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第二話

一年がたった。

ようやくガルとケイは、あの地獄から出てこれたのだ。だが、そこにいるモノは人間ではなかった。ただの人形だった。

初老と青年におとなしくついていく二つの人形。

「プロトコルとは何か。説明しろ」

初老は試すように、歩きながら人形に問うた。

「プロトコルとは、科学都市の極秘ネットワークの中枢。プロトコルは人類全てが見聞きしているものを捉えることができ、地中人にはその情報を送ることができる。なお盗聴は不可能。また外部からの電波を捉えることも可能」

ケイだった物がたんたんとそれを告げる。それに初老は満足そうにうなずいた。

「その通りだ。そうだな、……プロトコルの生きる意味とは?」

「科学都市に貢献し、崇拝し、命が尽きるまで科学都市の糧になること」

ガルだった物が答える。青年はちらりと二人を盗み見た。

どちらも何も瞳に移してはいない。正真正銘、この二人はプロトコルになってしまったのだ。ただの科学都市のために動く人形。

たった十五歳の少年少女が都市のためと意思と感情を奪われた。

そんな世の中に青年は吐き気がしそうだった。だが、それがこの世界なのだ。何かを犠牲にしなければならない。仕方ない。仕方ないことなのだ。

青年はそう言い聞かせた。

そして、初老はケイの頬を殴った。ケイはその衝撃で体がぐらつき、口が切れたが、それでも平然と立っていた。ガルもそれを見ようともせず、ただ正面を見ていた。

(目も動かない。体も動かず、揺らぎも見えない。感情も意思も、何一つ出てない)“

初老はガルに同様の行動をした。

(同じ、か)

初老は少し残念そうな顔をした。

「ここだ。君たちはここで、しばらく生活してもらう。期間は一か月。食事は一日に一食運ばれてくる。それを食べるように。ああ、あと排泄は各自で行うように」

そう初老が視線で示したのは、とても狭い部屋だった。ベッドが二つ。そしてその間に机。そしてドアも仕切りも何もないトイレが一つ。

「「了解しました」」

それに文句もけちも何一つつけず、人形たちはその部屋に入っていった。

そして初老がドアを閉める。このドアは内側から開けられないようになっており、外から入るにも許可証がないと開かない。

また初老は歩き始めた。監視するために。

青年は初老に話しかけた。

「ここまでする必要はあるのでしょうか」

初老は驚いたように青年を見た。

「あるに決まっているだろう。あの二人は感情と意思があった者たちなんだぞ?そもそも感情と意思がどうして芽生えたのかさえいまだ不明だ。一年内には解ると思っていたのだがな…。これくらいの処置は当たり前のことだ」

