NAGACHIKA(後編)〜本能寺の変で二条御所へ向かった金森長近は突如2026年のレキジョJKに心を乗っ取られてしまう件
本作は、戦国武将・金森長近と現代の女子高生が入れ替わる、歴史IFボイスドラマの後編です。
本能寺の変という、日本史最大級の転換点。
もし、その歴史の中で“誰かを救う”ことができたなら――。
史実をもとにしながら、「生き延びること」の意味を描きました。
ぜひ前編とあわせてお楽しみください。
【ペルソナ】
・金森長近(ながちか/59歳=本能寺の変の時点での年齢/CV:日比野正裕)=知花と入れ替わる
・金森知花(ちか/17歳/CV:坂田月菜)=高山市街地の高校2年生。レキジョで剣道部
・金森長則(のりピー/19歳=本能寺の変の時の年齢・享年/CV:日比野正裕)=長近の第一子
・織田信乃(しの/17歳/CV:坂田月菜)=知花の親友。少しだけわがまま
【歴史年表】
◾️飛騨平定(1585年):本能寺の変から3年後、61歳で飛騨の領主となる
◾️高山城築城開始(1588年):本能寺の変から6年後、64歳で築城と町づくりをスタート
◾️茶の湯を保護(1591年〜):師である利休が切腹すると、その嫡男・千道安を飛騨へ招いて匿う。この縁で金森家には茶の湯の極意が伝えられ、後の「宗和流」へとつながっていく
◾️高山城完成(1603年頃):城下町を含めすべてが整ったのは慶長8年(1603年)頃と言われており、長近が79歳という高齢の時期
◾️水無神社社殿造営(1607年):亡くなる前年、83歳の慶長12年。長近は60歳なかばから臥龍桜(当時そのような名称はない)を愛でるようになり、一之宮に愛着を持つ
【プロローグ:1582年/京都・二条御所「本能寺の変」】
◾️SE:襖を開く音
『なに!
明智光秀が謀反だと!?』
『信長様は自害?
まことか、まことの話か!』
『嫡男の信忠様は?
・・・逃れて、二条御所へ?』
『行くぞ!長則!
二条御所じゃ!
なんとしても信忠様をお守りせねば!』
◾️SE:燃え盛る炎の音
『遅かったか!
おのれ!光秀!
御所に火を放つとは!正気の沙汰か!』
『ええい!放せ!長則!
止めるでない!』
『信忠様〜!
この長近めがすぐに参りまするぞ〜っ!』
◾️SE:炎の轟音
【シーン1:1582年/二条御所/入れ替わった長近】
◾️SE:燃え盛る炎の音
「ハッ!
え?え?え?
なにこれ?なにこれ?
あっつつつつつぅ!
やだ!ここはどこ〜!?」
「父上、いかがなされました?
お気を確かに!」
「父上?
なに言ってんの?
あんた誰?」
「ご乱心めされましたか?
金森長近が第一子、長則をお忘れですか」
「金森長近・長則〜?
いやいやいやいや、わけわからんし。
ってかなにコレ!?
火事じゃん!火事!119番しなくちゃ!」
「明智軍の所業にござろう。
そう言ったのは父上ですぞ」
「明智?
明智光秀?
てことは、まさか、本能寺の変?
てここ、京都ってこと〜!?」
「本能寺ではござらん。
二条御所でござる」
「二条御所?
てことは織田信忠〜?」
「信忠様がまだこの中におられます!
父上はさっき、火の中へ飛び込もうとされたではないですか」
う〜ん。
わけわかんないながらも、なんか見えてきたぞ〜。
ううううううう、レキジョの血が騒ぐ。
本能寺の変、といえば、1582年。
明智光秀が起こした日本史上最大のクーデター。
「敵は本能寺にあり」
本能寺にいた織田信長を不意打ちして、自害に追い込んだ。
確か、信長の第一子・信忠も二条御所へ追い込んで自害させたはず。
信長はすでに、家督を信忠に譲っていたから、
信忠が正式な織田家当主だったもんね。
いや、信忠だけじゃないわ。
この長則もここで・・
「父上!」
「あ、うん、ごめんごめん」
「父上が行かぬのなら、某が火の中へ参ります!」
「待って待って待って!
スト〜ップ!
のりピー、いったん落ち着いて」
「のりぴー?」
「今突っ込んだら、あんたの生存ルート消滅確定だから!」
「なにをおっしゃっているのか、よくわかりませぬが・・・
武士が主君に殉じるのは誉れにございましょう!」
「だ〜からダメだって!
アタシだってそれなりのレキジョなんだから!
信じなさい」
「れきじょ?」
「いい、ようく聞いて。
織田信忠、ってか信忠様?が自害しちゃったら、
織田家は跡目争いでガタガタになるの。
結局あの『サル』に全部持っていかれちゃうんだから!」
「さ、猿・・・?
羽柴殿のことですか?」
「そうよ! 秀吉!
