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色々と酷いな…これ

遅れてしまい申し訳ございません。これからもこのような事が多々あるかもしれませんが全力を尽くしできるだけ早く書き終わるようにします。

「《魔力炉・解放》。」


「な、なんだ!?お前は!この魔力は!?」


「…ただの魔術師さ。」


同時に童の持っていたナイフが光り輝き、剣へと変化する。


「《身体強化》。ハンデだ。身体強化と剣術だけにしてやるよ。」


「なめ腐りやがって…Σκιά βέλος(影の矢)!」


詠唱によって放たれた影の矢が童へと迫る。そして、当たる寸前に、矢先が開き、狼のような形になって童を飲み込もうとする。それに対し、童は剣を振り回すが概念には気力か魔力を纏わない限り触れることすら許されない。そうして童は呆気なく矢に飲み込まれ、消えていった。


「はっ!口ほどにもなかったな!そのまま永遠に闇を彷徨え!」


魔術を放った男が言い放つ。


「そういうの、死亡フラグっていうんだぞ。」


そんな溜息混じりの冷ややかな声が背後から聞こえた。男たちが声のした方を見る。その声はやはり童のものだった。


「!な、なぜ…何故お前が生きている!?」


「はぁ?そんなの魔術を使ったからに決まっているじゃん。頭わるいのか?」


可哀想な人を見るような目で、男たちを見る。そう、例えるのならば、運動会で先生が走ることになり、ゴール直前で転んで最下位になってしまった時の生徒が先生に向ける目だ。


「お、おお、お前ぇぇぇぇ!!!」


「…約束を、破るなんて…」


魔術を放った男が顔を真っ赤にして、怒鳴り、もう一人の男も少しだけ怒りを孕んだ声でそういった。


「はぁ、何言ってんだ…いいか、約束ってのはな……破るためにあるんだよ!!」


童は悪びれもなく、というかドヤ顔で言い切った。


「こ、こいつクズだ!」


「…最低だな…」


「…お前らがそれを言うかよ…まぁ、それより、魔術式・第一(弾丸)・第二(加速)・第二十七(鎖状化)・第九十四(捕縛)、セット。」


詠唱と同時に数種の魔法陣が展開する。そして、魔法陣が輝いたかと思った途端に魔法陣が立体的に重なり、一つとなる。


「はっ!しまっっ…」


「ショット。」


男たちは気づくももう既に遅く、高速で放たれた鎖になすすべなく捕まってしまった。


男達が童を見上げると、鎖の一部が童の手に握られており、口はにやりと悪魔のような笑みを浮かべていた。そして、童はくるっと半回転して、腕を上へ持ち上げ、振り下ろした。


鎖に引っ張られ、男たちが宙を舞う。顔が真っ青な者や、叫んでいる者がいるが星の法則(重力)は容赦なく、いや、皆に等しくその負荷を与える。そしてそのまま星の法則(重力)に従って地面に叩きつけられた。


男達の中には幾人かは意識があるようだが、殆どがグテーっとして気絶している。それを見届けた童は未だ男達に繋がっている鎖を引っ張りながらベルの方へと歩き、治療を行おうとする。だが、


「っ!…不味い…」


今、ベルの体は限界を超えた動きをしたがために、内臓がぐちゃぐちゃになっていた。肺は潰れ、体中に酸素が行き届いておらず、心臓は潰れ、胃の中のものは胸腔に流れ込み、更に余った空間には血の池ができていた。だが、幸いなことに生命にとって、一番重要な魂がまだ消えておらず、さほど時間も経ってはいなかった。


「お前の誠意を私は見せてもらった。お前が頑張らなきゃ、もしかしたら不意打ちで皆んなが殺されていたかもしれない…だから、これがお前にとっての最初で最後のチャンスだ。魔力炉・魔術回路・展開。」


そう言うと童は先程とは雲泥の差の魔力を溢れさせる。童の右眼が再び黄金に輝く。その輝きは更に増していき、右半分の髪色をも黄金に輝かせ、肌をロシア人のように白くさせていく。


右半身は黄金に、左半身は日本人のままに。

それはさながら半堕天の天使のよう。そして、右手に黄金の、左手に漆黒の魔力を纏わせ魔を紡ぐ。


「《傷はやがて癒えるもの。しかして、死はそれを拒む。我が手はこの世界全てに届けるが輪廻には届かず。汝、死霊となりて未だ生にすがるのならば、我、今ここに汝の器を与えよう。擬似・死者蘇生》


詠唱と同時に右手の黄金の魔力がベルの肉体を構築していき、左手の漆黒の魔力がベルの魂をこの世に留まらせる。


やがて、血すら流れていなかった体にスゥスゥと呼吸の音が聞こえるようになった。それを聞いた童は安堵の表情を浮かべて、戦闘態勢を解き、右手で鎖に捕縛されたままの男達を引きずり、左手でベルをひょいと持ち上げ、別荘へと戻っていった。


________________________


「童様!…その方は?」


別荘へと戻って来た童をソフィアが出迎える。だが、帰って来た童は右手に男達を捕縛している鎖を、左手にぐったりとしている青年を抱えていた。ソフィアがそれをスルーするスキルがあるはずもなくキョトンとした顔で童に尋ねる。


