龍が舞う桜の下で〜千年の時を越えて異世界に迷い込んだJKが出会ったのは御歳大神と両面宿儺の化身の龍だった件
飛騨高山の歴史と伝説が息づくこの地には、千年の時を超えて語り継がれる物語があります。
この物語の舞台は、飛騨一之宮町。そこには神秘的な「臥龍桜」と、悠久の時を刻む「飛騨一之宮水無神社」があります。
本作の主人公、一之宮かぐらは、陸上部のキャプテンでありながら、神社で神楽を舞う巫女でもあります。
彼女が日常の中で出会う不思議な出来事、そして千年の封印を解かれる運命の龍——。
この物語は、そんなかぐらの成長と、飛騨の大地に受け継がれる伝説の交錯を描いたものです。
HIDA TAKAYAMA10の10人が紡ぐ、飛騨の物語。
どうぞ、「龍が舞う桜の下で〜千年の時を越えて」、最後までお楽しみください。
物語は飛騨高山10エリアの擬人化キャラクター「HIDA TAKAYAMA10」(https://hidaten.ksstudio.jp/)のFM番組 「ヒダテン!Hit’s Me Up!」 の公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなど各種Podcastプラットフォームでも視聴できます。擬人化キャラクター「ヒダテン!」の10人、10エリアにまつわる、ちょっといい話、エモい話です!
[シーン1:高校のグラウンドで/陸上部の練習】
<かぐらのモノローグとセリフで進行>
◾️SE:ピストルの音「パンッ!」〜走る陸上部の少女たち
「追い風よ!そのまま加速!インターハイは目の前だからね!」
「よしっ!ラスト50!いけるよ!」
吹き降ろす風の中、陸上部の女子たちがゴールを駆け抜けていく。
みんな順調に仕上がってるみたいでひと安心。
私は、かぐら。
高山市内の高校に通う18歳。
で、陸上部のキャプテン。
インターハイに向けて頑張ってきたけど、ブロック大会に勝ち進まないと、その先はない。
こうなったら神頼みかな。
いや、私がそれ言ったらだめでしょ、ふふ。
「さあみんな、日が暮れる前にラスト一本決めよう!いくよ!」
もちろん私もみんなと走る。
◾️SE:陸上部員の走る音
はあ、はあ、はあっ
やるしかない。
今年こそぜったい・・・インターハイ、行くんだから
はあ、はあ・・・
◾️SE:夕暮れのイメージ(カラスorヒグラシ)
◾️SE:陸上部員の走る音
◾️SE:自転車のペダル&ベルの音
部活のあとは夕陽とかけっこ。
高山駅まで3.5km。全速力で自転車のペダルを漕ぐ。
だって、4時39分に乗らないと、5時台は列車がないんだもん。
◾️SE:高山本線の車内音
高山駅から飛騨一之宮駅までは7分。
この時間が一番幸せ。
お気に入りのWebコミックを読む、至福のひととき。
ちょうど一話読み切る頃に、飛騨一之宮駅に到着するから。
最近のお気に入りは・・・
流行りの異世界転生モノ。
私、けっこうすぐに感情移入しちゃうんだ。
だから気をつけないと。
乗り越しちゃったら、次の久々野で1時間待ち!
ありえない。
って思う人、多いんじゃない?
・・・なんて考えてたら、あ、もう着いちゃった。
そりゃそうよね。
お隣の駅なんだから。
◾️SE:高山本線が到着する音
ここから家までは歩き。
ゆっくり歩いて15分くらいかな。
ゆるやかな上り坂だから、着く頃にはほどよく疲れていい感じ。
◾️SE:カエルの鳴く声
宮川を渡り、41号を越えると、周りはのどかな田園風景。
しばらく歩くと見えてきたのは、石作りの大鳥居。
私は一瞬躊躇する。
”夜の鳥居は異世界に通じている”
誰かそんなこと、言ってたような・・・
あ、さっき読みかけのWebコミックだ。
そういえば、異世界召喚ものだったっけ・・
月明かりの下、大きな影を落とす鳥居。
その向こうは深い霧に包まれているように見える。
どうしようかな・・・
いや、だめだ。
練習しておかなきゃ。
もうすぐ、大祓えの神事がやってくる。
そう、私は、飛騨一之宮水無神社の巫女。
神聖な祭祀で神楽を舞う。
名前が「かぐら」だからってわけじゃないけど(笑)
大祓えは大切な神事。
年に一度の祭礼なんですもの。
ま、神主さんにも、遅くなるって言っといたから大丈夫か。
よし。
私は、鳥居の真下へ向かって、一歩踏みだした。
息を呑む。高鳴る心臓の鼓動。
私は心の中で祝詞を唱えながら、鳥居をくぐる。
その瞬間——
◾️SE:強い風の音「ザァァァァァ——ッ!!」
風の渦に包まれ、視界が暗転する。
足元が崩れ、身体が吸い込まれる感覚。
目を開けた時、そこには境内も絵馬殿もなく、
大きな岩と深い森の世界が広がっていた。
うっそ〜!
