退院
話は戻り、このカオス状態を打破すべく取った。
「もう仕事しましょう! 奥様もちょっと優紀君の面倒誰に頼んでるんですか!」
実は総一、丁度理美の回診で来ていたが、追い出され。
「ちょ! 今回診で!」
衣鶴は優紀を一時だけ看護師が見てくれると預けて、慌てて来たが余計カオスになるからと追い出され。
「優紀は今預かって――!」
「なら今すぐ戻って!」
結局、神崎夫妻をなんとか追い出し、ディダと冬美也と理美だけとなった。
廊下越しにも聞こえる看護師長からのお叱りの声、夫妻には悪いが一応理美は患者だ。
そしてディダはまずやらなくてはならない事がある。
「まずは、メリュウ君……出して!」
「どうやって?」
「とりあえず、どこに閉まってる?」
怒りオーラを纏まったディダに促されたまま、理美は棚から菱形の宝石を取り出した。
出現直後にゲンコツ数発入れられ、頭を抱え込むメリュウがそこには居た。
「うぉぉぉ……!」
それを見にアースまで出てきてしまう。
「あらら、大きなタンコブが段々と」
冬美也はメリュウを睨みつけたまま眺めた。
「へっ……!」
そんな状態を無視してディダがせっせと菱形の宝石に何かを付けていた。
「凄い、ひん曲げれる?」
金属を上手く固定するにしても全て道具無しの素手だ。
「普通の人は素手で絶対真似しちゃダメな奴、僕は人外なので平気」
そうして出来上がったのは、しっかり金属が固定された菱形の宝石のネックレスだ。
ディダはそのネックレスを理美に掛けてあげる。
「凄い、ディダありがとう!」
改めて、ディダが怒った表情でメリュウを見た。
「どういたしまして、でどうしてこうなったのかな? メリュウ君」
最初はギョッと驚くもメリュウはすぐに答える。
「えっ? コイツが鈍感だから」
反省もしていなければ、何で怒られているのか分かっていない、これでは意味が無いと感じた。
仕方がないので、追々メリュウの教育も含めた方が良さそうだけだ。
冬美也にも一応注意をすると意外と大人しく従うが、やっぱり見えてない方で睨み合いをしていた。
「だからって、手を出さないの、冬美也君も挑発に乗らない」
「は、はい」
2人を放って、ディダは理美にも課題がいるのを伝える。
「理美ちゃんは、まずはこの子のコントロールからだね、勝手に飛び出して来ちゃうから、大事なイベント時に勝手に飛び出されてめちゃくちゃされたら嫌でしょ?」
いつもの状況なら分からないだろうが、流石に現状を知っていれば話は違う。
「うん、それは今ので理解出来た」
ずっとその話を聞いていたアースが思った。
『でも、ここまで自由自在に出て来れるって事はコントロール以前の問題な気が……』
アースがそんな事を考えているなんてつい知らず、理美はずっと気になっていた白い子犬を抱き上げる。
「で、この子は?」
「マコでちゅ、よろちゅうお願いいたちます」
「冬美也君も見ただろうけど、この子の対は翼園にいるコマの方ね」
「父さんの使役って言ってたよね?」
「うん、そうこの子達はある神様の神使だったのが、何かの因果で使役する事になったらしいけど……」
その時にあの騒動だ。
こちらの不手際もあったが、結果として理美の傷もまともな医療を受け、近い内には退院になった。
ただ、あれ以降アダム達からあまり良い話を聞かない。
話的にはウィルス系である事、飛沫感染とかでは無いので今後感染する事は無いが、何らかの原因で感染するのは並べく避ける為に今度保護された子供達は監視される様になると言っていた。
折角自由になれたのに、こうなるとあまり気が気じゃない。
表立って話すにも今後子供達に危害が及ぶ可能性も視野に入れば、きっと監視されるだけまだ優しいのだろう。
ディダはそう思いながらも、あまり刺激しない様に気を付けていかねばと考えていると理美が声を出す。
「ねぇディダ」
「どうしたの?」
あの時、喧嘩した際に手を鋭利な刃物にしていたのを見て、このままなのか心配になっていた。
「冬美也体また変化したけど、大丈夫なの? お家帰れる? ゼフォウもなんか爆発みたいな事してたし……」
それに関しては大分慣れてきている分、冬美也も勿論、監視はされるが皆帰れる。