「さぁ?危険な奴らだってことは分かるけど。」


「なんだ、お前。分かんねえのに捕まえてきたのかよ。また俺たちみたいなやつだったらどうするって…なんだこいつら…よく見たら影者の使者じゃねぇか。」


どうやらこの男達は割と有名な者たちだったようだ。それに対しての童の反応はというと…


「うわ、なにその厨二的なネーミングセンス。」


心の声が漏れるほど引いていた。


「「?厨二??」」


もちろんこの世界に厨二病という概念はない為、童が何に引いているのか全く分からない。それに童は「まぁ、あれだ。大の大人が恥ずかしい言葉を連呼しているようなもんだ。まぁ、魔術もだけど…」と軽く説明したが、ほとんどのものが何が言いたいのかよくわかっていない様子である。


「まぁ、とりあえずそいつらは屯所にでも連れて行くとして、ディラレンス様、これを。」


「?これは?」


「この青年がディラレンス様に体を張ってまで届けようとしていたものです。」


左手で持っている青年を持ち上げて童がそう言った。それを聞いてすぐさまディラレンスは封を開けて速読する。


「……っ!これは……!セヴァス!直ぐに避難の準備を!」


「かしこまりました。」


「くそっ!もう王女殿下がいるのがバレていただなんて…」


「「なっ!!」」


童が背後に回ってのぞいて見る。それにはどうやらディティールを狙っているダラーという国が国境付近で怪しげな行動をとっていたという内容であった。そしてそれを領主に報告する直前の襲撃であるため、影者の使者はダラーに雇われたと推測できる。


そして更に、襲撃があったということは襲撃が成功したとしても数日以内に誰の差し金かは分からずとも警戒されてしまい計画が失敗してしまう可能性がある。つまり、計画は…


「…計画は数日中……いや、数時間以内に開始される可能性がある……」


「「ッッ‼︎」」


一同が驚愕する。無理もない。敵の策略が早ければ数時間以内に実行されるかもしれないのだ。たった数時間ではできることなど限られてしまうのだから。


「童!」


「五本だけなら…」


「よし。フェル、ニクラス、皆さんに我が家を案内してくれ。」


「はぁ?主、頭おかし…って痛ぇわ!何しやがる!フェル!」


「ニクラス、少し黙って頂けますか?」


「あ、はい。」


フェルの静かな威圧がニクラスを襲い、つい敬語になる。今のを受ければ、セヴァスの威圧を受けたことのあるものなら親子だとわかるだろう。


「それで、まさか何の策も無いわけではありませんよね。」


「あぁ、今から二チームに分かれる。一つはここに残って迎え撃つチームだ。こちらは私の家族とセヴァス、童がメンバーだ。もう一つは本家に逃げるチーム。こちらはみなさんとニクラス、フェルがメンバーです。そして、本家に逃げるチームにはこの薬を飲んでもらいます。」


ディラレンスがそういうと、童は海のような色合いの液体が入った五つの試験管のようなものを取り出す。


「これは、一時間ほど姿を消すことが出来る薬です。今からこれを飲んでもらい全速力で我が家の本家に戻っていただきます。」


この薬は勿論、童によって作成されたものであり、童の魔力が光と反応した時にこれを飲んだ、又は浴びた者の姿を光を屈折させる事で姿を消すことができる薬である。


「おい、なんかへんな色してるけど大丈夫か?」


「特に副作用は無いので大丈夫かと思います。あと、開けたら直ぐに飲んでください。効果時間が下がるので。」


どうやら試験管らしきものには光を完全に遮断する魔術が施されているようで、それにより長期保存を可能にしているようだ。


「お、おおおい!いや、おかしいじゃねえか!我々はそんな物報告された覚えはねぇぞ!これは王族への謀反じゃねえのか?」


「いえ、私はこの『童』がおかしいと言う報告はしましたので謀反ではありませんし、この程度のこと…報告しようとしたらキリがないのですもの…」


ディラレンスは何もないところを見て悟ったような顔をした。それを見て王女達は理解した。ディラレンス()()()()()これで収まっているのだと言うことを…


「えーっと…これからも制御してください。」


「はっ!我が王に誓って!」


我が王に誓ってとはこの国の民、特に貴族にとっては最上の誓約であるのだ。そう、命に代えてでも制御するという強い意志がディラレンスにはあった。


だが、ディラレンスはひとつだけ間違いを犯した。それは童の前で危険生物だと言ったのと同義出会ったのだから。


ふらりふらりとディラレンスに近づき、顔を真っ赤にしながら気力を込める。


「私は!危険生物じゃ!ない!」


「まっ、待て!わら…ぐぼはっ!」


そうしてディラレンスの腹に108回木をも砕く勢いのパンチが炸裂し、数メートル吹っ飛んだ。




これが後に有名…にはならなかった煩悩粉砕・108殴打事件と呼ばれ、その場にいた全ての人(ベル、童以外)にトラウマを植え付け、全員が『童の悪口は言わない』と心に誓ったのだった。

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