昔から三英傑の中で一番好きくないし。
えらそうに大河とか出ちゃってさ。
なことはどーでもいいけど、ようく考えるのよ、のりピー」
「は、はあ・・・」
「このままだと、明智の軍勢によって信忠様は自害させられちゃうでしょ」
「それは・・・口惜しいですが・・」
「でも、今ならまだ明智の包囲網には穴があるはず!」
「穴・・・?
二条御所は完全に囲まれておりますぞ!」
「甘〜い!
あ、ちょっと古いか・・
いい?令和のレキジョをなめないでよ。
ここ、二条御所の隣は公家のお屋敷でしょ?」
「確かに・・」
「あそこの壁を壊して逃げ込むルートがあるはず!
公家の屋敷なら、明智軍もすぐには手を出せないから」
「なんと・・・公家の屋敷を通り抜けると!?
しかし、そのような不作法、信忠様が許されるかどうか・・・」
「なこと言ってる場合じゃないでしょ。
公家の屋敷からみんなで変装して脱出するのよ!
忠臣蔵的な感じ?」
「忠臣蔵とは・・・?」
「いや、なんでもない。
とにかく、アタシが信忠様を説得する。
のりピーは、亡くなった兵士たちの具足を貸りてきて。
脱出用の替え玉にするよ!」
「替え玉・・・なるほど!
承知つかまつった!
父上、本気で信忠様を救うおつもりなのですな!」
「ったり前じゃん!
アタシがここにいるってのも、必ずなんか理由があるんだから!
もっぺん言うけど、レキジョをなめんじゃないよ!」(※見栄を切る)
「御意!」
「あっ、そうだ。
のりピー、木刀とか持ってない?
こう見えてアタシ、剣道三段なんだ」
「なにをおっしゃっているのですか、父上。
ご自身をよくご覧くだされ」
「え?」
そう言って、自分の体を見渡すと、
鎧から下がっているのは・・・なんと真剣!
鞘から抜くと・・・
ズシリと重い・・・
ふん。
空に向かって一閃する・・・
「これは・・・いい!」
「そりゃあ、そうでしょう。
天下の名刀・正宗ですから」
くぅ〜っ!
とうらぶでも、正宗の4振は、抜けてるからねー。
思わず身震いする。
でもこれがホントの・・・武者震いだ!
「では、父上・・」
「うん・・・
いくぞ!のりピー!」
◾️SE:轟々と燃える炎の音と2人の力強い足音「ガシャッ!ガシャッ!」
【シーン2:1582年/二条御所から逃れた信忠と長則・長近】
◾️SE:ししおどしの音
「なんとか、無事に二条御所から逃れたけど
ここからが大事だからね」
目の前に、織田信忠と金森長則が座る。
うっわー、こんなシチュエーションが体験できるなんて。
生きててよかったぁ〜!
あ〜あ、スマホがあればなあ・・・
この画、ぜ〜ったい、バズるのに。
「信忠様。
この度は勝手なことをして申し訳ありませんでした。
世の中ではいま、信忠様は自害されたことになっております。
それを理解したうえで、このあと歴史がどうなるか伝えるから。
よ〜く、聞いてね。
まず、信長様に手をかけた明智光秀。
あやつは、もうすぐサルに制圧されるから。
あ、サル・・羽柴秀吉ね。
そのあとは清洲会議。
結局、秀吉が推した三法師がポスト信長になっていくの。
まだ3歳なのにねー。
え?
ん、そうよ。信忠様のお子さん。
傀儡よ、傀儡。
実権は秀吉が握って、その力を借りて天下を統一するってわけ。
ん?あれ?
なんか、あんまし興味ない感じ?」
そうかぁ・・・
二条御所でアタシたちが助けたとき、信忠はもう自刃を覚悟していた。
長則も信忠に殉じようと思ってたんだ。
替え玉を使ったから、すでに2人は、歴史上から消えている。
名前もなく、ただ生き残ることは『屈辱』でしかないんだ。
アタシ、とんでもないことしちゃったのかなあ・・・
ううん。いや、違う。
戦とか名誉とか、そんなんホントにくだらない。
生きることの方が、そんなものよりよっぽど大切だ。
アタシは絶対に間違ってなんかいない!
まだ火の手が収まらない二条御所。
そのはるか向こうには赤く燃える本能寺。
ぼう〜っとそれを見ながら、魂が抜けたような信忠。
仕方ないわね。
尊敬する父・信長が、信頼していた光秀に自刃させられたんだもん。
生きる気力もない、ってか。
もう〜。仕方がないなあ。
「おい、長則!のりピー!」
「あ・・は、はい!父上」
「この状況で、信忠様があのようになるのは仕方がない。
だが、お前までそんな呆けていてどうするの?」
「はっ」
「実はアタシに少し考えがあるんだ」
「と申しますと・・・」
「飛騨の国、って知ってる?」
「はい、三木自綱の領地でござるな」
「3年後にアタシ、ってか、金森長近は、その三木を討つ」
「え?」
「飛騨に城下町を築くんだ」
「それは、遠見、ですか」
「まあ、そんなとこ」
「それで、飛騨がどうされましたか?」
「実はアタシはこのあと、主君と息子を弔うために剃髪する」
「え・・・」
「そんで、お二人も一緒に飛騨へ行かないかなって」
「な、なにを突然・・・」
「信忠様は亡き上様から、名器と言われる茶器を譲り受けておられましょう」
ハッと驚いて、顔をあげる信忠。
うわー、ホントだったんだ。
アタシ、レキジョでホント、よかったわ。
でも、ここからよ。
これからどうしよう・・・。
ええい、まいいわ!
