33 バレたくないです
「で、何でこの店に?」
あの後遥輝は美晴の行きたい店まで足を運んだのだが、その店がまさかの女性用の下着が売っている店であり、遥輝は顔を引き攣らせながら訳を訊いた。
すると美晴はまたしても当然のことを言うかような目で話し始めた。
「遥輝くんの好きな下着を付けたいからだよ?」
「いや何言ってんですか。流石にそれは一線を超えてますよ」
遥輝が当然のことを指摘すると、美晴は少し不満そうに頬を膨らませた。
「ううん、そんな世間の常識に囚われちゃダメ。私たちは私たちのルールでいちゃいちゃしないと」
美晴はどうにも遥輝の前でだけ常識が通用しなくなるのだ。
それだけ自分を曝け出してくれているということだから嬉しいのだが、その反面心臓に悪くて色々苦労している。
というわけで、今回こそは絶対に押し切られないぞ!
「さ、早く行こっ」
「あ、ちょ__!?」
美晴に凄い力で引っ張られ、強引に店内まで引き摺り込まれてしまった。
(ああ…!またいつものパターンかよ…!)
遥輝が心の中で文句を言っている間に美晴は楽しそうに下着を選んで回り始めた。
そして何着か手に取ってこちらに見せつけてくる。
「ねえねえ、こんなのとかどうかな?」
そう言いながら美晴はかなり布面積の少ない、いやもはや見えるでしょってぐらいの下着と思わしき物を見せつけてきた。
「いやそれは流石にダメですよ。こことか絶対透けるじゃないですか」
「え〜そこがいいのに〜」
一体何に使うつもりなんだ…!
まあ、大体の予想はつくのだけれども。
だが遥輝は考えないようにし、今度はこちらから下着を提案した。
「これとかいいんじゃないですか?」
そう言いながら指さしたのは布面積が大きく、色も白でかなり控えめな感じの下着であった。
「ふーん…遥輝くんはこういうのが好みなんだ…」
「いやそういうわけではありませんけど…」
こういうのを付けててもらわないとこちらの身が持たない、なんて言えるはずもなく。
「美晴さんはこういうのが似合うと思いますよ…?」
誤魔化しながら話していると、急に美晴が目の前までやってきてこちらの目を見つめ始めた。
「…嘘ついてるよね」
「っ!?」
どうやら美晴はこちらが嘘をついているのかがわかる特殊能力を持っているらしく、簡単に嘘が見破られてしまった。
いや似合うと思っているのは嘘ではないんだけど!
「…ごめんなさい」
「いいよ別に。自分の性癖を吐き出すのって、怖いよね。」
ん?なんか話が変わっているような…?
「でもね、私は遥輝くんの好きな下着を付けたいの。仮に遥輝くんがどれだけ特殊な趣味を持っていたとしても、私は受け入れる。だからね、君が一番興奮する下着を選んで?♡」
なんか、美晴が暴走し始めてしまった。
流石に止めなければまた大変なことになってしまう。
あとついでに自分の性癖を知られたくない。
(いや特殊な趣味なんてないんだが?)
てなわけで、一旦美晴を落ち着かせる為に両肩に手を置いた。
「お、落ち着いてください。俺は至って普通の性癖の持ち主ですから」
いやまずそこを訂正するんかい。
もっと別の話をしろよ。
ほら、美晴の暴走がさらに加速してしまったではないか。
「ううん、いいんだよ?♡男子高校生ならとんでもない性欲があるのは当たり前だし♡私は遥輝くんの物なんだから、君の好きな下着を付けさせたらいいんだよ?♡」
「ちょっと落ち着きましょうか!?」
店の中でそんなことを言うな!!!
女性用下着の店の中に入っているだけでもかなりの恥ずかしさなのに、さらに冷ややかな目を向けられるようになったらもう耐えられない。
(もうさっさと選んで早く店を出るしかないか…)
だが嘘をついてもバレてしまう。
ならもう自分なりに美晴に付けてほしい下着を選ぼう。
この際少し欲を出すのも致し方ない。
(ごめん…未来の俺…!!)
どうか性癖にブッ刺さる下着を見ても我慢できるように成長していることを祈る。




