怪しい慈善団体
パーティーは継続して行われている中、ディダ達はその慈善団体ベネヴォレンティアと言う3人の男達を応接間に案内して話だけを聞くだけ聞く事にした。
一応マルスが園長もあり、代表として話を伺うも、どんな活動内容かしか話さない。
「で、どこからその話が?」
「かなり単刀直入なご意見ですね、我々団体はあなた方と一緒で親無しや何らかの事情で子供を手放したり預かっている施設だけでなく、片親、貧困層の家族の支援をしており、高校卒業だけでなく大学、専門学校に就活にも率先して手助けをしております」
パンフレットまで用意され内容もかなりしっかりしている。
『結構まともそうなんだけど、遠くから坂本さんとジルがダメだってオーラを出してるし、どうしよう』
廊下から見ている2人が何らかの事情を知った上で、頭を振ったり眉間に皺を寄せて必死に駄目だと口にしなくてもアピールしているのだ。
きっと裏のある団体なのがよく分かる。
本題を再度振るが堂々巡りに慈善団体の活動内容の話が続く。
「すいません、あの先程」
「それに加え、海外では様々な支援もしており――」
まだ一体何処から漏れたかが一切聞かされていない。
大体の人なら最初に問う内容を忘れそうになるだろうが、そんな内容実際聞いても無いので、再度問い質す。
「ですから、何処から聞いたのでしょうか?」
だが、1人の小太りの男が先程まで話していた男と代わる。
「それよりももっと大事なのはあるでしょう?」
「例えば?」
「今逼迫している人数を少し減らすべきなんじゃないんですか? 定員オーバーは既に起きているでしょう、だから来たんですよ」
まるでそっちがメインの様で言葉は遠回しに保護した子供達を寄越せと言っていた。
勿論、この話を並行のままに絶対折れてはいけないのだ。
「ですので、その小耳に入れたのは誰ですか?」
小太りの男がそっと仲間に耳打ちしながら何処かの外国語で何かを話しているが、ディダには丸聞こえだ。
「“おい、早く済ませろ、もっとアピールして話を逸らさせろ”」
「“言われなくとも”」
これはいくら言ってもどこから聞いたのか絶対に言わないと踏んで、ディダは男達が話していた言葉で強い口調問う。
「“どこの小耳に入れてきた人物が知りたいのであって、お前らよそ者に子供らを預けるとでも思ったのか?”」
さりげなくディダはマルスに席を外させ、自分が座った。
流石に自分らだけで分からないだろう言葉で話していたのに、話せるのかと言いたげな顔に少々呆れてしまった。
男達の3人のずっと無口の1人が何か懐に手を伸ばそうとするが、先ほどの偉そうな態度だった男が止める。
「よせ、すいませんねぇ、まさかこの外国語が分かるなんて」
「分かりますよ、僕、こう見えて殆どの外国語覚えてるんで」
小太りの男はディダに何言ってもそれしか言わないし、例え答えてもそれ以上の話は出来ないと諭し、自分らはどういう人間かを逆に諭させる事にした。
「正直に言いますと、こういうのは簡単に耳に入るのですよ」
ディダはサングラスを外し、改めて自身が思っていた事を言葉にしてやった。
「分かるよ、どっかの馬鹿が裏に情報流して、あんたらがいち早く来た。結論から申して二度と顔を出すな、子供達には手を出させない」
ディダの目を見た3人はギョッとし冷や汗を流す。
殺気が明らかに漂い、自分達に向けられている。
話は決裂であると物語り、深いため息を吐いた後、小太りの男が捨て台詞を吐いて部屋から出て行く。
「……それが答えか、また、会いに行きますよ。まぁあなた方が嫌でも手放すしかなくなるやもしれませんからかね」
マルスは行こうとするが、先程話していた男がまっすぐ帰りますのでと言い、部屋を出て行った。
玄関外まで出た後、ディダがサングラスを掛け直し早々の弱音を言い、皆にボロクソ言われてしまう。
「……どうしよ? これ本当に起きたら困っちゃう」
「何も考えてなかったんか!」
「考えあっての言い負かしたんじゃないんかよ!」
