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その後の後始末

 結局男衆だけで後始末をすることになったジルと助っ人で来た日向に坂本からの依頼で動いていたしばき隊の人達で色々と元に戻しつつも死体処理もした。

 本当に運が良かったのかと言えば良い方だろう。

 逃げれるだけ逃げた子供だけは生き延び、全員保護出来ただけ本当に運が良かった。

 逆を言えば、上からの命令とは言え、結果何も成果もなく呆気なく殺されてしまった防護服の連中に迷彩服の男達、例え要らぬ力を手にしてしまった子供からすれば、無能な大人でも脅威だっただろう。

 そして結論に至ったのは虚しくもあった。

「――えー、結果としてコイツらは結局トカゲの尻尾なだけで何も知らない連中でしたー!」

 ジルは一通り、自身の死体から愛されし者の力を使い、死体から事情聴取をし、結果知っている部分も含め、殆どの内容はあまり有益とは成らない物ばかりだ。

 日向もその辺は理解していた。

「だろうな、でも共通はあっただろう?」

 そう、子供達はどんな方法で要らぬ力を手に入れてしまったのかだけは防護服の連中も迷彩服の男達も知っていたが、あまり生きた心地もない内容だった。

「んっあぁ、全員ウィルス研究に雇われている兵士達、どんな研究だったかまでは分からないけど、製造したウィルス適合し生存した連中は大人はほぼゼロで殆ど子供が多い理由もあって、機械操作可能な連中も多く働いていたって事だし、パトロンとかどんな組織かは結局そこまで教えてもらってなかったようだ」

 内容からして、既に子供達は全員感染者、取り除く方法は現時点で皆無に等しい上、日向は同時にある懸念が出て、あまり言いたくは無いが口に出てしまう。

「正直、あの子達は外部感染とか引き起こさないのか心配なんだが……」

「その辺は全員分野が違うだろう? 日本にそっち系に詳しい奴いるか? 海外勢の管理者の1人くらいなら居そうだけども、アダムと仲違いされてたら詰む」

 ジルからしたらもう日常生活の1つとして、すぐに専門分野の管理者に当たるのが普通のようだ。

 しかし、日向の心配はもちろんの事で、このままでは本当に子供達を外いや無関係な人間達に合わせて良いものかと悩むのも無理からぬこと。

「アダムと仲違いって、宗教上だけにしてくれ……と言うか、そういえば新しい管理者が庇って大怪我したって琴や坂本からloinで見たが、大丈夫なのかしかも病院で手術まで――」

 あまりの心配過ぎでジルが話を割ってディダの刀でなんとかしたのだから、もう話はその辺にして次に移りたかった。

「お前、心配性過ぎ、なら病院の近く行って理美のアースに聞いて来いよ。どうなったかを、それにケガはともかく周辺も大体ディダがなんとかしてから連れて行ったって、琴のloinで書かれたろ?」

「そ、そうなんだが」

「とりあえずは、残りの機材等で調べられる物は調べて、後は解体したり壊したり回収したり、回収場所も坂本経由で良いだろ」

 その後は、あの連中が置いていった機材等も調べながらの解体が始まるも、結果重要そうな情報は何も無く、表的には要らぬ粗大ゴミを不法投棄した様なものと考えれば、実に腹立たしい。

 無論、ゴミは回収しなくてはいけないので、とても大変だ。

 子供達が脱出し、特定した後、数日でここまでやるのかと呆れる――。


 一方、嘉村家では、絆の説明で晴菜が慌て戸惑ってしまう。

「――と言う経緯があり暫く理美様は入院となります、熱もあるので一般病棟に移るまでは代表者であるディダ達の大人のみとなりますので、ご了承を」

 冷静な絆と違い、ずっと気にかけつつも距離を縮めようと頑張って来た晴菜からすれば、相当な事件だ。

「理美ちゃんが⁉︎ そんな……どうしたら!」

 もう既に顔が青ざめ、倒れそうな晴菜を颯太が支えながら、翼園に行ってみたが、皆忙しそうに騒がしく、相手も出来ないのでと申し訳なくアリスに言われ、邪魔してはいけないと早々に帰って良かったと判断して口にした。

