人生は映画のような・・・或る老人の独白
やるべす。
昔観たアドベンチャー映画を思いだした。
伝説の失われたオーパーツを求め遺跡発掘助手の何某が活躍するものだ。
金曜ロードショーで放映された時に、あの軽快なテーマ―ソングをテレビのスピーカーにWラジカセをくっつけて、カセットテープに録音したのが懐かしい。
窓の外はチラチラと雪が舞っている。
孫が庭で元気に雪だるまを作っていた。
ふと、私は鏡に写る白髪の自分を見て自虐的に笑った。
「私も年をとったものだ」
思わず、独り言を呟く。
かつての私は丘サーファーでピコなんかのTシャツを着て、ブイブイ言わせたものだ。
週末にはフットサル、私はFWで大会の準決勝でハットトリックを決めた時には、嫁が感動してグランドに入ってきて抱きついたのが懐かしい。
イケるそう思った。
そう、早速その日、私は彼女に告白した。
「君のつくったお味噌汁タベタイ」
最後は緊張してカタコト言葉になってしまったのは、ご愛敬だ。
「うふふ、嬉しい」
そして、俺たちは結ばれた。
嫁は計算づくだったんだな。
あの頃を思い出し、自嘲する。
あれが運命の交差点だったのか・・・だがおかげで私は今、こうして幸せだ。
人生はすごろくのようなものだ。
人生ゲームってやつもあるだろ?
あれはルーレットだけど、サイコロを振って運命任せのようなもの。
それでも努力や頑張った分だけ見返りもある、運命といいつつも、それを切り開くのは常に自分だ。
だから人生は面白い。
年を取ると理屈臭くなる・・・。
「ふっ」
時計を見た、まもなく3時だ。
孫におやつのお菓子をあげよう、とっておきのヴェルタースオリジナルを。
「おーい、めぐちゃんやおやつの時間じゃぞい」
ガチャリ、自分部屋の鍵を閉め、孫との楽しい特別な時間を楽しもう。
・・・・・・。
・・・・・・。
やはり孫は可愛い。
ガチャリ。
私は部屋へと戻る。
♪タッタッタッタッタッタッタッタッたら~ん!♪
老人はこれより密室で起きる恐ろしい事件に巻き込まれるのを知る由もない。
だが、それは杞憂か・・・彼は難事件を次々と解決したことで知られる鎮魂探偵、伊武受雷なのだ。
決め台詞は「いつも、まるっと真実ひとつ、事件は円満解決。孫にはヴェルタース」なのだから。
満足、満足。