森のコロポックル
心も体も疲れている方が多い現代、空気のいい森で生き返ったような気分になってもらえるとうれしいです。
森を舞台にした童話や黒猫ニャン太の恋などの童話を書いていきます。
『森のコロポックル』
ある所にコロポックルたちが住んでいる森がありました。これは昔話ではなく現代のお話です。
意外と皆さんの近くかもしれません。
その森にはコロポックルのヨウタくん、てっちゃん、ヤスダくんという仲良し三人組がいました。
人間界でいえば青年くらいかな。
森にはリス、フクロウ、野ネズミ、鹿さんもいて毎日にぎやかです。
コロポックルは、とってもちっちゃい体をしていますがすごい馬力です。
その馬力で雨に流された小川の丸太橋を三人でヨイショヨイショと架けなおします。
リスの巣も修繕するし、鹿が通るときに角が邪魔にならないよう枝もヨイショっと除けてくれます。
森のお助け隊です。
どれだけ小さいかと言うと、人間からは見えにくいくらいです、足音はピコんピコんと聞こえますがこれがけっこうよく響きます。
そしてとっても早口で、どんな早口言葉より早いかも。人間には「ルルルルー」としか聞こえません。
お家の屋根はフキの葉っぱです、一枚あれば十分足ります。踏みつぶされないように、岩の隙間や木々の間に建ててあり緑の屋根がステキなお家です。
ある時、ちょっと疲れた顔をしたおにいさんが森に入り込んできました。「ルルル~」
おにいさんはキョロキョロしています。何か声が聞こえるので周りを見渡したけど何の姿も見えません。「おにいさ~んルルル~」
「あ~びっくりした、足元で声が聞こえる」
「おにいさん、ここだよ」しゃがみこんでやっとコロポックル達を見つけました。
「こんにちは、おにいさんお名前は?」ヨウタ君が一生懸命ゆっくりお話します。
「僕は森ノ木森生、森生くんって呼ばれているよ、美味しい空気を吸わせてもらいに森に来たのよろしくね、でも君たち随分小さいね」
「そうね、僕たちはコロポックルと言う森の妖精だよ。この森を守るためにみんなで見回りをしているの、ちっちゃいけどとっても力は強いし頑張り屋さんだよ。でも三人で頑張るから平気なの」
「そうかいいね、三人で頑張れるってステキだね、ちょっとお邪魔しますよ」
「どうぞどうぞ、ゆっくりして行ってね」
「ところで森生くんは何歳?」
「どうしてそんなに疲れているの?」
「お友達はいないの?」
三人は代わる代わる矢継ぎ早に質問します。
「ちょっと待ってね、順番に答えるから」
森生くんは三人の早口にだいぶ慣れてきました。「では、お答えします、僕は35歳、お仕事が次から次へと押し寄せてくる、もう助けてって言うぐらいにね。息ができない。
頼まれれば断れない性格でつい一人で頑張っちゃう、期待に応えなければという気持ちで無理するのかな、君たちのように三人で頑張るから平気だよって言えるといいな。そうしていつの間にか眠れなくなるんだな。
気持ちって動いてないと腐るけど、動きすぎても壊れそうになるんだね。友達はいるよ、心配してくれて(自分が一番大事だよ、もうちょっといい加減に生きた方がいいよ)って言ってくれる、良い加減ね。 その時はそうだねって思ってちょっとゆるっとできるのだけど、また日常に戻ると同じことの繰り返しになる。
加減の具合がうまくいかない。もともと真面目だし、一旦思い込むと突き進む方だからね。あ~あ仕方ないなと思いながら頑張っている自分がいる」
「そうか森生くんはほんとに真面目なんだね。ゆっくりしなさいって言われて(はい)とゆっくりできればなんてことはないけど、それができないから、疲れちゃうんだね」
「そうなんだよ、自分でもよく分かっている」
「でもこの森に来て、緑に囲まれて良い空気をいっぱい吸って、木漏れ日からの日差しをあびているとほっこりするよね。会社であくせく仕事をするのがアホらしくならない?」
「ほんとにそうだ、体中をこのキレイな空気が駆け巡っている」
「森生くん、よかったら一緒に歩かない? お散歩しよう。もっともっと元気になれるよ」
「ありがとう、歩こう」
森生くんは、三人と一緒に森の中をゆっくり歩きます。てっちゃんは得意のジャンプ力でピョンと森生くんの肩に飛び乗ります。
ドングリや栗、椎の実が落ちています。草花もかわいらしくて逞しい。植物だけじゃないね、リスやフクロウが木の上からご挨拶してくれます。あれっと思ったら、カナヘビが舌をチロッと出しながら横切ります!
そっと横を見ると木の枝には、ナナフシ、クワガタ、カミキリが隠れるように止まっています。ピョコンっと何かが飛んだ! 青ガエル! ここはほんとに自由だね。
ヨシダくんがニコニコしながら言う。
「森生くん、また息がしにくくなったらこの森に来てね、待っているよ」「ありがとう、新しい自分に出会えた気がする、また来るよ」
気持ちも体もホッコリして、リフレッシュしていただけたら嬉しいです。