「母さん落ち着いて、今日は色々翼園が騒々しかったから、今回は早めに戻って来たのは正解だよ」

「何言っているの颯太? もし居たら……」

 晴菜からすれば、ちゃんと一緒に探してあげてれば、大怪我しなくて済んだのではと凄い後悔しているが、颯太からすれば理美は庇って大怪我をしたのだから、どちらにせよ誰も悪くないと言いたかった。

「密猟者居たのは意外だったけど、最近動物達が騒がしかったのはそいつらのせいで、運悪く冬美也君が出会ったせいで撃って来て理美ちゃんが庇って大怪我で良いんだよね?」

 その問いにきちんと絆が答える。

「はい、ですが、喧嘩したのが原因だったそうですので、あまり冬美也様を責めないように、自分のせいで怪我をさせてしまい、相当責めている様なので」

 冬美也自身責めている為、下手に大人である自分らが責めてしまえば、冬美也はきっとこれ以上立ち直れないだろう。

 それも踏まえての言葉だ。

 しかし、晴菜としては自分が余計な事を言わなければ、冬美也と喧嘩せずに済んだのではと言葉が出てきたが、絆はそれに対してちゃんと理美は全て汲んだ上での出来事であると伝えた。

「最近ちょっとおかしくなってたから、まさか喧嘩までしたのは私が理美ちゃんを迎え入れたいって言ったせいな――」

「大丈夫ですよ、晴菜様。理美様はそのお気持ちを汲んでおりましたし、ディダに聞いたら養子縁組の件を思って相談していたそうです。今回はその、理美様なりにきちんと冬美也様に誤解を解く為に場を設けましたが、返って怒らせて喧嘩に、その後にあの様な事件に」

 本当の話をしてしまえば、冬美也を連れ去った連中が、何らかの方法で銃弾に込めた何かの影響で自然すら破壊する脅威的な物を再度冬美也に狙って撃ったとのを理美が突き飛ばして助けたのが大怪我の原因だ。

 だが、この本当の話は全てを巻き込む恐ろしい話、表に出してはいけない。

 その為に密猟者が撃った弾が冬美也に当たりそうなのを理美が助けた話にする事で丸く収まっている状況だ。

 勿論、生かした連中を密猟者として突き出す約束も付けている。

 それでも晴菜は未だに自分を責めていた。

「……だけれども、あの子にあんな酷い怪我させたのも喧嘩した原因も自分にあるわ」

 麗奈は一通りの話を聞き、理美自身が解決しようとして起きてしまった事だと諭す。

「お母さん、それ多分違うし、悪いのは密猟者よ。喧嘩して仲直りしようとしたのを邪魔したのはそいつら、そもそも理美ちゃんが誤解させた理由があったって事でしょ?」

「そうそう、きっとちゃんと言いたかったのと母さん達と冬美也君の気持ちの蟠りを取りたかっただけなんだよ」

 理美なりに助けを求め、皆の為に頑張ったのに上手くいかなかっただけと颯太も思っての事だったが、麗奈がもしやそれが原因で振ったのではと過ってしまった。

「もしや! 振られて喧嘩になった……⁉︎」

 全員まさかのと言う顔になり、青くなっていくのが絆でも分かり、すぐに訂正した。

「いえ、大丈夫です。そっちではないって言ってましたので」

 話を聞いた瞬間、一気に空気が戻り一安心だ。

「良かったぁぁぁぁ」

「マジそっちだったら、冬美也のSAN値が0になるよ」

 冬美也をちょくちょく揶揄う2人だが、流石にこうなると心配で焦ってしまった。

 今の状況で行っては返って迷惑と考え、友吉は明日からは翼園に行く事を止めることにした。

「仕方がない、明日は翼園も忙しいだろう。暫くは赴くのは止めよう」

 それに関しては全員同意し、晴菜はとりあえず明日、入院中の理美に見舞いは可能かを診療所及び翼園に連絡を入れる事を伝えると、颯太と麗奈も納得し、友吉がこの場を閉め、皆それぞれの部屋へと戻って行く。