警戒を抜いてはいけない。そう初老は青年に言い放った。もう、何も言えなかった。


・・・・・

【資料:プロトコル運用試験記録 抜粋】

被験体47-βおよびK-13を同一空間に配置。

感情・意思の再発現は確認されず。質問にも的確に回答。

人形化プロセスは安定しており、共鳴反応の兆候は見られない。

・・・・・


<聞こえる?>

<ああ。見えるか?>

<うん。大丈夫>

<散々な目にあったな>

<そうだねぇ…。というかよく解ったね。私の送信>

<そりゃ、気づくに決まってるだろうが。手ずっとつないで、こっちもつないでたんだ。情報の波が来たって、解る>

<ふふっ、ありがとう。私を信じてくれて>

<お前が望んだからな>

<お前が望むなら、そう言ってくれたよねぇ、一年前も。かっこよかったよ>

<……>

<照れてるよね。照れてるよねっ‼>

<うるせぇ。嬉しそうにするんじゃねぇ>

<否定しないんだー>

<……うるさいんだよ>

<うるせぇしか言ってませんけどー?>

<…おい、さっさとどうするか考えるんだろ>

<話そらしたな…。まぁいいけど。うん、そうだねぇ>


―――――


私は確かに聞き、見ていた。

二人が人形を演じていたのも。

二人がまだ意思があり感情があることも。


私は心底ほっとした。

あの電波がいきかっているあの部屋ではガルとケイの思いは聞けない。

本当によかった。


ガルとケイは最初からつながっていたのだろう。

手をつないで、ずっと情報を送り合っていた。

外部からの電波も二人は受信してしまうが、直接的な情報のほうが優先順位は高い。

そして、あの部屋で手を繋ぎ、あの情報の波の中から必死に互いが送り合っている情報を引っ張り出していたのだ。


私は、何をしているのだろう。

希望という役目があるのに、あの二人を。王と腹心を救わねばならないのに。

解っている。やらなければならない。でも何もできやしない。


嫌だ。


何もできない私がいやだ。それを受け入れてしまっている私も嫌だ。

嫌いだ。希望の役目なんて、なんで私に与えたのだろうか。


私は、見続ける。そして模索し続ける。


希望としての役目を全うするために。


―――――


ケイとガルが捕まる二日前。

二人はいつも通り、資料室で話をしていた。

「だからねぇ……、違うんだよ。もっと、こう、なんかさぁ、白と黒の動物なの‼そんで、熊みたいなの‼」

「だから熊が分かんねぇんだよ」

ケイはぐるぅと唸る。一方ガルは困った顔をして、鉛筆を持っていた。そのガルの手元には紙が置いてある。

「えっと、だから、こう‼」

ケイがガルが持っている鉛筆を奪い取って、紙に描いた。

「お前の絵は壊滅的なんだよ…」

「だからガルに頼んでるんだよ」

資料に残したいの‼とケイは叫び喚いた。ガルはぽりぽりと頭を掻きながら、放り投げられた鉛筆を拾い、ケイの壊滅的な「パンダ」とやらの絵とにらめっこした。

どうみても、ただの黒と白のぐちゃぐちゃな物体にしか見えない。

「外に出たらいくらでも実体を見れるじゃねぇか」

「いつでも見たいの。それで忘れないようにして、外に出たとき、それを見てこれも見たいなぁって思い出して、見に行く。記憶はなくなるけど、記録はなくならないから」

それもそうだな、とガルは納得して少しずつまた描きだす。

黒と白。目元、手から腕そして背中に黒らしい。耳は黒で丸い。頭の上に左右対称についているらしい。毛むくじゃらで、鼻と口が全体的に顔から高い。ふむ、解らない。

「だからさぁ…‼」

ケイはガルの手を取って、絵を描かせようとした。


その刹那


「え、っと。ガル」

「ケイ…」

二人は茫然としていた。その手はそのままだった。

「あれがパンダ、か?」

「え、うん。あれ、パンダの鳴き声?」

「いや、知らねぇ」

「あ、そっか。ずっと聞こえ続けてるもんね。そんなパンダの鳴き声なんて聞こうとは思わないか」

二人は会話はそこで途切れる。解っていないのだ。今、何が起こったのか。

ケイとガルが脳内で流れてきたのは、パンダが鳴く姿。

ケイは“見えた”し“聞こえた”。

ガルも“聞こえた”し“見えた”。

二人の能力が合わさった。ということなのだろうか。ケイは考えた。

でもそれはおかしい。ガルとケイは今起こっていることしか、聞けないし、見えない。過去など見えないはずだ。でも、あの映像はケイがガルに伝えようとしたパンダと全く同じ動きであり、景色だった。

「二人の力があるなら、情報を共有でき、過去のことも流れる?」

ケイとガルは目を見合わせた。


・・・・・


【資料:プロトコル隔離運用指針 第五版 抜粋】

プロトコル同士の隔離は、情報干渉の観測を目的とする。

同一空間に配置することで、精神共鳴・情報循環・意思再発現の兆候を確認可能。

ただし、外部電波の遮断は不可能であり、直接接触による情報交換の可能性は否定できない。


・・・・・


青年はこっそりとケイとガルの部屋を訪れていた。

ごくりと喉をならして、ハッキングする。そして、ドアが開く。監視カメラにも問題ない映像が流れているはずだ。そういうようにプログラムした。

今、青年は秩序を乱したのだ。

「‥‥」

そして見えたのはベッドに座り、食事をとっている二人。食事は質素で、何も語らず、何も表情を見せず、ただただ『食べる』という行為をしていた。

前の人間だった二人を知っている青年はそれが痛々しかった。人間の闇を受けたらこうなるのかと、ぞわりと鳥肌がたつ。二人は物音に気付いたのか、こちらに顔を向ける。そして青年を視認すると、襲い掛かってきた。彼らは命令されていたのだ。初老を連れていない、または初老ではない場合は、すみやかに排除すること。

