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02 姉と有名人


「………」

「っ!?遥輝(はるき)!?」


目を開くと、そこには知らない天井と見慣れた姉の顔があった。


「大丈夫!?私の名前わかる!?」

「ん、ああ…夜桜遥香(よざくらはるか)、だろ?」

「うん、あってるわ…。よかった…」


遥香は大きく息を吐いた後、ドスンと椅子に腰を下ろした。


「全く…私がいない時に限って事故に巻き込まれるなんて」


いつもは遥香と共に登校しているが、今日だけは遥香が学校の用事で先に家を出ていた。


遥香はこう見えて案外優しいところがあるので、今回の件に関しても(自分が隣にいれば…)などと考えているだろう。


だがどう考えても遥香は悪くないので一応謝っておくことにした。


「ごめん」

「いいえ、あれは誰も悪く無いわ。でもまあ強いて言うなら…」


遥香は上を向いて考えた後、全く笑っていない笑顔でこちらを見つめてきた。


「遅刻していたあなたが悪いかしら???」

「ブッ__!?な、何でそれを!?」

「この子から聞いたの」


そう言いながら遥香は隣にいた女の子の肩を叩いた。


その女の子を見てハッと何かを思い出した。


「確かその人は…」

「うん。その…あなたに助けてもらった…」


やはり想像していた通りの人物で、遥輝はそっと胸を撫で下ろした。


「そうですか…怪我してませんか?」

「うん、おかげさまで」

「ならよかった」

「よくないわよ。あなた大怪我してるじゃない」

「あはは…まあか弱い女の子を守れたなら本望かなっ☆」

「何を言っているの…」


遥香がドン引きの目で見てくる横では、女の子が深々と頭を下げていた。


「ごめんなさいっ!!私がぼーっとしてたせいであなたに怪我をさせてしまって…何とお詫びをすれば…」

「え、今何でもするって言い__」

「言ってないわよ変態」

「辛辣っ!?手負いの弟に対する態度じゃねぇだろ!!」

「ぷ、あはははっっ!!!」

「「???」」


突然病室内に笑い声が響き渡るのと同時に、遥輝と遥香の頭上に疑問符が浮かび上がる。


「ど、どうしたの急に…」

「いやっ、2人の会話が面白すぎてっ」

「「そんなに面白い?」」


少なくとも、2人に演技をしているつもりはない。


なので2人は余計に訳がわからなくなるが、その女の子は相変わらず笑い続けている。


その姿をじっと見続けていると、あることを思い出した。


「……あっ!!」

「どうしたのよ」

「あなたもしかして白雪美晴(しらゆきみはる)先輩ですか??」

「あ、うん、正解だけど…知ってるんだね」

「それはまあ、有名人ですからね」


白雪美晴。


高校1年生の時にモデルデビューし、今は世間からも高く評価されている人物だ。


当然学校でも有名人で、男子からの告白が絶えないとか。


そんな有名人と関わりを持てたということを喜ぶのが普通の男子高校生だろうが、遥輝にそんな感情は無かった。


その理由は簡単。


(年上かぁ〜年下ならもう告ってたのにぃ!!)


といったクソしょうもない理由である。


そんなわけで、遥輝は美晴に対して好意は一切ないのだ。


だからもうこれから関わることはないだろうとそんなことを考えていた時だった。


突然美晴が立ち上がり、手を握ってきた。


「その、えと…これでお詫びになるかわからないけど…今日からは、私にお世話させてくれないかな?」


美晴は責任を感じているのか、焦りながらそんな提案を投げかけてくる。


「お世話…ですか?」


「うん。今回の件で遥輝くんは足が自由に動かせなくなったでしょ?だからお世話をする人が必要だよね?その役目を私にやらせてほしいの」


美晴にそう言われてから自分の足を見てみる。


「…これ、どうなってんの?」

「粉々らしいわ」

「粉々て…」


言われてみれば確かに足の感覚がない。


これ、本当に大丈夫なやつ?


足無くなったりしない?


そんな目を足に向けていると、遥香が突然頭を撫でてきた。


「大丈夫よ。安静にしてたらちゃんと歩けるようになるらしいから」

「そっか…ならよかった」


そう言いながら身体を起こし、2人に頭を下げる。


「これからよろしくお願いします」

「ええ」

「うん、任せてっ」


2人の返事を得たところで、遥輝はテレビ台の上にあるスマートフォンを手に取った。


「ゔ…これ壊れてるじゃん…」

「買い換えるしかないわね。お父さんとお母さん呼んでるから、丁度いいわね」

「いつくるの?」

「1時間がぐらいかしら」

「そっかぁ。2人の顔見んの久々だなぁ」


遥輝の発言を聞き、美晴は首を傾げながら疑問を唱える。


「ご両親は遠いところに住んでいるの?」

「そうなの。ここから電車で4時間ぐらいかしら」

「そ、そんなに…ということは、姉弟で2人暮らししているということ?」

「そうね」

「そうなんだ…大変だね‥」


美晴は意味深な表情を浮かべながら立ち上がった。


「ちょっと買い物行ってくるね。2人とも何かいる?」

「あ、私が行くわ」

「いいよ別に。私が恩返ししたいだけだから」

「そ、そう…」

「じゃあ、ホットコーヒーと何か食べ物を。腹が減って死にそうなんです…」

「私はココアで」

「おっけー」


美晴は軽い足取りで病室を後にした。


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