「そうね、でも入院中の理美ちゃんに会えそうか、明日連絡してみるわ。会えるなら1人で行ってくるけど良いかしら?」

「良いよ、大勢で行っちゃまずいだろうし」

「早く元気になれば良いんだけど、冬美也君もあの影響で落ち込んでるだろうし、下手に遊びに行っちゃっ不味いしね」

「今日は絆も疲れただろう休みなさい。さあ、私達も休もう」

 絆は深々と頭を下げ、皆が部屋を戻って行くのを見送り、部屋の電気を消す。

 それが昨日の出来事であり、今日の早朝、絆だけ翼園にやって来て、先の話を含め、現段階に保護されたばかりの子供達に問いただす。

「――と言う事になりましたが、どうも祠を何者か壊したのがどうも誰か分からないのですよね。最後の一個だけ、もう子供達の誰かなんですが?」

 全員良い子に正座しているのを見て、ディダが止めに入る。

「ごめんねぇ、絆さんなんの脈絡もなくいきなりそこの話になるのなんで?」

「すいません、単刀直入に言います。結界用祠を壊した一個は誰だ? アレのせいでアイツら入って来たんだが?」

「僕が壊したら殺しに来るでしょすぐに?」

「だから、今回は大人でも誤って壊したなら多めに見ます。勿論子供でも、誰が壊したかを調べに来ました。その上で、壊した一個を直して貰います」

 全員無言でゼフォウに指差した。

 皆の圧に負けたゼフォウが白状した。

「……俺です」

「どうして壊した?」

 殺意剥き出しの絆に対してどんな言い訳をする気かと、他の子供達が恐る恐る覗きに来ている中、ゼフォウが話す。

「さ、最初、何の石か分からなかったし、何度も何度も同じ道と石があって、戻っても戻って来て……あったまきて爆破してたら壊れました。ごめんなさい」

 回りがこの子爆弾持ってるのとマルスや坂本に聞くも、そういう表現であって本当では無いと伝える。

「分かりました。では、ゼフォウと他の子も直して貰います。こちらへ来て下さい」

 皆項垂れるが、やってしまったのも止めるのも出来なかった分、仕方がないと渋々諦めていた。

「本当にすまん」

 ゼフォウも祠と言うものが如何に怒られる物なのかと全然知らなかった分無理もなければ、ゼフォウ以外でも怒って暴れていた可能性があった為、誰も責めはしなかった。

 寧ろ、冬美也はどうやって入って来たのかと不思議でならない。

「良いよ、いつかは誰かが壊してたし」

「でも冬美也はよく無事入れたよね?」

 フィリアの問いに絆が答えてくれた。

「冬美也様は理美様が連れて来ましたからね、その辺は連れて行って欲しいと願ったり、連れて来たいと内側が思えば入れる構造でしたし、理美様が連れて来たい、会いたいと願ったので外の動物達も入って来ましたしね」

