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喫茶店へ行こう。旅に出よう。

高校二年生咲は地方の田舎町で退屈な夏休みを送っていた。

一人悶々と退屈な時間を過ごす咲。

そんな咲の元に母親の綾子が一枚のチラシを差し出す。

喫茶ファミリア。チラシにはそう書かれていた。

どうやら最近出来たお店らしい。

綾子から差し出されたチラシに目を向ける咲。

なんと24時間営業らしい!こんな田んぼしかない田舎町に24時間営業の飲食店?

咲は驚愕して早速行って見ることにした。


柔和な笑顔を向ける紳士の男性。人生を悟りきったOL風の女性。アニメに全てをささげている男性。リストカット繰り返すメンヘラ女性。


咲はファミレスで自分にはない世界を持っている人達と出会うことで忘れられない時間を過ごしていく。


ようこそ喫茶ファミリアへ。


「人生とは退屈なものだー」咲は退屈そうに独り愚痴る。

縁側にうつぶせで寝転がる。

目の前では規則正しく扇風機が円周運動を繰り返し、咲の声を変えていく。

夏休みも中盤に差し掛かった夏の真ん中。とっくの昔に太陽は地平線の彼方へ消え去った頃。

咲は暇を持て余していた。

退屈に耐えかねては時々スマホを手に取りこではないどこかで自分にはない世界で楽しそうにしている人たちを眺める。

とにかく退屈だ。どれだけsnsを眺めようが咲の現在の状況は変わらない。

「わたしは誰もが羨む花の17歳ですよ。高校2年生ですよー。なのに。なぜこんなにも時間を持て余しているのでしょうかー」

ひたすら左右に首を動かし続ける扇風機に話しかけたところで何の返答も帰ってこない。

咲は自分のやっていることがだんだん空しくなってやめた。


あーあ、高校生2年生の夏休み。もっとワクワクすることがあってもいいんじゃないの?

毎日蝉の鳴き声で起きて、だらだらして気づいたら夕方。まあ、それもそれでいいんだけどさ。でもさ、でもよ!せぇぇぇぇかくの!高校生の夏休み。なのに、あまりにも空しすぎませんか?ここ最近やったことと言えばXやインスタを永遠に徘徊したり、飽きたらyoutubeで好きな芸人さんのショートコントをだらだらと見続けてるだけ。

まあ、それはそれでいいなだけどさ。

それにしても、、、。

暗い!あまりにも暗すぎるよ!


咲は頭を抱えて身をよじる。そのさまはまるで芋虫のようだ。人間版芋虫ここに誕生。

「あーーーもう!もっと面白いことがしたい!お、も、し、ろ、い、こ、と!」

叫んだ声は目の前に永遠と続くかのように思える田んぼに吸い込まれて消えていく。

しばらく訪れる沈黙と蝉の鳴き声とカエルのハーモに。

咲は焦っていた。このまま夏休みが終わってしまうことに。今まで通りの日常が始まってしまうことに。


「うるさいわね。さっきから何をぶつぶつ言ってんの。」

台所のほうから咲に似たしゃべり方の女性が声をかけてくる。

彼女はエプロンを外しながらあきれ顔交じりで先の元までやってくる。

「一人できゃー、きゃー言ってないで。宿題は終わったの?」

「小学生みたいなこと言わないでよ。お母さん。ちゃんとやってるよ」

「ああそう。ならいいけど。あんたて、なんだかんだ言ってきちんとやるわよね」

母親の綾子はうんうんと頷きながら一人納得している。

「ところで、何をさっきからぶつぶつ言っていたの?」

綾子は咲の隣に腰掛けながら咲に目配せする。

「なんか面白いことがないかなておもってさ。仮にも私高校生だよ?JKだよ?

毎日同じ生活ばかりしてほんとに退屈」

咲は脳内で思っていたことをつらつらと母に愚痴る。

なんでこんなにも退屈なんだ。せっかくの夏休みなのに自分は毎度毎度変わらない日常を過ごしている。そのことが咲には耐えがたかった。

「あんたて最近いつも同じような事ばっかり言ってるわよね。」

綾子は田園風景に目を向けて大きく背伸びをした。

「面白いことね、、、。あ、そうだ!そんな退屈を持て余している咲に良いお知らせ。」

綾子は突然ひらめいたように咲に向き直る。

「なにー?」

「最近新しく喫茶店が出来たらしいのよ。」

「喫茶店?」

予期していなかったワードにビックリする。

綾子は台所にスタスタと戻り一枚のチラシを咲に差し出してきた。

「喫茶ファミリア、、。」

喫茶ファミリア。チラシの中央に印刷された文字に目が留まる。紹介されているのはおすすめのメニューや営業時間。どうやらおすすめはサンドイッチのセットらしく、

どうやら24時間営業らしい。え、、?24時間?咲はもう一度営業時間を確認する。

本当に24時間だ、、。コンビニでも夜の21時には閉まってしまう誰もが認める田舎町に24時間の喫茶店ができるなんて。

「お母さん。これって、、。」

思わず尋ねずにはいられない咲。

「ええ。珍しいわよね。こんな田舎に24時間のお店なんて」

綾子も咲が言いたいことが分かっていたのだろう。得意げな顔だ。まるで自分がお店を開店させたときのように。

「せっかくだから言ってくれば?暇を持て余しているみたいだし。」

綾子のいう通りだ。ただただゆっくりと流れ続ける時間。その中で咲は退屈にもだえ苦しんでいた。そんな咲の元にやってきた偶然の知らせ。乗らない手はないだろう。

「うん。行く。今から行ってみていい?」

二つ返事で返す。咲の体はそわそわしていた。やっと退屈から抜け出せるかもしれない!

どんなお店だろう。メニューは何を頼もうかな。やっぱりおすすめされているサンドイッチのセットだろうか?飲み物は何にしよう。コーラ?それともメロンソーダかな。いや、大人になってブラックコーヒーもいいかもしれない。

期待を膨らませる咲。

次第に表情が明るくなっていく。

「夜も遅いけどよしとしましょう。そんな表情をされちゃね」

綾子はあきれ交じりに1000円札を3枚咲に差し出してきた。

「これでなにか食べてらっしゃい」

「いいの?ありがとうお母さん!」

咲は綾子に笑いかける。綾子も咲に微笑みを返す。


咲は綾子からもらった3000円を自分のお財布に入れる。部屋着から外出着へ着替える。

トップスはオーバサイズのTシャツ。ボトムスはワイドデニムパンツといった動きやすい服装に着替えた。

お気に入りの厚底スニーカーを履いて数回踵をトントンと地面に軽く叩きつける。

前髪を軽く整えて準備完了。

「行ってきますー」

台所にいるであろう綾子に向けて外出を伝える。

「きおつけていきなさいよー」

「はーい」

玄関ドアを開けると満面の星空とカエルの鳴き声が咲を迎えてくれる。

さあ、いざ冒険の旅へ!


今宵高校2年生の女の子は旅へ出る。いざ喫茶店を目指して。長くて短い旅へ。


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