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ハッピーアグリーデイ!〜飛騨ももの妖精”もも”は後継者不足に悩むひだもも農家に希望の光を灯しにやってきた!

みなさん、こんにちは!

この物語『ハッピーアグリーデイ!』は、岐阜県高山市・国府町の特産品 「飛騨もも」 をテーマにした、ちょっぴり不思議で心温まるお話です。


主人公の もも は、夏休みに飛騨高山を訪れ、ひょんなことから農家のおばあちゃんと一緒に桃の収穫を手伝うことになります。彼女の明るさと優しさが、やがて農園に小さな奇跡をもたらしていきます。


物語の中では語られていませんが、実は ももは「飛騨ももの精」。

つまり、飛騨ももの擬人化キャラクター なのです!


「グリーンツーリズム」、「家族の絆」、そして「飛騨もも」の魅力をたっぷり詰め込んだ本作。読んだあと、きっと "ちょっと不格好でも愛おしい" ものが身近に感じられるはず。


さらに、本作は ラジオ番組『Hit’s Me Up!』 とのコラボレーション作品でもあり、

Spotify、Amazon、Apple など各種 Podcast プラットフォームでもお楽しみいただけます!

耳でも心でも、飛騨ももの世界を味わっていただけたら嬉しいです。


それでは、ももと一緒に、飛騨の夏を旅しましょう!

<『ハッピーアグリーデイ!』>


【資料/国府の飛騨もも】

https://hidakokufu.jp/enjoy_taste_heal/227/



[シーン1:7月末/収穫の始まり】


<飛騨もものモノローグ>

むかしむかし。

飛騨の国府こくふという町に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。


おじいさんは山へ芝刈りに・・

じゃなくて、自分の果樹園に桃の収穫に出かけました。

ではおばあさんは?

川へ洗濯へ・・

行きたかったのですが、腰を痛めたおじいさんと一緒に

果樹園へ出かけていったのです・・


■SE/ニイニイゼミの鳴き声(初夏のセミ)


<おばあさん>

『今年はほんとにあっついなあ、おじいさん。

まだ7月やっていうのに』


おじいさんは目で返事をします。

あたり一面に漂う、うっすらと甘い香り。

2人は籠を片手に、丁寧に桃を摘み取っていきます。

低いところに実った桃はおばあさん、

高いところに実った桃を獲るのはおじいさんの役目ですが・・

獲ったあと痛くて腰をかがめないので、大変そう。


『おじいさん、すごい汗やな。大丈夫か』


大丈夫じゃなかった。


熱中症。


そりゃこの暑さだもの。

仕方ないけど。

力の抜けたおじいさんをおばあさん1人で家まで連れていくのは大変でした。

家に着いて、おじいさんを寝かせ、ひと息ついたところで、おばあさんもぐったり。


『残りの収穫はもう明日以降でいいやな。熟してまってもしょうがない。

わしまで倒れたらどもならん』


しばらく休んだあと、よっこらしょ、と立ち上がり、お勝手へ。

一服しようと、お茶を沸かしているときでした。


『こんにちは』


『ん?誰かいな』


『あの・・夏休みで高山へ遊びにきた大学生です』


『ほうほう』


『もも、と申します』


『もも!?

そりゃそりゃ、めんこい名前やわ』


『こちらの農園の方ですか?』


『ああ。うちには、わしとおじいさんと、2人しかおらんで』


『ほかには?お子さんとかいないんですか?」


『おらん。息子は30年前、高校生のとき家を飛び出して東京へ行ったわ。

それきり音沙汰もない。

よっぽど、畑仕事が嫌やったんやろなあ』


「そうなの・・・

実は、飛騨ももの収穫体験をさせていただこうとお邪魔したのですが』


『収穫体験?桃の?』


『はい、グリーンツーリズムで』


『なんやて?グリーン・・・』


『グリーンツーリズムです。

農業体験をしながら農家へ泊まらせていただくこと』


『そんなもんがあるんかい?そりゃしらなんだ』


『でも、やってるとこ、どこもいっぱいなんですって」

それであのう・・・申し訳ありませんが・・・

よければ、収穫のお手伝いをしながらこちらに泊めていただけませんか?』


『なに?うちに?』


『あ、いきなりごめんなさい。

もちろん、宿泊代はお支払いします』


『いやいや、お金なんていらんやさ。

それよりこんな汚いとこに泊まらんでも』


『きれいじゃないですか、埃ひとつない』


『布団も煎餅布団しかないし』


『そんなの関係ありません。

飛騨ももの収穫を手伝わせてください!』


『いやあ、ちょうどおじいさんが熱中症で倒れてしまってな。

しばらく作業を休もうかと思ってたんや』


『そんな。桃が熟しちゃう』


『そうやな』


『私じゃ全然お役に立てないけど、

これも何かの縁だと思いませんか』


『う〜ん・・』


『私、こう見えても、立ち仕事には慣れてるんです』


『でもなあ・・』


『ヘバったり、泣き言言ったりしません』


『そうか・・』


『お願いします』



[シーン2:8月/真夏の収穫】


<飛騨もものモノローグ>

こうして、ももはおばあちゃんの農園で一緒に収穫をするようになりました。

セミの声もニイニイゼミからクマゼミへ。

真夏の太陽が桃畑に降り注ぎ、収穫も最盛期を迎えます。


■SE/クマゼミの鳴き声(盛夏のセミ)


『桃の実はな、赤くなって、まあるく膨らんできたら、収穫のサインなんや』


『へえ〜。私のほっぺみたい』


『ははは。そうやな。

それにしてもももちゃん、あんた桃の摘み方、ほんとに上手やなあ』


『そうですかあ。

一度やってみたかったんです』


『初めてとは思えんわ。

それにな、桃の実の扱いが、愛情たっぷりで・・・

ありがとうなあ』


『やだなあ、おばあちゃん。

桃が大好きなだけよ』


『そやな。そういえば、名前もももちゃんやもんなあ(笑)』


『そうそう』


『今日はもう籠いっぱいだから、ちょこっと早いけど

帰ろうか』


『はい』


『帰って、熟れた桃を食べようなあ。傷桃だけど』


『わあやったぁ!