ただ1番心配なのは理美だ。
「大丈夫だよ、それより理美ちゃんは大丈夫かい? ほら撃たれて――」
その時の記憶は撃たれた直後から本当に曖昧なのだが、これだけは覚えている。
「うーん、なんか入って来た感じはあったんだけどね」
「入って来た?」
ただ入って来た後、何かが突き刺し消えていくのだけは理解出来たのも思い出し、意識がはっきりしてからアースにも聞いたのをディダに教えた。
「そう、でもなんか、覚えてないけど消えて行くのは分かったんだよね、アレからそういうの無いし、アースに聞いても綺麗さっぱり居ないって」
居ない、きっとウィルスの事だろう。
アダムからは聞いてはいるが、それも許容範囲なのかとつくづくアースと言うものは不思議だ。
ふと、冬美也は理美を助ける為にディダが使っていた刀を思い出し、案を出すがすぐに否定された。
「……でも、ぼくらはきっとコレから先もずっとこれと付き合わないと行けない、そうだ、ディダ神父が使ってたの――」
「あーダメダメ、アレに使ったら一気にガタ来たから、近々手入れに持って行きます、それに使って綺麗さっぱり消えたとして、体に影響が無いとも限らないし、嫌だろうけど、付き合ってあげて、君にしかない能力として」
ディダとしては全員持ちたくない力を消してあげればどれだけ良いのかも分かる。
だが、それ以上にあのウィルスは危険だ。
周辺含め理美に入ったウィルスの浄化をした結果、一気に変色し、ボロボロとなった。
これで全て浄化してしまえば、何が起きるかも分からない以上、そのまま共存させるしかない。
冬美也もこれ以上困らせてはいけないと分かって、大人しく従った。
「……はい」
ディダは冬美也に謝罪し、頭を撫でながら立ち上がる。
「ごめんね、それじゃ僕は帰るけど、冬美也君は?」
「ぼくは家族と居ます、でも翼園に戻ります」
「うん、分かった、理美ちゃんまた来るからね」
「はーい、またねディダ」
帰ろうとしたが、ディダはメリュウと冬美也に念を押して帰って行きました。
「メリュウ君、勝手にまた喧嘩仕掛けないでね、冬美也君も!」
結局2人きりなったが、すぐに総一が入れ替わりに入って言う。
「回診の時間大分すぎちゃったけど、一応やっておこうね」
「了解です」
総一に言われるまですっかり忘れていた。
――翼園では、午前中なので夏休みの宿題時間で皆それぞれやっている。
でも、それは学校に通っている子供達だけだ。
たまたまそこを通ったゼフォウが何をしているのか、マルスに距離を置きつつも話を振る。
「ねぇ、あいつら何してんの?」
「んっ? そこから? 宿題だよ、勉強の復習の為に習ってきたものを出題した問題集を説いているんだ」
最初、変な距離だなと思って見ていたが、マルスからすれば、なんだか懐かしささえ感じてしまう。
「ふーん、俺、皆に勉強教わってたけど、そういうのあるんだ」
「教わってって大人には?」
マルスとしてはただの質問だ。
今の今まで、ゼフォウが文字の読み書きや計算はほとんど子供達の間で行われてきたのだろう。
最初どの位の学力か調べた際イヤイヤながらもしてくれたのだが、実際はチグハグだったり、そもそも日本語は話せても日本語自体書けない。
ただ、教えれば1回で覚えてしまう程の記憶力が凄く、あっという間に簡単な漢字を使った文章が書けれる程になった。
英語もさせるとそっちは難なく使いこなせており、冬美也以外に聞けば、最初から覚えていた様だ。
こんな凄い子なのにどうしてと思っていたが、ゼフォウ自身が流れで教えてくれた。
「慈善団体って銘打った、クズが体の中身か外かを売るかの2択しか無かったから知らない。ゼフォウって名前くれた客がよく言葉や書き方教えてくれて、だけどもそれが他の客から癇に障ったんだろ、ある時来なくなった。それから病気になってあそこに売り飛ばされるまで会う事なかったよ」
言葉だけで分かる、相当嫌な思いをしてここに今居るのだ。
だから、男性にはあんなに拒絶反応を示していたのか。
今回、信用出来るから話したのか分からないが1歩進んだように思えた。