 そうなると、攻撃的な又は危険と判断された存在は通ることはまず無理だ。

 たまたま運良く冬美也は理美が見つけ連れて来て貰ったから入れ、そして運悪く冬美也が記憶を失っていた為、来て欲しいと願ってもらえなかったから入れなかったとも言える。

 回りが行こうとしているのを見て、冬美也もついて行こうとしたが、琴に止められてしまった。

「ぼくも……!」

「いけません、冬美也様はここで自身の力のコントロールのお勉強です」

「でも、ぼく」

 元はと言えば、自分を探す為に壊してしまった様な物であるもの、皆と一緒に冬美也は直したかった。

 しかし、ゼフォウは琴に賛同した。

「良いよ、俺らで、お前は琴さんの言う通り力を使えるようになれよ」

「う、うん」

 結局、冬美也は残り、ゼフォウ達は絆と共に壊した祠を直しに行く事になりました。

 だが、あの場所はかなり遠いのではとディダが思った時だ。

「そうだ、場所遠いのでこの子達を送り迎えお願いしますね」

「だーと思ったぁ」

 結局ディダがゼフォウ達の送り迎えとなった。


 理美はと言えば、昨日より熱は大分落ち着くもまだ下がった訳ではなく、高いままだ。

 危険な状態は去り、後は自力でなんとか治してもらうしかない。

 総一が診察の時間で様子を見ると、まだ熱でぐったりしているが、大分呼吸もしっかりしている。

 解熱剤はせず、まだ水分を飲む気力は無いと判断し、点滴の継続させた。

 診察も終わり、総一が冬美也の状態も気にして連絡を入れようかと考えていた時だ。

「総一さん、丁度良かった! 今看護師さんにお話聞こうと思ってたところで」

 なんと晴菜がいた。

 どうしてここにと言いたいところだったが、入院したのを絆に聞いたのかとすぐに理解して、場所を変える事にした。

「晴菜さん? どう……あっ! ここじゃなんですし、ちょっと場所を変えましょう」


 簡易的な休憩場があり、そこで一通りの話をする。

 怪我の容体等と今の経過だ。

 それを淡々に話し、晴菜はその話を聞く。

「――と言う感じで、後は理美ちゃん自身の力で治してもらう形です。でも本当はプライバシー保護として考えると話しちゃいけないんですけどね。まだ、ほら養子縁組結んでもなければ、ただの他人になってしまいます」

 そう、本来なら話す事すら厳禁だ。

 しかし、なんだかんだで付き合いもあり、素性をお互い分かっての事なので、今回は大目に見ていた。

 ただ、密猟者が出るのは本当に大事で、普段出ないような村に出て来るのはとても不思議だ。

「いえ、寧ろ感謝します。本当なら追い出されてお終いでしょうから、まさか黒麟村に密猟者が出てるなんて……」

「うーん、一応この近辺には珍しい動物も居ますし、天然記念物のカモシカもこの辺歩いてたりしますしね」

 晴菜としてはもっと意外だったのは、絆が今回の件を見逃さない筈と断言している程、意外でこうも起きない筈の事件だった。

「絆ちゃんが密猟者を見逃す筈がないとは思うんだけど……」

 総一もそれに関しては分かっており、そこはきっと息子、冬美也が飛び出しそこで運悪く出会ったせいと考えての事だ。

「ウチの息子を庇って怪我したと聞いてます。多分、今片付けてたり?」

「かもしれません。絆ちゃん、なんか翼園に用事があると出かけましたから」

 丁度、看護師が総一を探してたのだろう、封筒を持ってやって来た。

「いた! やっと見つけましたよ! 総一の机に置いても良かったんですが、これ、DNA診断書です」

「ありがとう、念の為の診断書だったけど、かなり緊張するな」

 貰った封筒を恐る恐る開けながら、診断書の結果を覗く。

 晴菜も緊張する。

 渡しに来た看護師も一緒になって結果を待つ。

 総一は震えながら涙を流す。

「……良かった。やっぱり息子だ……本当に良かった……!」

 しっかりと親子関係が立証され、改めて泣き出してしまう。

 ずっと息子として信じて過ごしていたが、実際違っていたらどうしようかと本当に不安だった総一はこれで漸く不安の呪縛から解かれ、はれて本当の息子として一緒にいられる。

 その話を聞いた晴菜と看護師も一緒になって大喜びだ。

「良かったですね! 神崎先生!」

「総一さん、奥様にも連絡を」

 晴菜に促され、総一はすぐに連絡を入れる為、スマホを取り出す。

「そうだ、連絡しないと、これで心置きなく一緒に帰れる……いやまだ記憶が戻ってないからまだか」

 まだ総一は冬美也が記憶を取り戻したのは知らない。

 それでも、これから心置きなくその一点だけ見つめればなんてことはないのだ。

 後はゆっくり元に戻ればいいのだから。

 総一はそのまま衣鶴に電話をする。

 アメリカな為、時差があり約14時間だ。

 日本は今昼前、アメリカなら夜、まだ寝てはいないだろうが、寝ていてもおかしくない。

 ただ夫、総一の連絡に気付くだろう。

 コールが3回辺りで繋がった。

 総一は嬉しいさを衣鶴に伝える。

「衣鶴さん、ごめん寝てた? 実は――そう、うん、冬美也のDNAが一致して――うん、ただ、まだ記憶が――えっ? えぇ⁉︎ いつ? うん、うん? 分かった……じゃ日程教えてね、おやすみ」

