23 作戦会議!
時は遡り、お泊まり会から5日前。
学校の昼休み、美晴は仲の良い遥香の席に行き、いつも通り弁当を開いた。
そして最初は何気ない日常の会話をしていくが、そこである話が上がった。
「遥輝とはどこまでしたの?」
会話の流れで遥香の口からとんでもない言葉が炸裂し、美晴は口をパカっと開けて固まってしまう。
「ど、どういうこと?」
「そのままの意味よ。手を繋いだりキスしたりその先のことをしたのかってこと」
遥香は平然とそのようなことを口にする。
もう少し恥じらいというものが無いのだろうか。公衆の面前だし!
「(ちょ、そういうのはもう少し小さい声でお願いっ)」
「(あ、そうだったわね。ごめんなさい)」
とりあえずこれで周りに気を遣わずに話を続けることができる。
だからといって簡単に全てを話せるわけでは無いが。
「(で、どこまでしたのかしら?)」
遥香は容赦なく質問をしてくる。
それに正直に答えるべきか迷うが、恐らく話したほうが都合がいいのだ。
その方が今抱えている悩みを解決させる手掛かりを得やすいから。
(う〜ん…もう言っちゃおっか)
あまり深く考えるのは好きでは無いので美晴は躊躇わずに全てを話した。
「そ、そうなの…」
すると遥香に恐ろしいものを見る目で見られ、思わず口を尖らせた。
「し、仕方ないでしょっ!だって、向こうから求められることがないんだし…」
「ならあなたからすればいいじゃない」
「そ、それはそうなんだけど…そうすると止まらなくなっちゃいそうで…」
「……」
悩みを正直に打ち明けると、遥香から呆れたような目を向けられた。
そして遥香はため息をついた後、机に肘をついて核心を突く言葉を放った。
「でも、このままじゃ何も進まないわよ?」
「っ…その通りです…」
美晴は説教をされている子供のように顔を下に向けて肩をすくめた。
そしてそれから十秒ほど沈黙が訪れた後、美晴はあることを思いついた。
「ね、ねぇ遥香ちゃん。今週の休みって暇?」
「ええ、暇ね」
「遥輝くんは?」
「どうせ暇よ」
「そっか。なら、お泊まりしに行ってもいい…?」
そう、お泊まりであれば少し進展があるだろう。
その考えのもと、ダメ元で遥香にお願いすると案外すぐに首を縦に振ってもらえた。
「やった。これで頑張れるよ!…たぶん…」
美晴が自信なさそうにそういうと、遥香は以前からの疑問を投げかけた。
「ねぇ、前から思っていたのだけれど…もしかして自分に自信がないのかしら?」
「っ!?」
美晴は身体をビクンと跳ねさせた。
そしてそれが肯定であるとわかり、遥香は少し強い口調で美晴を励ました。
「あなた、モデルで結構売れてるわよね?」
「ま、まぁ…」
「なら世間から見てあなたはとても魅力的な女性なのよ。それに、あなたは私から見てとても綺麗な心の持ち主だわ」
遥香は胸を張って美晴への評価を口にする。
「だからあなたは誰がどう見ても素晴らしい人物よ。自信がないなんて全ての人に失礼なぐらいに」
「!?」
なんて真っ直ぐな眼差しだろうか。
凄く力強くて、それでいて優しい目だ。
そして何より、あの人と同じ目だ。
(やっぱり、家族だね)
遥香の言葉に影響され、美晴は心を入れ替えた。
「うん、そうだね。そうだよねっ。私は魅力がある。だからきっと遥輝くんからも求めてもらえるはずっ!」
「そうね」
そして美晴は励ましてくれた遥香に頭を下げる。
「ありがとね遥香ちゃん。おかげで自信が持てたよ」
「私は大したことはしてないわ。ただ事実を述べただけよ」
「うん!これで毎日誘って毎日拒否されても頑張れる気がするよ!」
「そ、そう…」
遥香は(毎日誘ってるの…?)などといった疑問を持つが、それは心の中にしまっておく。
それより今はお泊まり会での作戦会議をせねば。
「とりあえず、お泊まりでの目標は致すまでかしら?」
「ううん!子供ができるまでだよ!」
「っ!?」
(この子、やっぱりどこかぶっ飛んでる…!?)
遥香は今更であることを考えつつ、周りから集まっている視線を避ける為に美晴を生徒会したまで連行したのだった。