「ゼフォウ君、今まで気を張って頑張って来たから自分を持てていたけど、落ち着いてから急に心がどうすれば良いか分からなくなるもんね。俺もそうだった、神父のお陰で俺の今があるから」
「ディダって人間ないのに、良く人間と仲良くするなってたまに思う」
「あはは、俺も思うよ」
マルスとディダの付き合いが長いのは見ていて分かる。
ディダに対して容赦なくグイグイ行く。
それでもお互いを思って信用している姿もあった。
ゼフォウからすれば羨ましいとも感じたが、今まで優しく接してきた客は結局自身の欲に負け、襲ってきたのがほとんどだ。
だけれど、あの客だけは一切欲も無く人間として子供として接してくれた。
「前に名前くれた客が居るって言った事あるけど」
「言ってたね」
「もし会えるなら、会ってみたい客が1人いるけど、名前教えてもらえなかったんだよねぇ」
「でもそういう所って普通の人間が行く場所ではないよね?」
「……まあそうだよね、ただ聞いてみたいんだ、どうして欲もかかずに色々教えてくれたのかを」
気まぐれだったにせよ、会えるなら聞いてみたい。
マルスは今なら坂本達の力で探し出せるのではと考える。
「ゼフォウ君が望むなら、一応探してあげるよ、今なら力貸してくれると思うし」
「いいよ! 別に、下手に嫌いな客どもが押し押せて来たらやだし」
名前を教えないのは万が一他の客にその名を出され、機嫌を損ねれば、下手すれば命が無い場合もある。
そう考えれば客同士のトラブルをあちら側で避けさせたのか、或いはその客が敢えて教えない事でゼフォウを守ってたのかもしれない。
どちらにせよ、結局訴えを起こし保護したり、言葉悪く言えば買い取りなどをせずゼフォウを解放しなかった。
他の客も多額な金を払っていたかは分からないが、せめて自由を与えてくれなかったのだろうか。
マルス的にはその客に対してあまり良い印象がわかなかった。
他の子供に声を掛けられ、マルスは我に返る。
「ねぇ園長先生、ここ分かんない」
「……! はいはい、ちょっと待ってねぇ、ゼフォウ君も……ってもう居ないし!」
気が付けばもうゼフォウは居なかった。
少ししてディダが戻るとゼフォウが出迎えてくれていた。
「ただいまってゼフォウ君珍しいね」
つい屈んでゼフォウの目線に合わせてあげた時だ。
「おかえりの、いただき!」
「はっ? あっ! サングラス返して‼︎」
普通にサングラスを持ち逃げされました。
アダムがたまたま通りかかって、持ち逃げしたのだと分かった瞬間、思い切り雷を落とす。
「こらぁぁぁぁ!! 勝手に人の物を盗むんじゃない!!」
あまりの怒号にはゼフォウも固まった。
別の部屋にいた人間にも伝わるほど凄い響き渡る声には、皆も手を止めてしまうほどだ。
「ほら、返して」
「……はい、ごめんなさい」
反省、というよりは渋々謝ってと言った感じにサングラスは返された。
結局すぐにゼフォウはどこかへと行ってしまう。
アダムはゼフォウの様子からして、愛情不足によるものだとすぐに気づき、ディダにどうするのか聞くもあまりいい得策もなかった。
「あの様子だと、暫くずっといたずらするぞ? いいのかディダ?」
「とりあえず、様子見かな? あの子のいたずら程度ならまだ大丈夫だし、叱られている理由だって分かってやっているから、他の子達と一緒だよ」
「大人を信用したいが、度合いが分からない分、しっかりしろディダ、理美とは違う守られる側に対しての虐待を受け続けた子供だ」
「分かってます、今までそういう子見てきたので」
「もう少し得策あるなら良いがどうせ時任せだろう」
「他の子に攻撃しないだけ良い子だよ」
経験上、愛情不足の子の中には他の子にも攻撃したり、悪い大人と同じように無理やり従わせて攻撃させたりと言ったずる賢い子もいた。
しかし幸い、彼はそこまでの事をしない。
多分、他の子達と一緒だと分かっているからだ。
いい得策は無くても、真摯に向き合うだけ向き合っていけばその内止めてくれるだろう。
ただそれは後数週間なのか下手すれば数年まで永続していたずらは止めない可能性もあった。
『まっ、他の人にいたずらしたらガッツリ叱っておこう』