 最初、嬉しそうに総一が話していたが、途中驚き混じりになり、あれよあれよと纏ってただただ呆然となった。

 晴菜はどうしたのかと尋ねる。

「総一さん? 大丈夫?」

 わなわなと震えながら総一は答えた。

「……衣鶴さんがこの目で冬美也か確認したいから近いうちにここに来るそうです」

 良い事なのだが、辺な声が出た。

「え゙っ?」

 総一も、本来ならアメリカで待っていてくれる筈だったのが、相当心配になってたようだ。

「衣鶴さん、元々忙しくて世界各地回ってたり、研究で研究室に閉じこもってたりで彼女も休みないような人で、まぁ優紀が産まれて暫くは家にいたんですが……」

「あぁ……前に話してた」

 晴菜ひ理美のぬいぐるみを直していた時に話していたのを思い出す。

 息子と一致もしてホッとした束の間だった為、総一は申し訳なさそうに話した。

「見つかったのは話して、DNAも親子一致したから安心とは行かず、流石にこの目で見たいと今回無理矢理休み取って日本にこちらにと、宿が無いけど、ぼくの住んでいる単身赴任用の部屋に一緒に泊まると」

「なら、先生の所で冬美也君も一緒に家族みんなで居れば記憶戻るかもしれませんね?」

「そうかなぁ……」

 どう言う訳か、総一はあまり賛同しなかった。

 理由は今の冬美也はどう考えているかの問題だ。

 それを取り除かなければ、まず不可能に等しい。

 今日も顔を出すつもりではいたので、それについても話しておこう、そう思った。


 ゼフォウ達と言えば、漸く石の祠を建て直し、ひと段落ついた所だ。

「つーかーれーたー!」

 ディダは監視役兼送り迎えの1人としてずっと見守っていた。

 手を出しても良かったが、手を出せば絆に怒られてしまうので、壊してしまったゼフォウを主体に子供達皆で頑張って作り上げのだ。

「はい、お疲れ様。これで全部?」

 流石に他も壊していたら、もう何回も作らなければ行けない。

 今回は絆もゼフォウが壊したのはここだけなので、終わったのを確認後、あるものを取り出した。

「いえ、他も壊されてましたが、彼らが壊したのはあくまでここだけです。さて、帰る前にこちらをどうぞ」

「何この箱?」

 ゼフォウや他の子供達も見た事の無い物体に、集まって来た。

 本当に何も知らない無垢とも呼べる程、子供達に微笑みながら絆がこの箱について話す。

「クーラーボックスです、熱中症対策で水筒飲み干してしまいましたでしょう? これは出来た祝いという事です」

 クーラーボックスを開けると、中から大きな保冷剤や沢山の氷のパックで冷やされた瓶のラムネだ。

「何これ?」

 流石にフィリアもよく知らない物が出て来て、皆まじまじとラムネを見る。

「どうやって開けるの?」

 絆が一本だけ手に持ち、蓋の開け方を教えてあげた。

「これはこう思い切り押してガラス玉が下に降りたら飲めますが、あまり傾けたりするとガラス玉が蓋しますので、ゆっくりお飲みください。それとこれは炭酸水、シュワシュワするので気を付けてください」

