愛情大作戦
ギバドロス一家のアジトの1つにゼフォウ達が居た。
やはりゼフォウの頭脳が良く、全て出来るようになるのも時間の問題だ。
しかしセェロがゼフォウに対して心配事がある。
「マウゼス」
「なんでしょうボス?」
「アイツだけじゃなく、全員が多分愛情不足だし、飴と鞭だけでなく訓練が終わった後のケアでしっかり愛情と言うものを与えなきゃいけねぇ」
正直な話、別段あっても無くても大丈夫な世界だが、全員が全員忠誠を持って仕事している連中程上に行くのがどの世界でも真理だ。
そこには必ず大なり小なり愛情があって初めて忠誠と言うものが生まれる。
だからこそ、まずは擬似的な、いや形だけでも、愛情を感じてもらえば少しは忠誠や忠義を持てるようになればと思っていた。
勿論、マウゼスも賛成だが、1番の問題はやはりゼフォウだ。
「まぁ良いですが、特にゼフォウなんか大人の心情汲み取るのが上手過ぎてこちらの心理まで読み取る癖もあって正直どう組み込んでいけば……」
あんな場所にいれば、どうすれば大丈夫かどうすれば食えるかとばかり考えて育ってしまい、運良く仲間が居たから良かったものの、やはり若干大人、特に男性に対して敵意の目があまりに良くない。
いや、非常に危ない、下手に裏社会にもある会合やパーティー等、そういうのに行って、敵意として見られると危険視されてしまう。
敵意は悪くない、ただ誰彼構わず無作為に出すあの敵意だけはなんとかしたかった。
が、その対策もあまり考えていなかった為、マウゼスを困らせる。
「まぁ家族愛的な?」
『大雑把だなぁ』
「と言うわけで、今日から皆で面倒を見る家庭的な」
ゼフォウの教育係であるマウゼス筆頭、臨時会議が始まる。
スオウ1発目から飛ばす。
「私添い寝したい」
セガがすぐに止めに入る。
「お前は絶対ダメ、裸になるから」
テーブルには様々な教育本、0歳児から5歳児も複数紛れた本が大量に置かれ、スオウもそれを覗くも絶対大人ぶって兄貴面なゼフォウには合わないと言って逃げ出しそうなのが見て取れた。
「と言ってもこれ、ゼフォウのためにって育児本買い漁って実践するにしても、これ嫌がるでしょ?」
セガからすれば、ゼフォウの頭脳の良さにセェロが、高認だってほぼ無理矢理お願いして取らせたかと思えば、今度は可能な大学調べて大金ぶち込んでなんとか特別入試として受けさせ、入学させる荒技をかましたのが意外過ぎて今でも驚いて疑ってすらいる。
「そうですね、高認受かって大学入試もこちらの都合で無理矢理ぶち込んでもらって受かったようなものですよね?」
「普通、裏口かと思われてもおかしくないでしょ?」
「流石に警察より面倒なCIAとかに目を付けられるの面倒だからって、特別入試に切り替えて貰ったんでしょ? やっぱりアメリカなんて金あってなんぼよ」
「話はおしまいだ、アイツの教育係でもある俺とお前達でなんとしてでもあの野郎に愛情というもんを植え付ける! 当番も作って行く、良いな!」
「お、おう⁉︎」
『あっ……もう当番の殆どマウゼスがやりそうな予感しかしない』
で、こうなった。
風呂、普段はゼフォウも1人になれる場所の一つだ。
そこで奇想天外が起きる。
「いやいやいやいやいやいや! なんで、1人で入れるし! なんで、なんでマウゼスのおっさん、ウェットスーツ着てんだよ!」
「お前の体を洗うんだよ! 親子だったら普通だろうが!」
全てはゼフォウの為で、怖がらせない為の対策です。
もうヤケクソだ。
寝る時も、添い寝はセガでしかも何故か絵本も持っている。
「よし! 添い寝だ! お前が寝なければ、俺は仕事が出来ないぜ!」
「なら、その絵本を持つな、読まねぇよ! 仕事しろ仕事!」
こうして愛情大作戦が開始され、余計拗れたのは言うまでもない。