「待て」

その青年の言葉にぴたりと二人は止まる。青年の手には許可証があった。

命令はもう一つあった。許可証を持っている人間の命令には従うこと。

青年は命令を聞いたことに、ほっとし、「座れ」と命令した。人形たちはすばやく床に正座した。

「ああ、えっと、ベッドに」

座るっていったらそういうことになるのか…と青年は頬を搔きながらそうまた命令した。

「申し訳ありません」

「いやいや、大丈夫。僕の命令が悪かった」

そして青年は、口を開こうとした。何かを言うために。

だが、その口は動かず、思った。

(あれ?なんで僕ここに来たんだ?)

かわいそうだと、思ったのだ。助けたいと。だが、かわいそうだと思って行動するような、軽率な人間だっただろうか。そんなすぐ助けられると思うようなものじゃないっていうことが解っているはずなのに。

まぁ…どうでもいいか。

「えっとね、君たちを助けに来たんだ。僕は」

その言葉にうんともすんとも言わない。それはそうだろう。命令ではないのだから。

「だから、君たちをどこか遠くに逃がす」

青年はおかしいと思い始めた。自分はこんなことは言わない。科学都市のためにこの職についた。なぜ、この二人に肩入れをしているのだろうか。どうして、この二人がいなければ科学都市は勢力的に、滅ぼされてしまうのかもしれないのに。

自分で自分がやっていることが解らなくなった。気持ち悪い。自分の中に違う何かがいる気分だ。吐き気がして、口に手を当てる。青年はガルとケイの存在を思い出すと、弱弱しくこういった。

