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16 よろしくない


「じゃあ一緒にお風呂入ろっか」


お泊まり会が開催されている中、美晴(みはる)が突如そのように言い放った。


だが遥輝(はるき)は当然そんなことをするわけにはいかないので何とか逃れようと試みる。


「あー姉さんとね」


そう言って思い切りすっとぼけると、美晴は可愛いものを見る目でこちらにやってきた。


「い〜や、もちろん遥輝くんとだよ?♡」

「…」


美晴に頬をツンツンと突かれるが、目は合わせない。


そしてそのままこの話が終わるのを待__


「いいんじゃないかしら?私は気にしないわよ」


(おねぇさぁぁぁぁんっ!?)


突然身内に裏切られ、思わず心の中で叫んでしまう。


「だよね!いいよね!」


そして美晴は遥香(はるか)の言葉に乗って逃げ道を塞ごうとしてくる。


「年頃のカップルが一緒にお風呂…青春だねぇ♡」


美晴は目にハートを浮かべながらチラチラとこちらを見てくる。


いやそんな目をされても無理なものは無理だが?


「…いや無理ですよ?」

「いいよね♡?」

「無理ですって…」

「いいよね♡?」

「…はい…」


クソ、この人完全に男心の操り方を知ってやがる…っ!


彼女にそんな可愛い顔されて断れる男なんていないよ…。


というわけで、二人は共にお風呂に入ることが決定した。


そして数分後、先に遥輝が風呂に入って美晴を待つことになった。


遥輝は湯船に浸かりながら扉の向こうにいる美晴を待つ。


そう、扉の向こうにいる脱衣中の人気モデルをだ。


扉からは布が擦れる音が聞こえてきたりするし、何なら扉からシルエットが見えたりもする。


そんな刺激的な物を目の前にして、年頃の男子高校生はというと…。


(あかん鼻血出そう)


といった風にのぼせて鼻血が出そうになっていた。


のぼせただけですよ?本当に。


(熱いな〜このお湯。流石に鼻血も出そうになるわ。だから俺は悪くない俺は悪くない…)


心臓の鼓動を抑えるために必死でそう考えていると、着替えを終えた美晴がゆっくりと扉を開けた。


「お邪魔しま〜す♡」


一枚タオルを巻き、少し顔を赤らめながらこちらに向かってくる美晴を、遥輝は死ぬ気で見ないようにしていた。


だがやはりこれが本能とでもいうのか、目が勝手に美晴の方を見てしまう。


そしてついにその視線に気づかれ、美晴は手で身体を隠し始めた。


「もう、見過ぎだよ?やっぱりえっちなんだね♡」

「い、いや!そんなことは…」

「いいよ?えっちな遥輝くんで。私はむしろ嬉しいから」

「嬉しい?」


美晴は前屈みになって説明をしてくる。


「うん、私の身体を見てそういう事を考えてくれると凄く嬉しいな♡」

「……」


この人もしかして変態か?


一応世間では割と清楚なモデルだという評判なんだけどな…。


案外人は見かけによらないらしい。


(まあ変態なら仕方ないか…てな訳ねぇだろ!?)


一瞬理解してしまいそうになったが、それでは非常にマズイ流れになりそうである。


なので自分の頬を強く叩き、何とか冷静さを取り戻した。


「いえ、俺は美晴さんと清いお付き合いをしたいと思っているので。そういうのはせめて成人してからで__」

「私はもう成人してるよ?」

「……」


そういえばこの人もう18歳だった。


ヤバい、逃げ道を塞がれた。


…いや自分で塞いでしまった。


「え、えと…とにかくそういう事は大人になってからで__!」

「私も遥輝くんももう大人だから問題ないよね?♡」

「いやまだ高校生ですから…」

「ううん、高校生も立派な大人だから!問題ないよね?」

「……」


どうすればいいんだ…。


このままじゃ非常によろしくない。


美晴が谷間を強調し始めたし!


もう、こちらが折れるしかないのだろうか?


(いやまだ可能性はある筈だ…!)


遥輝は自分の小さい脳をフル稼働させてこの状況の打開策を導き出した。


「少しだけなら、そういう事してもいいですよ?」

「そ、そう…?♡まさか乗ってくるとはね…♡」


美晴は意外そうに頬を赤く染めながらモジモジし始めるが、遥輝は構わず続けた。


「でも俺、心は子供ですから。そういう事って言われても少ししか思い浮かばないんですよ」

「うん、何でも言ってね…?♡」

「では、一つだけお願いが…」


遥輝は勇気を振り絞って思い口を開いた。


「俺の背中を流してください…!!」


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