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バレませんように。

 ギルドを後にしたボクたちは買い物したり買い食いしたりして軽くぶらついた後、ドラグティカに帰って来て寛いでいた。

 【閃く双電】の居所を掴むために、まずは一番あちこちに行っているフィーネに聞いてみようと思ったのだ。何処かで情報を掴んでいるかもしれない。


「ねぇウィンちゃん、【閃く双電】さんと一緒に行くの?」

「んー、付いてきてもらえたら、とは思ってる。出かける前にアレクが言ってたことについて考えてたんだ。光剣ってざっくり言えば魔素の塊でしょ? 何がどうなって光剣で“混沌”が払えると言われているのかは分からないけれど、膨大な魔力をぶつけたら似たようなことになるんじゃないかなって思ったんだ」

「それで、強力な魔法が使える【閃く双電】さん、ってことかぁ」

『面白い発想じゃな。しかし、“混沌”とは魔素を吸収し、魔素を練り上げることで魔物や魔族を生み出す。下手をすれば強力な魔族が生み出されるやも知れぬ』


 ……あれ。そっか。そうかもしれない。声かけるのやめたほうが良いかな……。


「スーたちと【閃く双電】さんで倒せない魔族が生まれちゃったらどうしよう……」

「んー……その戦力で倒せない相手だったらまずいね。でも言ってもしょうがなくない? “混沌”を消せなかったらいつかは魔物と魔族が溢れて人類は遅かれ早かれ絶滅するだろうし」

『そうなる前に光剣を使えば良かろう』

「えーっ!!」

「仕方ないね……“混沌”を放置すればいずれはアレクは討伐されるときがくる」


 アレクを連れ出せれば戦力としては心強いんだけどな。ボクたちよりは弱いけれど、広範囲魔法はボクたちにない部分を補ってくれる。……まぁ、こんな図体のドラゴン連れてたら大問題になるし、そもそも出られないけれど。ドラグティカの天井ぶち壊すのもかわいそうだしね。……いや? アレクも一緒に《テレポート》で外に行けば連れ出せるのか? わからないけれど、どのみちアレクを連れ歩くことは出来ないから考えても詮無い事だ。


 光剣を使うということはつまりアレクを消さなければならないということで、胸を痛めるスフレを慰めていたら、話を逸らしたいのかスフレから別の話題を振られる。


「そういえば、どうして依頼書をギルドにお願いしたの? スーたちがで書いて直接本人たちに見せて依頼すれば、手数料とか面倒な手間も要らなかったのに?」


 確かに、普通指名依頼ならギルドを通す必要は無い。

 けれど、今回のことは異例も異例。冒険者が勇者に依頼するのもそうだし、討滅対象が“混沌”というのもそう。普通の勇者だったら正義感で動いていても、普通に罠だと思うだろう。胡散臭いにもほどがある。


「内容が内容だからね。普通の冒険者はまず受けてくれないよ。余程の聖人か、馬鹿くらいだろう。だから、ギルドを通すことである程度の信憑性を持たせたんだ」

「そっかぁ……受けてもらえるといいね」

「だね」


 そのためにはまず、あのパーティと接触しなくてはならない。

 ボクたちは魔族狩りをしながらフィーネを待つことにした。



 ♢ ♢ ♢



「【閃く双電】さん、ですか?」


 フィーネが来てくれたので早速話を聞いてみた。

 ちなみにフィーネも立ち寄った冒険者ギルドで“混沌”の場所を聞いてくれていて、ボクたちの持っている地図に記載されていない“混沌”の場所を追加しておいた。ボクたちが今得ている“混沌”の場所の情報は十四箇所になった。……多いな。って思っちゃったけど、全部で十四箇所ならむしろ少ないのかもしれない。……全部ではないと思うけれど。


「たしかここに乗り込んだ時に鎧がボロボロに砕けてしまったようで、オートリアの王様にここの内部の状況などを報告したあと、特注の鎧を作ってもらっていたはずなので、どこか当てがない限りはオートリアの王都からそう離れてはいないのではないでしょうか?」