ま、ま、まさか、これって・・・
異世界召喚〜!
いやいやいや、アニメやボイスドラマじゃあるまいし。
違う、そんな呑気なこと言ってる場合じゃない。
で、ここ。どこなのよ〜!?
異世界によくある、中世でもないし、エルフがいる感じでもないし。
鬱蒼とした森の中に、巨大な岩。
巨大、って言葉じゃ足りないくらい巨大。
高さ5m、横幅20m以上あるんじゃない。
しかも・・・
小刻みに動いてる。
地鳴りのような音を立てて、まるで泣いているように。
これ、なに?
わかんない!
圧倒されて動けない私の周りで、木々たちが囁く。
◾️SE:木々が揺れる音「サァァァァァ——ッ!!」
大きな杉、桂、檜、そして銀杏。
みんな御神木だわ。
私になにか伝えたいの?
立ち尽くす私の肩をかすめて、ひときわ大きな風が背中へ抜けていった。
長い髪が宙を舞う。
驚いて振り返ると・・
鳥居があったところから立ちのぼるのは。真っ黒い煙のような何か。
形を留めず、蠢きながら私に迫ってくる。
御神木の間をただよいながら、禍々しい毒を吐き続けて。
青々と茂っていた木々の青葉が、黒ずんで枯れていく。
真っ黒い煙は、やがて巨大な鬼のような姿へ変化する。
だめ。こんなん絶対無理。
震えながら、慌てて逃げようとした・・・
はずなのに、まるで鉛の靴を履いているように重くて足が上がらない。
ゆっくりと足の動きが固まっていく。
な、なに、これ!?
『お前の足をもらおうぞ』
(※鬼の声/ボイスチェンジするので鬼の声もお願いします)
「えっ」
『いままでこの世界にやってきた者から口と手をいただいた』
『お前からは足だ』
そんな!うそ!イヤだ
『抗うというのか』
だって・・
だって、インターハイ出られなくなっちゃう!
『どうしてもいやだというのか』
いや!死んでもイヤ!
『ならば条件を出してやろう』
なっ、なに!?条件!?
『お前の目の前の岩だ。それを叩き潰せ』
え?岩?この?
そっ、そんなこと、できるわけない。
『いや、お前の力を持ってすれば不可能ではない』
どういうこと!?
わかんない!
『目を閉じて心で念ずるのだ』
え?
『岩よ、粉々に砕けるがよい、と』
そんな!そんな!
『さあ、やれ』
私はためらいながらも、恐る恐る岩の方へ向き直る。
思わず目をつむると、頭の中に別の声が響いてきた。
”祝詞”
”祝詞を”
え?祝詞?(※ここの「のりと」はゆっくり一音ずつ)
『祝詞』という言葉を口にした瞬間。
私でない何かが、私の体を支配した。
それは鬼と対峙して、
私の口を使い、鬼に言霊を投げつける。
『汝、禍々(まがまが)しき存在よ』
『和良々は御歳大神なり』
『ここは聖地位山。穢れた鬼が足を踏み入れる場所ではない』
『すみやかに立ち去るがよい!』
一瞬、鬼がひるむ。
それを見逃さず、私の手が無意識に柏手を打つ。
◾️SE:柏手2回「パン!パン!」
苦しそうに蠢きながら、それでもこちらへ迫ってくる鬼。
『かけまくも かしこき イザナギの おおかみ・・・』(※以前収録したものを使用)
(※可能なら一番短い祝詞『祓え言葉』をフルコーラスで)
【祓言葉】
かけまくも かしこき イザナギの おほかみ
つくしの ひむかの たちばなの おどの あわぎはらに
みそぎ はらえしときに なりませむ はらえどの おおかみたち
もろもろの まがごと つみ けがれ あらむをば
はらえたまえ きよめたまえと まをすことを きこしめせと
かしこみ かしこみ も まおす
祝詞が始まった瞬間、鬼の動きが封じられる。
一歩も前に進めないようだ。
結界。
柏手と祓え言葉によって結界が張られ、邪悪な鬼の侵入を防いでいた。
『今じゃ!』
「はい」
このあと何をすればいいのか、なぜか私にはわかっていた。
◾️SE:柏手2回「パン!パン!」