おばあちゃん、傷桃も大切にしてくれるのが嬉しい』


『そうりゃそうや、みんな大事な子どもたちやからな』


『おばあちゃんの子どもでよかった』


『なにを言うとる。ははは』


『ふふふ』


■2人の笑い声



[シーン3:9月/夏の終わり】


<飛騨もものモノローグ>

お盆を過ぎると、夏の終わりを告げる風が吹き始めます。

最初2週間くらいの予定だった、ももの収穫体験は

8月が過ぎ、9月の声を聞いても続いていました。

この頃には、おじいさんの腰もゆっくりと快方へ向かっています。

おばあさんはときどき、午後になると、おじいさんを畑に残し、

いろんなところへももを連れていきました。


『せっかく国府へ来てくれたんだから、ええとこをいっぱい見といてほしいんや』


そういえば国府には、素敵な場所がいっぱいあるってこと

すっかり忘れていました。


■SE/ツクツクボウシの鳴き声(晩夏のセミ)


宇津江四十八滝。

頂上までは1時間くらいかかるけど、ゆっくりお話しながら登ればあっという間。

帰りは温泉にも入って。

こんな贅沢な時間、2人だけでいいのかしら。


そのあとで桜野公園のピーチロードへ。

なんて素敵な名前。

来年の春は、満開の桜も桃も、見てみたいな。

いまは、そばの花で、一面真っ白。

ロマンティック〜。


そうそう。

安国寺も忘れちゃだめよね。

私が大好きな民話。「安国寺のきつね小僧」。

何度聞いても、泣けてきちゃう。

お稲荷さんに行って手を合わせなきゃ。


■SE/ヒグラシの鳴き声(夕暮れのセミ)



[シーン4:10月/別れの日】


<飛騨もものモノローグ>

果樹園の収穫はももの手伝いもあって無事に終わり、

別れの日がやってきました。


『3か月か。長いようで短かったあ。

ももちゃん、本当に本当にありがとうなあ』


『こちらこそ、ホントに楽しかった』


『よかったらまたおいで。

今度はなんも手伝わんでもええで。

ただ、遊びにきんさい』


『うん。おばあちゃん、絶対また来る。

来年も収穫、手伝わせて』


『来年か・・・』


『約束よ』


『本当はこの農園も今年限りにするつもりやったんやさ』


『え・・?』


『でもな、おじいさんの腰もびっくりするほどよくなったし』


『うん!』


『もう少しだけ、がんばってみようかなあ』


『そうだよ!だって、私、来年行くとこ、なくなったちゃうもん』


『またそういうことを言うて』


『本当だもん。

来年また、この畑の桃がピンクの花を咲かせて、

うっすらと桃の香りがしてきたら、そのとき私、また来るから』


『そうかい、そうかい』


『指切りげんまん!』


『ああ、よしよし』


『指切った!』


『来年・・またおいで』



<飛騨もものエピローグ>

おじいちゃんおばあちゃんがももを送って、家に帰ったきたとき。

郵便やさんが玄関に立っていました。

滅多にこない郵便に少し驚くおばあちゃん。

差出人のところを見ると、なんと音信不通だった息子の名前。


驚いて封をあけると、こう書かれていました。


息子の子ども、つまり孫が来年大学を卒業する。

大学は農業系の大学で、孫は農業をやりたいのだという。

おじいちゃんとおばあちゃんの果樹園で働きたいのだそうだ。

驚いて声が出ない老夫婦。

手紙を持ったまま目を閉じるおばあちゃんの頬に何かが触れた。

それは、季節はずれの桃の花びら。


ピンクの花が、希望を運んできてくれたのかもしれない・・・

最後まで読んでくださって、ありがとうございます!


『ハッピーアグリーデイ!』、いかがでしたか?

「飛騨もも」にまつわる 人と人とのつながり、田舎の豊かな時間、少しの不思議 を感じてもらえたら嬉しいです。


ももの滞在はほんの3か月でしたが、彼女の存在が老夫婦の心を動かし、そして新たな未来へとつながるきっかけになりました。

ラストシーンで舞い落ちた季節外れの桃の花びらは、"もも" からのささやかな贈り物だったのかもしれませんね。


また、作中に登場した 国府の美しい風景 や 飛騨ももの収穫 などは、実際に飛騨高山で体験することができます!

もしこの物語を読んで「飛騨の桃、食べてみたい!」「桃畑に行ってみたい!」と思っていただけたなら、ぜひ実際に訪れてみてくださいね。


そして、この物語は ラジオドラマとしてもお楽しみいただけます!

番組『Hit’s Me Up!』の公式サイトや各種Podcastで、ぜひ耳でも "飛騨の夏" を感じてみてください♪


それではまた、次のエピソードでお会いしましょう!

ありがとうございました!

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