

初老から聞いたのか、そうハスイは言った。

「役に立たない奴らばっかだけどね。ほとんどが噂好きだから、いろいろ入ってくるよ」

「‥‥まぁ、最悪肉の壁になってもらえばいいんです。使える駒は多ければ多いほどいいですね」

ハスイは、可もなく不可もなくという顔をした。いや、可はあるのだろうが、ヒャルの、詳しく言えばケイのコミュニティはあってもなくてもどちらでもいいのだ。

「君は?上と太いパイプがあるって言ってたけど‥‥」

「あると言ったら、あるんですかねぇ」

疑問形でそう言ったハスイに、ケイは逆に疑問を覚えた。

「なんで疑問形なの」

「いや、あいつが上層部といったら上層部なんですけど、少し曖昧な立ち位置にいるんですよ」

「どういうこと」

「そいつ、この都市で一番信仰されて信頼された男、アルマ・リブライの娘なんです。ですが、その母親が娼婦でしてね。アルマ・リブライの信頼と信仰が揺らぐことを避けたかった上層部はそれをもみ消したんです。正妻の娘だと言い切って。それで、もうそのまま隠れてすごしてもらったらよかったんですが、優秀なやつだったんですよ。いろいろ手を回して、上層部になったんです。だからか、上のあたりが強いんですよねぇ。社会を動かせる発言力があるのは確かなんですが、許可を得ないと動けないやつですから…」

何故、その娘と関わりがあるのかとケイは尋ねたかったが口を噤む。詮索するのは違反だ。ケイ自身も話したくない。

「何故、そんな奴と関わりがあるのか、と言いたげな顔ですね。マナーは守れているようでよかったです」

「そこまで無神経じゃない」

「それは、後々解るでしょう。今のところ判断する材料が少ないので」

いちいち嫌味を言ってくる奴だ、とケイは内心毒を吐いた。素直になれないものだろうか。こいつはあれだ。そう、好きなやつをいじめちゃうタイプだ。

「ということで、僕のパイプはあまり頼りにしないでください」

「頼りになんねぇの」

ぼそりとケイはつぶやいた。

「ははっ、何を言ってるんだか。あのじじいにばれてる時点でお前らも使えないと思いますよ?」

「‥‥へぇ?」

ケイはにっこりと笑う。ガルには「お前のほうが使えねぇよ。クソ嫌味野郎が」という副音声が聞こえた。いや、きっと幻聴だろう。うん。そうだ。ガルは現実を放棄することにした。

「ああ。もうこんな時間ですね。それでは、次回からよろしくお願いしますよ?餓鬼野郎さん」

にっこりとハスイは手を差し出した。

それに、ケイもにっこりとそれに応じる。

「うん。よろしくお願いするね?へたれ」

あぁ、次回もこれが続くのか…。とガルは途方に暮れた。何故こうもケイと科学都市民と合わないのか。

ガルは静かに、未来の自分に黙祷した。

・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

「なんなんだよ。あいつ!」

ハスイが観察室を去った後、ケイはそれはもう荒ぶっていた。デジャウとはこの時に言うのだな、と少々的外れのようなことをガルは考えながら、ケイを宥めていた。

「落ち着け。気に入らない奴に、感情を支配されるのは癪だろ」

「…そうだけど」

ぶすくれたように、ケイはベッドに倒れこんだ。案外ケイは子どもらしいのだ。論理観やら、道徳心やら、全ては“見て”学んでいるので、本当の教育など受けたことはない。怒られたことも、ほめられたことも、愛を受けたことも。

「ガルは苛立たないの?」

「‥‥俺は別に」

ガルはケイが全てなので、他のところからぴーちくぱーちく言われても、どうでもいい。関心がない。そもそもケイと出会わなければ、あの時死ぬ予定だったのだから。死ぬ覚悟、というわけではないが、ケイ以外の全てを失うことを受容しているのだから、特に何も思わない。なんて言うとケイは騒ぎ出すのでガルは考えるだけで留めておく。

「ガル。約束だから心は見ないけど、変なこと考えたら殴るからね?」

ガルのことを見透かすように、そうケイは言った。

互いの心は、必要以上探らない。

ガルはその約束など破りきっているのだが、それは言わない。ケイのためならなんでもする。隠すことなど許さない。

「いつ、でれるかなぁ」

ポツリとそうケイがつぶやいた。

「‥‥」

ガルは答えない。その回答はもう、決まっているから。

「ガル…?」

「ん、ああ。いや、少し聞き過ぎただけだ」

「あー、ね。意識がそっち行っちゃうときあるよね」

ケイは困ったように笑うと、目を閉じた。見ているのだろう。ガルも内側を聞く。

久しぶりに、集中して聞いた。聞き過ぎると、飲まれてしまうから。

ケイはどうか知らないが、よく聞こえてくるのは負の感情。負の言葉。人間はどうしても、負のほうが強い傾向がある。

『なんであいつばっかり』

『気持ち悪いよねぇ』

『あいつ、喋んないからおもしろくねぇわ』

『死んだらいいのに』

ガルは、そんな言葉を感情を、物心ついた時から聞いていた。それでも、感情が死ななかったのは。

『ありがとう』

『大好きだよ』

『愛してる』

渇望していたからだ。

何、と言われても言語化できない、すばらしいもの。誰かに、その何かを欲しい。

ただの欲だった。

「‥‥単純なやつだな」

ぼそりとそう呟くと、ケイは目をゆっくりと開けた。

「んー…。なんかいった?」

「いや、なにも。何か見えたか?」

「特になにも。あ、でも、性行為は「やめろ」あ、そう?」

ガルは溜息を吐いた。

今回は、少しギャグっぽくなりました。

残酷な描写ありにしたけど‥‥、でるのかなぁ、残酷な描写←作者にも解ってない。

というか、残酷な描写ってもう書いてるんですかね?ちょっと、そこらへんがよく解んないです。

長々と書いてしまいましたが・・・。

みなさん、よいお年をお迎えください!

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