 蓋の部分を一気に押し付け、ブシュと音が鳴る。

 よく見ればガラス玉が下へと落ちていた。

 皆、それぞれラムネを開け始める。

 1人はなかなか開けられず、1人は降ってしまったのだろう開けた後ブワッと溢れてしまう。

 上手く行ったゼフォウが口に含んだ時、凄い言いようのない甘味と口に広がるパチパチした感覚に驚いて口から離す。

「な、何だこれ⁉︎」

「炭酸水だからねぇ」

「シュワシュワするって言いましたよ?」

 回りも最初驚くもその口に広がる感覚と喉越しがクセになり、いつの間にか飲み干してしまい、どうやってガラス玉を取ろうかと話している。

「ほら、これ、こうやって、はい取れた」

「おぉ! 凄い」

「自分のも取って!」

 今の時代の瓶のラムネは取れる細工がされている為、ディダがそこを捻って取ってあげた。

 凄い凄いと子供達が喜んでいる間に、絆が自身が身につけている腕時計を見て、もうこんな時間だと呟き、帰る事にした。

「さて、帰りましょう。流石に午後も過ぎてますし」

「そうだね、ほら、もう帰るから一度祠に拝んで」

 ディダに拝むよう促され、子供達は元気良く返事をするもどう言う風にすれば良いのか分からない子達ばかりだ。

「はーい」

「と言うかどうやって拝むの?」

 絆がさりげなくどのようにするか、手本を見せながら促すと、すぐに皆やり始め、拝み終わった後きっちり二度とやらかさないように絞めた。

「もう二度と壊さないように」

「う、うすっ……!」

 物凄い怖いオーラに絶対にやらないとゼフォウは誓うのであった。


 そうして、ディダ達が翼園に戻ると、ジルが肩を動かしながら疲れた表情で戻って来ていたのだ。

 何というか数日会ってないだけで久々な感じに見える。

「おかえり、遅かったねぇ」

「疲れた、後飯食いそびれた……」

 ジルは本当なら食べてから戻りたかったようだが、既に片付けした直後にしばき隊が帰ってしまい、昼食もそこで食べる気でいた為、まさかの無しにとりあえず探し回ったが何処もなく、結局戻って来た感じだ。

 それを乾いた笑いで誤魔化しながら、立派な診療所があっても、飲食店が無い、宿も無い村な為ディダも正直同情もした。

 ふと、日向も一緒に片付けていると聞いていたが、結局1人なのかと気付く。

「あぁ、この辺食堂無いもんね。てか、日向さん達は?」

「あいつはしばき隊と一緒に帰ったよ。もう殆ど片付けたし、一応明日もっと広範囲で見回って数日見つけられなかったら完璧終了」

 勝手に作って置いた連中にやらせたい所だが、殆どは始末した上、生きていても辛い尋問が待っており、片付けていた方が1番楽だっただろう。

 しかし漸く平穏に戻れると思えばとても気持ちが楽だ。

「そっか、良かった」

「よかねぇ! ちょっと来いディダだけ!」

 が、ジルからすれば、ウィルスの件を全く知らないディダに一回話しておかないと気が済まなかった。

「はいはい、それじゃ君らはマルスとアリス、後は坂本さんや眞子さんもいるから大丈夫でしょ? 行っておいで」

 ゼフォウがこの空気からしてロクな話では無いと分かって、こっそり盗み聞きしてやろうとしたが、ディダの方が色々あってかなり敏感になっていたのでフィリアにゼフォウを任す。