「ディダ、どうして後先考えずに言った!」
坂本、ジル、帰る際に並べく護衛増やすかと話になり、一応連絡も入れシュケジュールを組み出しつつ、何処経由で漏れたかを捜査依頼もしたが、しばらくディダにはサンドバッグのままでいてもらう事にした。
そうして3人の男は翼園から出て行く直前、絆が問う。
「あなた方は一体どうやって招かれましたか?」
「招こうが招かれようが、こう見えて行き帰りは自由なんですよ」
小太りの男は絆に言って自分達が乗って来た車に乗り込もうとした時だ。
「万が一こちらに迷惑を掛けるようなら、そちらが痛い目に遭うと言う事はお忘れないようお願いしますよ、ガジェール・ヴォルバさん」
友吉が小太りの男、ガジェールに言った。
ガジェールが舌打ちして早々に立ち去る。
知ってか知らずか、ずっと部屋から理美を含めた子供達が例の3人組の男を見ていたが、それに対して晴菜が見ないよう促す。
「こらこら、あぁ言う人を見ちゃいけませんよ、パーティーの続きしましょ?」
冬美也も覗いて居たが、晴菜の言う通り、あまり良い印象が湧かない男達だと思い、パーティーの続きをしようと促すも理美だけまるで違うものを見ていたのだ。
「はーい、理美行こう……理美?」
「なんで、あのおじさん達、自分達で棺桶に足入れてるんだろ?」
「理美?」
「なんでもないよ」
理美はこれ以上言うと皆に嫌われるのを諭し、何も見ていない普段へと戻って行った。
その後は皆忘れて遊びに夢中となり、総一達もやって来て盛り上がって行く中、ゼフォウだけはどこの輪にも入らず、大人しく蹲ったまま動かない。
ディダはゼフォウに近付き隣に座った。
「ゼフォウ君、大丈夫かい?」
「俺らを売り飛ばすの?」
「なんで?」
「定員オーバーで、坂本って言う人が俺らを預ける施設に入れるって言ってたのに俺の我儘で居させて来れたじゃん、邪魔な――」
「君らを保護したのは僕自身の一存、あの後めちゃくちゃ怒られたよ、アリスにマルスから」
「ならどうして?」
「だって、これ以上大人に振り回されたく無いでしょ? 君だって知り合いと居たいのに金だの定員だの大人の都合でまた振り回されて、ハズレを引かされたらもっと僕しては嫌だ」
「あんたもあの客と一緒、変な奴だ」
「僕は色々経験しているからね、君みたいな子も沢山見て来たし、救えたか……いや無理だった事が多かった」
「無理って」
「救いたい一心で救って来たけど、どうしても救え無かった……だから今がある、今度はとにかく人居るし君らを守ってあげれる様頑張るよ」
多分、この時のディダはもっと昔、ずっと前から救いたい何かを救えず燻ったままここにいるのだ。
そしてゼフォウの答えは――。
「てぃ!」
「えっ? なんで、今⁉︎ なんで⁉︎」
やっぱりサングラス取って逃げ出した。
皆がまだ騒ぐ中、1人の荷物整理をする琴の姿があり、坂本が声を掛けた。
「やっぱり、行くの琴?」
クビになり、そのついでではあった冬美也の能力を制御する為にいたが、もう居なくても彼はコントロールが可能となり、そもそも滞在も理美が退院するまでとの約束だ。
それでも、琴もガジェールの正体を知って居るのか、このまま放置はしない。
「大丈夫ですよ、ガジェールの件はこちらで受け持ちますから」
ただ、坂本は違った。
「いやいや、そうじゃなくて、理美の件よ」
何故か理美だったが、琴もその案件を自分にかと疑う。
「あ……あぁやっぱりこっちに振ります?」
「振る、他が管理者の育成するにしても手が空かないと無理だし、養子縁組の話聞いたらすぐそこの嘉村家でしょ? ボディーガードの経歴持ちなら即採用出来るし」
実際、それで話が通れば育成位できるが、今それどころでは無くなっていたのだ。
「そうなんですよ、本来なら入りたいの山々なんですが……もう煩い位元雇い主から連絡があってコレ見てください、絶対あのオッサン以外でも情報漏れてますよコレ」
loinやらメールに電話まで来ており、内容も脅迫を受けたから帰ってこいとまぁなんとも大人気ない上に上から物を言うメールには坂本も頭を抱える。
