第33話 だーれだ?
タコマリウス王都
◆ケイ(敬)視点
「ごほっ」
「ラーラさん!!」
「「「「「うわわーん!!」」」」」
下腹を押さえつつ、口から血反吐を吐くラーラさん。
何て事だ。
ラーラさんの腹に穴が空いてしまった。
ジュブッ
((其処に居たか、巫女))
ノーロイの言葉と共にラーラさんの腹から抜かれるグララのヒゲ。
不味い、そのままじゃ前のめりに倒れる!?
オレは自身の骨折も忘れ、巻き布をかなぐり捨てラーラさんを支える為滑り込んだ。
ラーラさん!!
ドサッ
「あぐっ!?」
「かはっ」
当然支えられずに彼女の下敷きになるオレ。
だけどラーラさんの倒れる衝撃は和らげられたはずだ。
「ば、馬鹿。出てくるんじゃない、ミコ」
「ラーラさん!?」
「このくらい、まだ戦える。お前は逃げるんだ!」
「ごめん、やっぱり逃げるのはオレの性に合わない。オレも戦うよ!」
「だから説明しただろう?!お前は世界の命運を握る存在なんだ。ここで魔王軍に捕まっては駄目だ!」
腹を押さえながらも、オレに逃げるように吐き出すラーラさん。
血は止まってないようだが、まだ喋る余裕はあるようだ。
だが、顔はどんどん青ざめていく。
くそっ、どうすれば!?
((ははは。観念して捕まれ、巫女))
「……………」
((助けを待っても無駄だぞ。このエリアには結界を張ってある。外部に音や声は届かないのだ。お前は大人しく魔王様のところまで来るしかないのだ))
結界だと!?
これだけの騒ぎに誰も気づかない訳だ。
ちくしょう!
((それとも、その女とガキ共が死ぬのを見たいのか?))
「?!」
このままではヤツは本当にラーラさんと子供達を殺すだろう。
オレに出来る選択肢は、素直にヤツに捕まるしかないのか。
((さあ、どうする巫女!))
「……………」
「だ、だめ、駄目よミコ。逃げ、て!」
「ラーラさん?!」
だけど駄目だ。
ますます青ざめてるラーラさん。
このまま彼女が捨て置かれたら、その命が持たない。
どうしたら!?
((早く結論を出せ、巫女!それともガキ共の死体が見たいか?))
「「「「「「きやあああ!?」」」」」」
「……………!」
グララのヒゲの先端が子供達の方向に向きを変える。
もう時間がない。
どっちにしろ、ヤツがオレの生け捕りを強硬すれば抗う術もない。
「ミコ、逃げ、て」
「ラーラさん」
ラーラさんを救う唯一の方法、それは
「ごめん、ラーラさん」
「っ!?な、何、を、むぐっ???」
オレは今、無理やりラーラさんの口唇を奪っている。
もしオレが勇者候補に対するドーピング薬なら、同じ勇者候補であるラーラさんに何らかの効果があるかも知れない。
ハッキリ言って賭けだが、彼女を救うにはそれしか思いつかなかった。
「う、ぐっ」
「!」
一瞬、オレの常識外れな行動に非難しようと口を開けたラーラさんだったが、そのまま意識を失い目を閉じてしまった。
でもその後、薄っすらとした光がラーラさんの体を包む。
やはり何らかの効果があったようだ。
予感だが、これで彼女は助けられたと思う。
オレは彼女の身体をゆっくりと、大事に地面に降ろしていった。
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
子供達もオレの一挙一動を黙ったまま見ている。雰囲気でラーラさんの無事を何となく察したようだ。
オレは子供達に微笑み頷いた。
彼女の無事をそれとなく伝える意味だ。
良かった。
血は止まって顔色は改善している。
これならば
((巫女、何をしている!?))
「分かってる、今投降する!」
ノーロイが苛ついたみたいに声を上げた。
オレは覚悟を決め、グララのヒゲの前まで足を進めた。
ヒゲが動きオレの腹に巻き付いていく。
これでこの世ともオサラバだな。
まあ国や世界は救えなかったがラーラさんと子供達は救えたんだ。
勇者でないオレとしてはこれが精一杯。
満足だ。
オレはグララのヒゲに身を委ねた。
目を見開いたまま遠ざかるオレを子供達が見つめている。
オレを心配しているのか、焦りと無力感に苛まれている顔だ。
そんな顔をしないでくれ。
君達の未来はまだ続くんだ。
子供達の中でいつか誰かが勇者になり、次の巫女と共にオレの仇を取ってくれたら嬉しい限りだ。
ラーラさん、皆、今日まで有り難う。
第一王子、最後にサヨナラ出来なかったな。
間違いとはいえ王子は嫌いじゃなかったよ。別な意味でだが。
間違いとはいえ、口唇を奪った事も謝りたかったな。
だからと言って身体で責任取ってくれ、と言われたら全力で逃げだすだけだったがな。
アディオス、タコマリウス王国。
そしてオレは目を閉じた。
「何、悲劇のヒロインを気取ってるの?!ミコ、目を覚ましなさい!」
「は?」
ザザンッ
突然の事だった。
オレを拘束するグララのヒゲが切り落とされ、一瞬でオレは誰かの腕の中にいた。
何がどうしてこうなった??
逆光で顔が良く見えないが、さっきの声はラーラさんの声だったよな?
なら、オレを今お姫様抱っこして逆光で見えない人物はラーラさん??
やっぱりオレのドーピングチートでラーラさんが復活したんだ?!
「ラーラさん?ラーラさんなの!?」
「……………………」
「馬鹿ね、当たり前じゃない」
あれ?
オレの問いに逆光の人物は無言だ。
そして、ラーラさんの声は視界の外から聞こえてくる???
「ラーラさん、助けてくれて有り難う」
「アンタが自分を犠牲に私や子供達を助けたって聞いて、本当に心配したんだから!」
「へっ!?」
えーと?
逆光の人物の横にラーラさんの顔がある??
なら、逆光の人物はラーラさんではあり得ないよな。
……………………。
ではナゾナゾです。
逆光人物は一体、だーれだ?