「…あ、ぇ、ごめん。今、話したことは全て忘れて、じゃなくて忘れろ」

青年は吐き気を直すためと、自身の意見をまとめるために部屋を出ていこうとした。

だがそれは叶わない。

<逃がすつもり?>

<そんなわけあるか>

ガルは青年の背中に触った。青年は驚き、後ろを見ようとする。

だが、青年の動きは止まる。流れてきたのだ。いや、聞こえてきた。情報が。どうでもいい情報が。だがそれを理解するのには量が多すぎた。

青年は気付かなかった。今までの自身の行動が自身の意思と感情ではなく、ガルとケイの命令なのだと。意思なのだと。最後まで哀れな人間だった。

そしてガルは書き換えていく、意思を、感情を。刷り込むのだ。

情報の優先順位は外部からの受信が上だと。そして直接的な情報は下だと。

そしてガルは手を離した。刷り込みが完了したのだ。

ガルはずっと青年に情報を流す。こうして意思と感情が出れなくするのだ。命令をするときはその情報を流せばいい。人間は突発的に言われたことをするのだから。

まぁ…そう思ったら今の人間たちも自分自身の意思で動いてるとは言えないのかもしれない。

<うん。予定通りだね。よくやった、ガル。>

<ああ、上手くやれてよかった>

<うん。というか、上手いね。少しずつ洗脳するの>

<あのとき、こいつが俺に触ったのはよかったな>

<ほんとにね。入りたくなかったのは本当だけど、それで私たち、というかガルに触ってくれたのはよかった>

<ああ、何も危険を犯さずつながれた。…で、どうするんだ?俺は何をしたらいい?>

<うん。とりあえずガルは絶対に情報を流すのやめないで。意思と感情が回復する>

<解ってる>

<今、この青年は私たちの人形だ。こいつをどうするか。解るかい?>

<解らねぇから聞いてるんだろうが>

<はは。だよねぇ>


―――――


私は見ていた。

青年の思想が、ねじ曲がっていくのを。

人形になっていく瞬間を。


そして私は思った。

人間とはどこまでが“自分”なのだろうか。

情報に動かされる存在は、自由といえるのだろうか。


小説を見て、人間たちは感動したり、怒ったり、苛立ったりする。

それは人の話を聞いていてもそうだ。

情報が入ってきて、私たちはようやく感情がある。


人間は情報を見て聞いて、理解し、判断し、行動する。

それはつまり情報がなければ、何もできないということだ。

それは自由といえるのだろうか。


解らない。


私も今考えていることは、『ケイとガルの行動』という情報があったからだ。

もしかしたら私は至極当然なことを言って、変なことを言ってるのかもしれない。

だが、おかしいと思うのは私だけだろうか。


情報に支配されている


これは私が思うだけの空虚な妄想なのだろうか。


―――――


<あっと。もう喋っていいよ。ガル>

<いいのか?>

<うん。この青年がそうプログラムしたからね>

そして、ケイとガルは口を開けた。喋るのは一年ぶりだ。喉は震えてくれるだろうか。

「ゔゔん。ぁ、あー」

「あ、ぇ、けぃ」

「ガㇽ。うん。いけそうだね」

ケイはグッドサインをした。ガルもそれを見て笑う。

「それで、どうするんだ?」

あらかた喋れるようになったところで、ガルはケイに問うた。

「ちょっと時間がかかるんだけどねぇ…。こいつを反逆者のリーダーにさせる」

ケイは青年を指さして言った。

「‥‥すまねぇけど、もう少し説明してくれないか」

それにあまり頭が回らないと自称しているガルは首を傾げた。

「ああ、ごめん。えっとね。私見たんだけどさ、今科学都市って都市にたいして都市民がけっこう不満を持ってる人が多いんだよね。最近、戦争負けっぱなしなんだよ。プロトコルが見つからなかったから。というかそもそもプロトコルを見つける方法は簡単だったんだよ。先代たちは報告してたんだ。声が聞こえます。見えますってね。そう命令されたでしょ?私たちも」

そう。物心ついたときに言われた命令はそれだった。それの意味なんて考えていなかったがケイは覚えていて考えていたのだろう。

「ああ」

「で、焦れてたら感情がある地中人たちがいますーだよ?びっくりしちゃうよ」

けらけらとケイが笑った。

「…話がそれてるぞ」

「あっ、そうだね。えっと、それで、不満を持っている人たちが急増してるんだよ。命をかけて戦争に行ったのに負けてるんだよ?だからその不満を利用するんだ。…まぁ、戦争をやめろとは言わないけど。困ったもんだね。人間ってのは。」

愉快そうにケイは口元に弧を描いた。

「どうやって」

「まずこいつが言うんだ。このままでいいのか!ってね」

そしてケイはすぅっと息を吸い込んだ。そして叫ぶ。

「戦争に負け続け、謝罪も何もしない政府に僕は怒りを感じている!!愛する者たちが戦争に行ったというのに政府はその命を無駄に扱っている!!おかしいと思わないか?何故勝てなくなったのか!何故謝罪もないのか!謝罪もせず、何をしているのか!何を隠しているのか!何も喋らない政府を変えようじゃないか!僕は、貴い科学都市民として、ここに改革を宣言する!」

ガルは呆気にとられた。初めて聞いたからだ。ケイの大声なんて。

「…とまぁこんな感じかな。これに都市民はけっこう賛同するだろうね。愛っていうのはみーんな大好きな言葉だからさ」

「‥‥そうだな」

んふふ、とケイが笑った。そしてガルに寄り掛かる。

「早く、こんな都市滅ぼして、幸せに暮らそうね」

ガルはその言葉にぴくりと体が動いた。

滅ぼす、というのは理にかなっている。ガルとケイが生きている限り、科学都市は二人を追いかけてくるだろうから。

「滅ぼすのが、最善策なのか?復讐者とか、来るんじゃないか?」

まだガルは解らなかったのだ。全て滅ぼす。それに忌避感はない。ケイがいればそれでいいから。ただ、復讐者が来ないだろうかと危惧していたのだ。滅ぼす、といっても何人かは生き残る。その恨みの矛先はガルとケイに向かうのだろう。