「もう無視すれば?」
坂本との言う通り無視すべきなのだが、あまりほったらかしても後々迷惑なので1度本気で絞める為だけに戻るだけだ。
「無視したら、裁判だの契約違反だの煩いんで、1回絞めに戻ってやるんです」
「成る程、でもなぁ……こっちもジルも日程決まったんだよ」
もうしばらく居ておいた方がお互い良いのだろうが、やはり限界もある上、決まってしまった以上動くしかない。
しかも動くとなると強い順で消えていけば、弱い者を襲うなんて容易になる。
坂本も裏の動きが活発になるのを恐れているが、琴としては腕が鳴るとばかり怒りの矛先をそっちにも向け落ち着いた表情で殺意むき出しだ。
「やっぱり裏の連中も我々が滞在し続けられると迷惑なんですね、面白い」
「面白くないわよ! 何人かはアメリカ経由で返す事で各国は合意、日本経由だってバレたら煩いのと、アメリカには子供を取り返す組織あるからそっちの手柄にする事で場を納めるのが狙いね」
その組織の手柄にはなるだろうが、正直ありがたい。
こっちはそんな手柄なんて欲しくもないのだから。
場が納められればそれで良いのだ。
ただ1つの問題がある。
「ですが、ゼフォウ君、どうします? 彼かなり苦労人ですよ?」
「ディダでストレス発散してる分には良いけど」
「良いんだ」
そうゼフォウの存在だ。
どうにかこちらで引き取り、面倒を見た方が良いと思うも、アイムみたいに二つ返事で来てくれる事はなかった。
「アイム君こっちで引き取り決まった」
「あの子能力凄い便利ですよね、認識しなきゃだけど」
フィリアの様に捜索願が出ている子なら別段良いのだが、現状能力いや異能がある以上、坂本的には自分達の組織に入れたいと考えていたが、どうも上手くいっていないようだ。
特にゼフォウは頑なに拒否し、それにつられてアイム以外殆どいい返事がない。
「ゼフォウ君も何度か誘ったんだけど折れないし、ザム君も誘ったんだけど、あまり良い返事くれなかったし、まあ他施設で預かってる子達は居場所ないから自然と入るって選択してくれたけどもさぁ、なんで皆も一緒だよって言ってるんだけど折れてくれないのよ、意味わからん……!」
多分きっと、坂本が信用度自体足りていないのだ。
琴はあまりそれに関して刺激しないように、それでいて理美も冬美也もある程度翼園から去るのだからゼフォウはこのままでもいいのではと考える。
「理美様も冬美也様も離れるし、定員ギリかスレなら良いんじゃないですか?」
ディダだってそこまで弱い生き物ではないし、アダムもまだ理美が正式に迎えられるとはまだ断定していないのでもう少し滞在してくれる。
坂本もディダ達は強いと分かっているが、ゼフォウを守るとなるとやはりこちら側に迎え入れたいのが本音だ。
「なんだけど、ゼフォウ君、ガジェールに何かされたっぽくってかなり怯えてたらしいわよ、神父経由で」
「……ダメじゃないですか、それ」
「でしょ! ならやっぱりこっちで……」
ガジェールは明らかに黒なのは知っている坂本として彼の説得を成功させたい。
その時だ。
「おや、お帰りになるのですか?」
絆がやって来た。
「いえ、一旦元雇い主を絞めに行くだけですけども?」
「もしよろしければ、こちらで働きませんか、お給金は――でどうでしょう? ちなみに有給、厚生年金などもしっかりしてますよ」
「働かせて下さい!」
一体どんな給料案件で即答したのだろうか。
『ずるい!』
それでも絞め上げなければ気が収まらない。
「ですが、やはり1度あの野郎を絞めなければ」
「分かりました、ですが場所を教えてください、今秘書を向かわせます。とても優秀なのできっと今までの無礼を詫びることでしょう」
この時、琴と坂本は思った。
『一体どんな秘書? 人外か?』
絆にも信用を得られるほどの腕前はもはや人間ではないだろう。
夜ちょっとした事件が勃発とは言っても、些細なものだ。
「えぇぇぇ! やだ! 冬美也と一緒にいつも寝てたのに!」