ディダはそう思いながら、アダムと一緒に仕事へと戻る。
そうして理美が退院する日がやって来た――。
ディダは車酔いするので、結局翼園で待機です。
迎えに行ったのは、マルスだったのだが、運転手を買って出たのは絆だ。
翼園に車が到着、理美は久しぶりの翼園に胸を躍らせ、車から降りればディダ達が待っていた。
「ただいまー!」
「おかえり、理美ちゃんって言っても僕はほぼ毎日見舞い行ってたから」
「いやー久々に車乗りましたが、なんで神父車弱いんですか?」
「馬車は平気だったろう?」
「馬車平気だったのなら、車は大丈夫なんじゃ?」
「やめて! まずは理美ちゃんの退院祝いしよ!」
「パーティーだぁ!」
この間、晴菜が言っていたので理美はずっと楽しみにしていた。
絆はそれに関して話をする。
「勿論、あのドタバタで保護された子達にもと言う事で皆で小さいながらのパーティーですよ」
あまりド派手になってしまうと特別扱いにもなって他の子達に良い印象が無くなってしまう。
でも折角退院もした上に、あのドタバタで保護された子供達も漸く落ち着いたのも見て、小さいながらも歓迎も含めたパーティーとなった。
「ディダも一緒に来れば良かったのに」
「明日、色々書類もあるので含めて出しにくのではい」
実際、ディダの言う書類等は全て入院費です。
本来は退院当日なのだが、運悪くお金等の持ち合わせが無かった。
ただ、マルスは知っている、自分が全てやると言って聞かずにやったばかりにその工面がうまく行かなかっただけと。
『俺がやるって言ったのにこう言う時に言うこと聞かないんだから』
「それより、まだ傷口も癒えていないので、外にいるのも何なので中に入りましょう」
絆に促され玄関口に入ると冬美也達が待っていた。
「おかえり理美、退院出来て良かった」
「ただいま冬美也、ごめんねもう元気だから!」
理美が元気のアピールするも、ジルと坂本に突っ込まれ笑うしかない。
「元気じゃ無いだろ、傷まだ治って無いだろ」
「そうそう、1番の功労者でもある訳だし」
「いやぁ」
遠目から琴が覗くとその姿を見て思う。
『どこかの5歳児みたいなった』
しかし遠目から見ていても理美には気配だけで分かるのか、すぐに駆け寄って挨拶をした。
「あれ、琴さんこんにちは」
「こんにちは、もう大丈夫ですか?」
「治り早いって言ってたし、来週また傷口の確認で見せに行くの」
まだ抜糸も取れていないのかと思っていたが、そういえば最近の医学も抜糸しなくても良い系があり、そのまま溶けて同化すると聞いた事がある。
きっとまだ同化していないのもあり、その経過観察も含めているのだろう。
「そっか、皆様もう準備出来ていますので、行きましょうか」
「うん!」
琴に促されて、食堂に行けば皆がもう準備を済ませ席に着いていた。
皆が一斉に立ち上がり、理美に言い寄る。
ほとんどが心配と状況について好奇心だ。
さすがに理美もこうなると固まってしまう。
すかさずアリスが場を入って元に戻す。
皆、もっと話がしたいだの、質問したいだのばかり文句が飛ぶもアリスの指示通り席に戻っていった。
「ほらほら! 退院したばっかりの子にその言い寄りは禁止! 皆食べたいでしょう! ならまず席に座る!」
「ありがとう、アリス」
「良いわよ、こいつら絶対退院すると質問攻めするんだから、ほら理美も座って」
そうして冬美也もやってきて一緒に座ったところで皆パーティーの開始となった。
晴菜も麗奈も颯太もいる、皆が小さいながらもパーティーを楽しむ。
そういえば友吉がいないことに気付き理美が晴菜に聞けば、仕事が入ったがリモートでも出来るのでそれを片付けてから来るとのことだ。
保護された子供達はとりあえず、閉園となった施設からの一時預かりで話は通しているので、嘉村家や総一にはなんとか怪しまれずいや、それどころではなかったのでなんかうやむやになっただけだ。
ずっと理美と冬美也が話をしていると、フィリアが理美に近寄る。
「こんにちは初めまして、私フィリア・ブライアンです、短い間ですがよろしくね理美ちゃん」
急に自己紹介を受けた理美は一瞬緊張が高まり何を言えばいいのか分からず立ち尽くす。
