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「ルーツ〜高山出身者は高山祭には絶対里帰りするの!?」

『ルーツ』は、東京での洗練された生活と、かつての故郷・高山への複雑な想いとの狭間で揺れる一人の男、ヨシカズの心模様を描いた物語です。幼い頃の記憶を遠ざけ、あえて高山を否定してきた彼が、親友ハルトの突き放せぬ一言や、温かくも切ない祖母からの手紙を通じて、自分の本当のルーツと向き合う決意を固めていく過程は、現代を生きる私たち一人ひとりに問いかけるものがあります。エミリとの何気ない会話の中にも、ふるさとへの温もりと誇りが隠されており、読者の皆さまにとっても、自分自身のルーツやアイデンティティについて考えるきっかけとなれば幸いです。なお、物語は番組「Hit’s Me Up!」の公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなど各種Podcastプラットフォームでもお楽しみいただけます。

<『ルーツ』>


■プロット:

高山出身であることを隠して東京で生活するヨシカズ。高山の話題が出るたびに話題を避けたり、蔑んだりしていた。ある日、親友のハルトが両面宿儺の話をしてくる。最初否定的なことばかり言っていたヨシカズだったが・・


<登場人物たち>

・ヨシカズ=喜一(25歳)・・・ECサイト運営会社の会社員/高山出身ということを友だちにも彼女にも隠している

・エミリ=栄美里(26歳)・・・ヨシカズの彼女/秋田出身/たまに秋田弁が出るけどおおらかで隠すつもりはない

・ハルト=陽翔(27歳)・・・ヨシカズの同僚で友だち/東京出身/オシャレだが歯に衣着せぬ性格は誤解されることも多い


※Emily追加コメントはすべて赤色 /湯浅追加コメントは紫色



[シーン1:ヨシカズの部屋/1ルームの中央にある炬燵に座って手紙を読む】


■SE/TVのガヤ(県民ショー的な音が聞こえてくる/MCの声「秋田って意外にすごいよね」)


・ハルト/手紙を読むヨシカズ


ばあちゃん:※手紙のみ

「ヨシカズ、今度の高山祭りは帰ってこれるんか?

ばあちゃん、足腰弱くなって、そうそう歩けんようなったから

もう東京へは行けん

生きとるうちにもう一回顔がみたい

仕事忙しいやろうけど、無理はせんようにな

元気で暮らせよ」


ヨシカズ:

「ばあちゃん・・」



[シーン2:焼肉屋】


■SE/焼肉屋の環境音


・ハルト/一番最初に焼肉に箸をつけて豪快に食べる

・エミリ/おとなしいヨシカズに焼肉をとってやる

・ヨシカズ/作り笑いをしながら箸をつける


ハルト:

「なあエミリ、両面宿儺って知ってるか?」


エミリ:

「いきなりなんだば、ハルト。そい、アニメの悪役だべな?」


・ヨシカズ/気になるけど顔に出さず2人の会話を傍観する


ハルト:

「なんだけど、実際に存在したらしいぜ」


エミリ:

「うそ」


ハルト:

「ホントだって。なあ。

ヨシカズも知らないか?」


ヨシカズ:

「知らない」


エミリ:

「いつ、どこにいたの?」


ハルト:

「高山ってところに大昔いたんだって」


エミリ:

「高山?どこそれ?」


ハルト:

「知らん。東北のほうじゃね?」


エミリ:

「東北にそんなとこないわよ」


ハルト:

「そっか。ヨシカズ、ホントに知らないか?」


ヨシカズ:

「知るかよ、そんなど田舎」


エミリ:

「ど田舎?」


ハルト:

「関係ねえだろ、田舎とか」


ヨシカズ:

「聞いたこともないし、どうせなんもないって」


エミリ:

「ねえ、ちょっと見てよ、これ」


ハルト:

「なんだ?」


エミリ:

「高山って東京都と同じくらい広いところなんだって」


ハルト:

「広いだけが取り柄の場所かあ」


エミリ:

「ハルト!」


ヨシカズ:

「そうそう、広いだけが取り柄」


ハルト:

「だよなあ、だって聞いたことねえもん。高山なんて」


エミリ:

「あだ、高山さ恨みでもあるの?」


ハルト:

「ねえよ、どうせ、高山なんて両面宿儺以外は、なんもないんだろ」


ヨシカズ:

「ああ、そうだ」


・ヨシカズ/そう言ってビールを飲む


エミリ:

「なんぼなんでも、しゃべりすぎだべよ」


ハルト:

「話題にするのも時間のむだむだ!」


・ヨシカズ/だまってビールを飲みため息をつく


ヨシカズ:

ハルトの言う通りだ。

高山なんてみんな知らない田舎の街。

だけど・・

オレにとっては、ばあちゃんのいるふるさと。

高山祭に・・帰りたいな・・・



[シーン3:東京駅/丸の内駅舎】


■SE/緑の窓口


ヨシカズ:

「東京から高山まで。新幹線と高山線で」


■SE/東京駅の環境音/ヨシカズの足音


・ヨシカズ/ボストンバッグを肩にかけて、祖母の手紙を手に持っている

→南口へ入ろうとすると、改札の前でエミリとハルトが立っている


ハルト:

「抜け駆けは許さんぞ」


エミリ:

「行き先は高山でしょ」


ヨシカズ:

「おまえら・・」


ヨシカズ:

「なんで・・」


エミリ:

「ふふん」


ハルト:

「さすがに、あの態度はバレるって」


エミリ:

「あれから高山のこと調べたんだよ」


ハルト:

「高山祭りのこともな。高山の人は全員参加なんだろ」


エミリ:

「そしたらハルトがじゃあ前日しかないだろって」


ハルト:

「GPS共有しててよかったわ!オレたち始発の時間から待ってるんだぞ」


エミリ:

「始発じゃん、これ」


ハルト:

「まあな」


エミリ:

「始発で来てくれてよかった」


ヨシカズ:

「おまえらも高山へ行くのか?」


ハルト:

「あったりまえじゃん、そんなすごい祭りなら見なきゃだめだろ」


ヨシカズ:

「高山祭りだけじゃないぞ、高山のいいとこは」


ハルト:

「ようし、期待してるぜ」


エミリ:

「案内、よろしくね!」


ヨシカズ:

まったく・・

4時間以上かかるってわかってんのか、こいつら・・

なんて思いとは裏腹に、3人で冗談を言い合いながら

オレはのぞみのホームへ駆け上がっていった。


・ハルト/ヨシカズの肩に手をかけて押し出すように歩く

・Emily/軽い足取りでついていく

・エンドロールの背景は高山市内のいろいろなところを歩く3人

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。『ルーツ』は、ヨシカズがこれまで隠し続けた自分の出自に気付き、ふるさと・高山に対する見方を少しずつ変えていく、静かで力強い成長の物語です。ハルトの率直な言葉や、エミリの温かい存在が、彼の内面に眠る本当の気持ちを呼び覚ますさまは、どこか私たち自身の葛藤や懐かしさを映し出しているように感じられます。今回の物語を通して、「ルーツ」というテーマの大切さや、自分の過去とどう向き合うかという普遍的な問いに、少しでも共感していただけたなら幸いです。Podcast版では、声優たちの情熱的な演技と音響効果が、また新たな感動をお届けできると自負しております。今後とも、皆さまに心温まる物語をお届けできるよう努めてまいります。

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