テキトーにとりつくろっちゃえ。
「えーと、ハッキリ言います。
信忠さま、これからの人生、
剣を茶筅に持ち替えていただけませんか?
そうやって、小さな茶器の中に新たな世界をお作りなさい。
かつて父上が茶器で国を封じたように、
信忠様は、その小さな茶器の中に、争いのない新たな理を封じるのです。
これこそが、茶の湯の心でありましょう」
うわぁ、なんかすげーこと言っちゃった。
だって、とっさに思いつくのって、これしかなかったんだもん。
信長って茶道具を天下人のステータスにしてたでしょ。
でもってー、たしか、高山には織田信忠から茶器ってのがあったはず。
これでなんとか、歴史の辻褄、合わせられないかなあ・・・
まあ、たかだか18歳のJKがえらそうに、って感じだけど。
アタシはレキジョなんだから!
すべてわかっててやってるからいいよね。
【シーン3:1582年/飛騨一宮水無神社】
◾️SE:ししおどしの音
「2人とも一緒に飛騨まで来てくれてありがとう。
アタシ、どうしてもここに来たかったんだ。
飛騨一宮水無神社」
金森長近が平定する前の飛騨の国。
飛騨一宮水無神社。
でも、この時代、水無神社がこんなに荒れているとは・・・
ショック・・・
信忠と長則は、なにも言わずに草むしりを始めた。
「父上、某はこの神社を整備いたしましょう。
かつては栄えていたであろう、このように立派な神社。
なのに見る限り、社殿らしきものはありません。
おそらく度重なる戦乱や兵火により、焼失・倒壊してしまったのでしょう。
某はここに小さな庵をもうけて、信忠様と住まおうと思います」
「そっかー。それいいねー。
でも三木に見つからないようにね。
3年後、アタシが治めるようになるまでは。
近くのお寺が管理してると思うから、それにも気をつけて」
ひととおり雑草をむしりとった2人は本殿の前に立った。
◾️SE:二礼二拍手の音
それまで苔むして見えた本殿が光に包まれる。
あ、あれって・・・
そう思ったとたん、視界がぼやける。
目の前がぐるぐるまわっていく・・・・
遠のいていく意識の中で、世界が消えていった・・・
【シーン4:2026年/知花帰還/臥龍桜〜飛騨一宮水無神社】
◾️SE:野鳥のさえずり
「ハッ」
「よかった!知花、気がついた?」
「信乃!
こ、ここは?」
「なに言ってんの。水無神社じゃない。
あんた、立ったまま、ず〜っと固まってたのよ。目をつむったまま」
「じゃあ・・・戻ってきたのね!現代へ!
よかった!」
「ちょ、大丈夫?」
「いいの!
信忠も長則も無事だったんだから」
「ワケわかんない」
「あ・・・でもアタシ・・・歴史を変えちゃったかも・・」
「はいはい、どんどん変えてください」
「ねえ知花、高山城は?
高山城って、どうなってる?」
「どうなってるもなにも、ただの城址じゃない」
「そっか・・・よかった・・」
「もういい加減、その歴史ゲームやめたら?」
ゲームならよかった。
でも、これは現実。
あとは・・まかせたよ、長近。
金森長近公!
【シーン5:1607年/飛騨一宮水無神社】
◾️SE:野鳥のさえずり
「ああ、間に合ったなあ」
「どうされましたかな?素玄どの」
「生あるうちに社殿が完成して、感無量なのだよ」
「それもこれも素玄どのが、神社を再考してくださったからこそ」
「なあ、そろそろ、もう、いいんじゃないか・・・”のりピー”」
「はは、そうですね、父上。
どうです、このあと道安さま、いえ、信忠様の庵で一服・・・
位山の名水で立てる茶の湯は格別でございましょう」
◾️SE:茶を点てる音
庵に佇む千道安、誰も知らぬ実の名は織田信忠。
手元にあるのは、『初花の肩衝』。
(※アンダーライン部分言い換え「茶の湯の道具」)
本能寺で焼失したはずの天下の名器である。
茶筅を振る柔らかな音が、静寂に溶けていく。
「知花どのは達者でおるかのう・・」
「誰です?その、知花さまというのは」
「わしの恩人じゃよ・・」
◾️SE:茶を点てる音〜信忠の咳払い
「と、これは失礼・・・」
「・・・良いお点前で」
透き通るような空気のなか、静かに時間が流れていった・・・
戦国時代では、「死」が美徳として語られる場面も多くあります。
しかし、この物語で知花が選んだのは、“生きる”という道でした。
その選択が、飛騨の未来や茶の湯の歴史へどう繋がっていったのか。
想像しながら楽しんでいただけたなら嬉しいです。
この物語はボイスドラマになっています。
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