そう理美がいない間にゼフォウに場所を取られていた。
一緒に寝たいだけなのに、邪魔をされて困っている。
本来なら大人も介入して解決するのが普通だが、今回は自分達だけ、喧嘩になったら大変だ。
「いいや、俺らだけで良いよな冬美也」
答えはゼフォウの思い通りにはならなかった。
「いや、ぼくは理美と寝るから良いよ」
冬美也は別段困らない。
むしろ、久しぶりに一緒に寝れるのだから歓迎している方だ。
「なんで!?」
結局一緒に理美と冬美也は寝る事になる。
真夜中に差し掛かる時間、ゼフォウは中々寝付けないでいた。
理美はと言えば、何故か冬美也のベッドと一緒で、ゼフォウがシキリ挟んだ隣のベッド、1人だけでいる。
いつも、悪夢を見る冬美也は必ず一定の時間で良く魘されては目を覚ます、ここに来てからも琴が殆ど面倒をみていたが、今日は何1つ魘されずにずっと寝たままだ。
琴が離れたせいでまた暴走するのではと思っていたが、その様子が見えない。
どうして理美と寝たいとか言ったのか、きっと悪夢に魘されないのが自然と分かっていたのだろう。
でも、ずっとこれから一緒になんて居られないだろうに、このままいい筈が――。
夢の中、ゼフォウがある場所に居る。
よりにもよって、この場所は1番知っていて居たくもない薄暗くベッド1つだけのとにかく冷たく湿気が体にまとわりつく。
ここに放り込まれると暫く客が満足しなければ出してもくれない。
出してくれても冷たい水で浴びたら、次の客、休まる事もなく、気持ち悪い感触だけがべっとりと体に染み付き、未だに取れないでいる。
愛でると言うなの屈服させる支配欲を満たす場所。
それがこの宿だ。
どうして思い出してしまったのだろうか。
あの時だ、あの時あの客がやって来たせいで、忘れていたのに思い出してしまったんだ。
騙した男の陽気な声が聞こえる。
ただなんて言っているのか分からない。
客だ、上客が来た時は必ずこれだ。
入って来る足音が聞こえてくる。
嫌だ、怖い、触らないで、首を絞めないで、近寄らないで――。
足音が扉の前に止まる。
重たい扉が開けば、始まる苦痛の時間。
「よう、今日も無事だったか、ゼフォウ――」
ゼフォウが腹から込み上げてくる気持ち悪さで目を覚ます。
まだ深夜の1時過ぎだ。
『……ぅっ、気持ち悪い、アレを見てしまったから』
トイレに行こうとこっそり部屋から抜け出す前に冬美也を見れば、本当に起きない口からヨダレを出す程に能天気に寝ている。
『羨ましい……』
そう思いながら、部屋を出た。
ゼフォウは月明かりが無い新月なせいで手探りでトイレに向かうが、ドンドン喉につっかえる何かを感じる。
このままでは不味い。
丁度その時に、巡回中のマルスがゼフォウを見つけ、話しかけてしまった。
「ゼフォウ君どうしたの?」
「ゔっ‼︎」
タイミング悪く一気に戻してしまった。
「うわぁぁぁ! ごめん! まさか吐きそうだったなんて!」
マルスは大慌てで、ゼフォウの看病へと入る。
『あれ? なんでマルスが?』
本当にタイミングが悪く吐いてしまっただけだった。
マルスはゼフォウにシャワーを浴びさせ、その間に戻してしまった場所を片付け、周りが目を覚まさせては行けないと自室へと連れて行った。
とりあえずゼフォウの服は戻した跡がべっとり付いていた為、もうダメだろうとビニールに入れてから捨て、マルスの衣服を代わりに着せる。
「本当にごめんね、お腹大丈夫? アリスに診てもらう?」
下手すれば感染なんて事も有り得るのだ。
ただゼフォウは具合悪くした理由も知っているので答えた。
「良い、ちょっと悪い夢みたせいで吐き気が出ただけだから」
もう部屋へ戻ろうとした時、マルスがフィリアから聞いた話を本人直々に言う。
「フィリアちゃんに聞いたんだけど、前はもっと色々としっかりしてたし、勉強も必死に覚えようと努力してたんだよね?」
「……あいつ、喋るなよ」
「でも、ここの人達は優しく接したり、自由だったり、急に緊張の糸が解れてよく分からないから子供っぽいって言ってたよ」