「……」

「ダメだよ、ゼフォウ君は、フィリアちゃん連れて行って」

 任されたフィリアはゼフォウを引っ張って玄関へと向かった。

「はーい、行くよ」

「う、うぅ……」

 その様子を伺いながら、ちゃんと玄関に入るのを確認した後、ディダは改めて聞く。

「で、どうしたの?」

 ジルとしては日向に賛同したわけではない。

 ただもしもの事があれば、村を閉鎖してウィルス拡散を防がなくてはいけないのだ。

「ガキ全員、なんかのウィルス感染している。理美もだろ? 診療所大丈夫なのか? 一応お前ならちゃんとそう言ったのはやっただろうけど、ガキ全員やるべきじゃね?」

 話を聞いて納得したディダは何を今更感で普通に言った。

「成る程、大丈夫だと思うよ? もし飛沫、空気感染なら全員感染してるし」

 間が空く。

 我に返ったジルは驚き、確かにとなった。

「――おぉ! そりゃそうだわな!」

 結局の所、冬美也を保護した時点で既に理美もだが全員感染している。

 だが、誰もそんな能力が出た訳でもいきなり病気になった子供も大人も誰1人いない。

 ましてや診療所で急激な病気が流行ってパンデミックすら起きていないのだ。

「何の話をしているんだ?」

「あれ? アダム神父もなんか久しぶりな気がする」

 アダムも片付けよりもっと重要な部分に対しての仕事をして来て、目処がついたので帰ってきた。

 本来なら今日の早朝だろうが話を早々に纏めたいが為、昨日の理美が無事に手術を終えた辺りですぐに出たのだ。

「昨日ぶりだろう、理美が無事手術終えた後に警察の知り合いに頼んで生きている連中は密猟者として逮捕、ニュース沙汰にはせずに闇に葬る形になった。無論、普通の刑務所の方が何倍もマシだと思い知らせてやると言っていた。それと斎藤にここの事を話して保護した子供らの経緯も含め、きちんと理解して隠密とは言え海外と連携して子供らをちゃんと返す手配が整う筈だ」

 ディダとしては嬉しい限りだが、保護された子供達の中で捜索願いが出ていない子もいるの知って、尚且つゼフォウに至っては大人嫌いがもっとも酷いのでここで見る事にした。

「そっか、でも坂本さんから聞いたけど、何割か捜索願い出てないって、他はともかくかなり大人嫌いなゼフォウ君は一度僕の方で面倒見るよ」

「その子だけにしろ、お前だって見た目は若いが私よりももう歳なんだから」

「分かってるよ、言われなくても――」

 そう言いながら玄関に入ると冬美也の悲鳴が聞こえ、走って来た。

「いやだぁぁぁ‼︎」

 しかもこちらに隠れてしまう程の怯えようだ。

「……はぁ、琴、お前なぁ怯えさせてどうする?」

「何を言いますか? 些細な事ですら感情1つで体が変異いえ変形するんですから、短期間で一切出さずに尚且つ己の意思でコントロールしなければ1番苦労するのはこの子自身なんですよ?」

 殺気が迸り、完璧にただのヤる側仕事人にしか見えない。

 他の子供達もまして元からいる子供達も皆、琴を怖がり出てこなくなっていた。

 ディダは琴に言う。

「うん、分かるけど、辞めよう? 他の子達も怯えてるから」

「琴、まずは怯えさせないから始めてくれないか」

 ジルは口にも顔にも決して出してないが怖がっていた。

『新徴組って怖っ!』

 だが琴も引き下がらない上、1番痛い所を突く。

「ディダ神父も良く見て、この子、感情の起伏でほら出てるんです。このまま私が帰っても、彼が帰国しても大丈夫なようにしないと、私生活支障来ますよ」

 それでもやり過ぎではと思い、今日はもう見舞いには行かずに冬美也と保護した子供達の面倒を見る事にした。

「分かるけども、限度があるでしょうよ。僕、これから理美ちゃんの見舞い行ってくる予定だったけど、これじゃ今日は行けないな……」

「ぼくも行きたい!」

 冬美也が行きたがる束の間、いつ来たのか、総一が後ろに居てすぐに却下する。

「ダメ、熱あるから基本面会禁止、大分落ち着いて来たけど、まだ熱下がり切ってないから」

「あれ? 今日午後から休みで?」

「いや、急遽貰って来ました。冬美也と直接話したくて」

「診療所ってそんなにホワイトだった?」

 例え、もうすぐ契約が終わり、休み消化している総一でも、診療所は隣町や近くの村の老人達もやってくるので、やはり1人抜けただけでも相当な筈だ。

「事情話したらなんか貰えました。冬美也、いつになるか分からないけど、母さんがこっちに来るんだ。それで来たら、暫く一緒に暮らさないか?」

「えっ……」

 電話越しよりも直接聞くためだけにやって来た総一に対し、冬美也はまだ心の準備もしてもいなければ、記憶についても話してもいない。

 それよりも、理美が退院後にはまた一緒に暫く過ごせるかもと思っていた矢先だ。

 実際嬉しい反面、凄く行きたくないと言う気持ちが強い。

 どうすれば正解か冬美也には分からなかった。

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