『たかまのはらに かみづまります
すめらがむつ かむろぎ かむろみの みこと もちて・・・』
鬼の目を睨みつけながら、学生カバンの中から鈴をとりだす。
御歳大神が唱える大祓詞に合わせて、私は神楽を舞う。
◾️SE:鬼のうめき声
一心不乱に舞う、私の前で、鬼が苦しそうにのたうつ。
天にはねじれた黒雲が現れ、渦巻いている。
『つみという つみは あらじと はらえたまひ きよめたまふ ことを
あまつかみ くにつかみ やおよろずの かみたち ともに
きこしめせと まをす!』
◾️SE:柏手2回「パン!パン!」
最後の柏手を打ったとき、鬼の体は黒雲の中へ吸い込まれていった。
と同時に、大きな岩が動き出す。
◾️SE:地響きと龍の咆哮「ゴゴゴゴゴ・・」
なんと、大きな岩だと思っていたのは、巨大な龍だったのだ。
龍は黒雲が霧散した天へ登っていく。
私の真上でゆっくりと長い体をねじりながら回り続ける。
口をあけたまま空を見上げる私の頬に何かが舞い降りてきた。
まるで雪のように降ってきたそれは・・・
花びら?
桜?
花吹雪はあっという間に空を埋め尽くし、私の体を包んでいく。
景色をピンクに染めて、余韻を引きながら龍は麓の方へ去っていった。
あれは、駅の方だ。
彼方へ小さくなっていく龍を見送りながら、
目を閉じると頭の中へ声が響いてくる。
『龍は鬼の魔力で岩に封じ込まれていたのじゃ』
「あの鬼はなんなんですか?」
『あれは七儺という魔物』
「七儺?」
『よこしまな心を持つ凶悪な鬼じゃ。
千年に一度蘇って、飛騨の民を苦しめる』
「千年に一度?」
『千年前は宿儺が退治して飛騨人を守った』
「宿儺って?」
『飛騨の英雄である。
あるときは二つの顔、二組の手足を持つ超人、
またあるときは、龍の姿となり、人々を守る』
「龍!?」
『汝は気づかぬか?自分に人とは違う霊力があることを』
「霊力なんてありません」
『ああ、そう思っている方がよいであろう。
汝の霊力は、飛騨の力の源でもあるからな』
「うそ・・」
『今日ここで、汝と和良々はつながった。
汝が望むとき、和良々の力はお前に宿る』
「御歳大神さま・・・」
『一之宮かぐら』
「はい・・」
『その名に恥じぬよう、巫女として精進せよ』
「は、はい・・・」
神の声が聞こえなくなると、目の前に石の鳥居が現れた。
私は、後ろ髪をひかれる思いで、鳥居をくぐる。
すると、目の前には見慣れた風景。
灯りのともった絵馬殿から、笙の音が聞こえてくる。
あれ?
私がさっき、鳥居をくぐってから、時間はまったく進んでいない。
夢?
違う。夢じゃない。
学生カバンには桜の花びらがくっついている。
私は花びらをハンカチで包み、カバンにしまった。
もうすぐ大祓えの神事。
神楽の舞で、私にできることを精一杯見てもらおう。
そのあとはインターハイ。
こっちも悔いのないように全力をつくさなきゃ。
どっちも私にとっては、大切な舞台。
私は、神職の方達が待つ絵馬殿へ、軽やかに走っていく。
揺れるカバンの中で、私を寿ぐように神楽鈴が鳴っていた。
物語を最後までお聴きいただき、ありがとうございました。
かぐらが出会った龍、そして鬼「七儺」との戦い——
これは、飛騨一之宮の歴史や伝承をもとに、新たに紡がれたフィクションです。
飛騨一之宮水無神社は、古来より人々の信仰を集め、飛騨の守り神として崇められてきました。
また、臥龍桜は、まるで眠れる龍が横たわるかのような神秘的な姿を持ち、春には美しい花を咲かせます。
そんな歴史や風景に思いを馳せながら、かぐらの物語を楽しんでいただけたなら幸いです。
HIDA TAKAYAMA10の物語は、まだまだ続きます。
次回はどのエリアのキャラクターが登場するのか、お楽しみに!
それでは、またお会いしましょう。