今の今まで苦労して来て、漸くゆとりを手に入れた為に周りも困惑しているような言い方に渋い顔になってしまった。
「ん゙ー!」
「そう緊張しなくて良いよ、他にも聞いてはいるけど、君から言うまでは真相なんて分からないし」
実際どのような苦労をしたのかなんて、誰にも分からない。
そんなに知りたいのならちゃんとお互い分からなければフェアーじゃないのだ。
「ならさぁ、マルスが先に話してよ自分の事、そしたら話すからさ」
どうせ大した話では無いと高を括っての事だろう。
マルスもゼフォウと同じ渋い顔になる。
やはり大した事がない、だから戻ろうとした。
しかしマルスは思いの外修羅場を経験していたのだ。
「俺の母親や村の人達が皆殺しあって、使えるからって生かされて、運よく逃げ出したけど腹減ってとりあえず物持っていそうな人って事でディダ神父襲ったら返り討ち遭いまして、その後はディダ神父が助けてくれて今に至るんだけど」
1番の印象がやはりディダだった。
「あの人、人じゃないのに世話好きだよね」
「そうだね、本当に世話好きだよ。身寄りの無い俺を面倒見てくれたし、その分あの人なりの苦労も知ってからずっとだね」
納得はしたが、ディダは人外である。
まさかだと思うが、マルスも人外だろうと勘ぐりだす。
「でもなんか隠してない?」
「隠してない隠してない」
慌てる仕草や目の動き、全てを見ていて気づく。
「そうかなぁ? 1番大事な部分だけ言葉にしていなかった」
本当ではあるが、やはり隠したいモノが存在する。
「あはは、気のせいだよ」
これはもう言う気が無いなと分かり、腹立つものの言った手前、話すしかない。
「む゙……いいさ、良いよ約束だし話してやるよ」
マルスのぎこちなさはかなり怪しいがゼフォウは諦めて話し出す。
「あ、りがとう」
「俺、本当にどこの出身かも分からないし、子供心がつく頃には何かテロって言うか内戦に巻き込まれた国に居て、ある程度収まったばかりの貧困化が酷く慈善団体や国の支援がなければやってけない場所だったんだ――」
この頃には誰が悪人か分からず、子供達を安全な場所に移動させる慈善団体がいた。
動けない親や親戚も頼れない大人達が、子供達だけでもと、安全な場所へ移動させたいと願って渡す人達も多い中で、慈善団体の男が身寄りの無い俺の様な子供達に飯を運んで遊んで、話しかけて、その内信用したのを見計らって移動を提案された。
「ここより安全な場所、施設に行こう」
皆、信じて疑わなかった。
でも間違いで、大嘘だ。
気が付けば古びた家に押し込まれ、皆、顔やら体やら念入りに見られ、客に売れなさそうなのは臓器売買で生かして貰えても奴隷。
俺は嫌がって暴れた、暴れた子供達は臓器売買だ。
だけれども、1度奴隷になった末路を見せられた。
「中と外どっちが良い?」
さっぱり分からず、怖くなって外って言ったら、何されたかあまり思い出せない。
思い出すのは酷い状態になった、撫で回され下が壊された気がする。
その後に、皆何処かへと売り飛ばされ、俺も売られた。
「――この後にあの客と会ったりしたけど、結局病気見つかったからビビった連中がどっかの研究施設が人体実験用の子供達を探してたから売られて、今に至ると」
一通り話終えるゼフォウは鼻で笑うが体が小刻みに震えていた。
マルスとしては一刻も早く誰かに相談したい。
「……この話誰かに相談しても?」
ところがゼフォウは不可能と分からせる。
「話してもそれなりのお偉いさんもご贔屓にしてる宿だから無理じゃね?」
かなり理不尽かもしれない。
それでもゼフォウにはちゃんと今後普通な生活を送らせ、ゆっくり自分のやりたい事をやらせてあげたいと思った。
「ん、うん、俺の一存なんだけどさ君は頑張って生きている、だからせめてこれから自分の人生を謳歌させたい」
せめて、兵器や道具ではなく1人の人間として人生を歩んで欲しい。
部屋の近くでたまたま聞いてしまったディダとアダムは今後の事を考えながら、その場を後にした。