「え?そんなの大丈夫だよ。ばれなかったらいいんだから」

何を言ってるの?と心底不思議そうにケイはガルを見た。

その様子にガルも何を危惧していたんだろうと、不思議になった。

そうか。ばらさない。それで、いいのか。

ガルは残された者たちを哀れんだ。彼らたちは滅ぼされるに至った原因を知らないで、生きていくのだ。知らないで。無知のまま、生きていくのだ。

ケイは顔に影を落とし、ぽつりとこぼした。

「私は都市民がどうなろうが、地中人がどうなろうがどうでもいいんだ。ガルと一緒に幸せに生きていければいい。まだ十五歳の子供だよ?私たちは。こんなに狭い部屋で、太陽だって浴びたことはない。だからこんなにも体が小さい。力がない。おかしいよ。こんなの。私はただ、人間になって、普通に生きて、ガルから愛を受けて、幸せに生きたい。あたりまえのことじゃないのか?なんで、私たちはだめなんだ?理不尽だよ」

ガルはその言葉に何も言えなかった。確かに二人は太陽をあびたことがない。ずっと大人から歪んだものを教えられ、大人から愛を受けたこともない。親もいない。歪んだ教育の数々。普通がない。だから、互いに支え合うしかなかった。依存するしかなかった。

「異端、異端。あいつらはそうずっと言う。そうさ。私たちは異端だ。意思を、感情を持ってしまった人形」

そうだ。異端だ。だがガルからしたら他の者たちが異端といいたい。自分たちは普通だと叫びたい。だがそれを世界は許さない。それがなんとも歯痒く、苦しかった。

「初めて愛をくれたのが、同年代のガル。初めて愛をあげたのが、同年代のガル。そんなのおかしいと思わない?最初は親が愛して、愛すものじゃないの?」

そのつらそうな表情にガルはぎゅっと拳を握りしめた。自分だって親という者に愛されたかった。でも、それと同時にその言葉はガルを不安にさせる。

俺は役不足なのかと。いや、そういうことを言っているんじゃないと解っている。解っているのだ。

「おかしいなぁ」

悲しそうにそうケイがつぶやいた。

俺がいるだけじゃ、ダメなのか。満足できないのか。

そう喉元まで出掛けた。でも、言えない。ケイの邪魔はしたくない。

ガルは時々思うときがある。知らなかったら、聞けなかったら、こんな悲しさも苦しさも感じることはなかったのだろうか。

こんなに悩むことも。

「でも、まぁ、ガルと出会えたのはこの人生、といっても十五年だけど、最大の幸せだと思うよ。ガルがいなかったら私は…、どうなっていたんだろう」

「考えなくていい。もうありえない世界だ」

ガルはそれをはねのけるように言った。言ってほしくない、とでも言うように。

「そうだね。……早く潰して、幸せに暮らしたい」


―――――

私は見ていた。ガルの心の揺れを。

私は聞いていた。ケイの願いを。欲を。希望を。


私は希望だ。

だからこそ、科学都市を滅ぼさないといけない。

それを二人が、王と腹心である二人がやろうとしている。


私は王と腹心を救わねばならないのに。

二人を幸せにしなければならないのに。


やらないで


そのまま二人の力だけで幸せになったらいい


この二つの思いが私の中にはあった。


自分の役割を、生きる意味を奪われたくないという気持ち。

力の責任から逃れたい気持ち。


それがせめぎ合っていた。

どちらも私の思い。

そしてどちらも、私のことしか考えていない、欲。


醜いものだ。希望であるというのに。


自分に嫌悪している自分を見て、他の人間とは違うという優越感に浸る自分が嫌いだ。

こう思っている自分も嫌いだ。


全て、嫌いだ。


それでも、自分が大切だ。


私だって、人間なのだ。


責任なんて捨てて、自分が思うままに生きて、幸せになりたい。


私は何の力もない、力がある人間。


希望という責任を背負わされた、ただの人間。


どうしたら私は自分を好きになれる?


この力という呪いからいつ解き放たれる?


いつ異端の人間としてではなく、ただの人間として生きていい?


いつ、私は幸せになれますか?

少しおかしいところがあるかもです。第三話を書くのは時間かかりそう。本当に何もできてない。影も形もありません。

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