 当てがない限り……。

 そもそも勇者とは、魔物や魔族から人々を守るために旅をしている。私たちのように“混沌”の討滅をするためではない。なので、好き好んで“混沌”に近づこうとはしない。けれど、魔族を狩って人々の安全を守るのが一番の目的なのだから、“混沌”の場所の把握はしておくに越したことはないので、“混沌”を探すことも目的に含まれている。逆に言えば、魔物・魔族の討伐と、“混沌”の発見・警戒。勇者の主目的はこの二つしかない。それ以外の目的があったとしても、それはそのパーティにおける独自の目的であって、全勇者共通の目的ではない。

 フィーネの言う“当て”というのはつまり、あのパーティが知る“混沌”の周辺の村を見て回る、ということだろう。


「装備はもう完成してるだろうし、王都には居なさそうだよね?」

「そうだね。そんなに離れていないという予想で動くなら、王都周辺の村のうち、“混沌”が近い村を優先的に探して見るのがいいかもしれない」


 さすがにフィーネも小さな村の一つひとつの記録石など持っていないし、風景も鮮明に浮かべることが出来るわけではないので、《テレポート》で何処にでも行けるわけではなかった。そんなことは当然なので、特に気落ちしたりすることでもない。それに、大体の見当は付いている。


「ここ、だよね?」

「だと思う」


 明らかに一つ、王都付近で村の近くにある“混沌”が一つ。とりあえず装備を新調して慣らすにはもってこいというか。勇者視点だとまずここによって安全確認をしたくなるほど近い。それに、王都にも近いから一番警戒すべき“混沌”だろうと思う。


「すみません……お役に立てなくて」

「ううん、いつもお世話になってるよ!」

「だね。ボクたちがここに籠っていられるのは間違いなくフィーネのおかげだ。感謝してる」

「そんな……私の方こそ、いつも黒鋼石をあんなに大量に買い取らせて頂けて……。商会のみんな、びっくりですよ。よく褒めてもらってます」

「それはフィーちゃんだから出来ることなんだよ?」

「うん、誇っていい」

「……ありがとうございます」


 ……いい笑顔。

 フィーネは少し自分のことを過小評価しすぎだと思う。一番優秀な商人だなんて言うつもりはないけれど、フィーネの代わりが務まる商人もそういないと思う。

 それから少し駄弁って売買を済ませた後、王都まで送ってもらった。フィーネはいらないといったけれど、お金は渡しておいた。フィーネの仕事には関係のないことだったし、時間も魔力も労力も全ては有限。魔法の腕にもお金を支払う価値がある。

 なぜ自分で《テレポート》を使わなかったのか? それは、ボクの魔法では届かない可能性があったから。【閃く双電】の属するオートリア王国は、実はというほどのことでもないけどボクたちの出身国でもある。もちろん王都の記録石も持っている。けれど、王都なんて数えるほどしか行ったことが無いし、記録石があっても鮮明に浮かべることが出来るかが怪しい上に距離的に結構離れていたので、もし届かなかった場合、次にフィーネが来るのを待たねばならず、そうしている間に【閃く双電】の行方がわからなくなってしまう恐れがあった。今が一番捕まえやすい。というわけで確実性を取ったのだった。




「王都、久しぶりだねー」

「だねー。でもボクたちはのんびり観光しに来たわけじゃないからね」


 早速王都から出て“混沌”の近くの村へ向かった。ダッシュで。

 そう。ボクたちは、馬車など使っていなかった。遅すぎるからだ。というよりはスフレが速過ぎた。ボクを抱えてなお速い。あちらのパーティは四人だし、うち二人は重装備。もう二人は魔術師の少女。移動はきっとそれほど速くないはず。大丈夫。追いつける。スフレの足なら。スフレは走るというよりは低く跳ねるように前へと進んでいく。スフレの見ている世界の流れる速さには慣れないけれど、スフレにしがみついているので安心だ。


 そんなこんなであっという間に村に辿り着いた。宿――は、聞いても客の情報を教えてくれなさそうなので、そこら辺の人に聞き込みをしようと思っていたところ、見覚えのある四人組の後ろ姿を見つけた。

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