だがすぐに、透明で姿を隠したメリュウが理美を促し、なんとか自己紹介が出来、そのまま遊ぶことになった。
「……はう! こちらこそ、初めまして嘉村理美です、よろしく」
「ねぇあっちにもおいしいのあるし、遊べるから一緒に行きましょう?」
「ぼくは大丈夫だから行っておいで」
「うん、ありがとう」
冬美也の後押しのお陰で理美はフィリアと一緒に向こうへと遊びに行く中、冬美也も誰かを探す。
ゼフォウも楽しむが、どうしても落ち着かないし、あまり目立ちたくもなく端に立っていた。
「居た、ゼフォウどうしたんだ?」
「ちょっと……落ち着かない、こういうの初めてだから、いやもっと……」
あまりいい思い出とは違うもっと何かをゼフォウは感じているが、どう言葉で表現したものか。
そんな時、颯太がやって来た。
「何やってるんだ? もう食べ終わったのか」
颯太も2人合わせて屈むと、丁度いい角度にメガネが取れそうだ。
反射的にゼフォウが颯太のメガネを取ると、誤って落ちてヒビが入ってしまう。
「あっ……!」
「ゼフォウ! やばいよ! この人元ヤンだから締め上げられるよ!」
「元ヤンって何!?」
完璧に怒らせてはいけない、あの雰囲気ではヤンキー出てきそうだ。
しかし意外と解説はしてくれた。
「元ヤンとは元はヤンキーだった不良だ。後、この場ではすぐに謝罪しないとどんな寛容な人でもキレてしまうので、ゼフォウ君」
「ごめんなさい!」
ゼフォウが謝罪すると、颯太は懐から新たなメガネを取り出し掛ける。
「スペックはまだまだあるが、以後面白半分で取らないように!」
近くにいた晴菜がやって来て早々颯太の方に言う。
「あなたもいい加減強化ガラスタイプを買いなさい」
「一度恐怖というものを味わっておかないとまた同じことをするのが人間だ! ということで、ガラスは飛び散ってないけどこの辺危ないから離れてな」
そう言いながら、落とされた本人なのにすぐに綺麗にし始めた。
流石にゼフォウもやり過ぎたと反省する。
「本当にごめんなさい」
「うんうん」
それに関しては反省しているので攻めもせず、気を付けてくれればいいと思った。
遠くから見ているだけのディダだったが、ガムテープ等を持ってきて屈む。
「ほら、これ使って、ヒビだけだから欠けてはないけど」
「ありがとう」
これなら大丈夫と踏んだディダだったが、甘かった。
「取った!」
ものの見事にゼフォウにサングラスを取られ逃げられた。
「どうして!?」
颯太的に分かったことはただ1つだ。
『なめられてるなぁ、完璧に』
事務室でアダムとジルと坂本が作業中、インターホンが鳴る。
「なんだ? こんな時間に?」
「衣鶴さんとかじゃね?」
「何言ってるの? 衣鶴さん、今日は総一さんが仕事終わってから一緒に来るって言ってたんだから、こんな中途半端な時間で診療所が午前中で終わるわけないでしょ?」
時間はまだ11時だ。
パーティーも12時過ぎれば落ち着くので、それに合わせるとあっちも言っていたのでそれは絶対に違う。
とりあえず、アダムと坂本が出てみることにした。
「どなたですかな?」
見知らぬ男性3人の1人が仰々しく挨拶をし、名刺を渡してきた。
「すいません、わたくし、慈善団体ベネヴォレンティアと言います。孤児などの子供達を保護する団体でよろしくお願いします。実は小耳に挟んだのですが、どこかの施設が閉園、そう言った子供達をこちら翼園で一時預かりをしているようですが、実状定員オーバーしていると聞き、もし宜しければ我々にその子供達を引き取らせてもらいないでしょうか?」
ジルと坂本は目配せする。
誰が、表に漏らしたのか、いや万が一そうであってもこれは絶対にあってはいけないものだ。
無論、この話はここでしかなく、子供を保護したのだって国同士で漏らしてはいけない機密情報であり、そういった施設も全て国が管理する場所であり、慈善団体に話すら通してもない。
たまたまサングラスを取り返すべくディダがゼフォウを追って、ようやく見つけると酷く怯えた状態で縮こまっていた。
この瞬間、こいつらが何者かもう分かってしまう。
入ってはいけない連中だと――。




