魔女式、限界授業
思ったより早く書けました。ひたすら長い説明部分がありますが、出来れば最後まで読んで下さると嬉しいです。
「ん…アレ、ここは…あ、ふぐぅっ!」
「お嬢様!お目覚めになられましたか!あれから3日も寝ておられて、お目覚めになられたと思ったらまた倒れてしまって!心配したんですからね!」
起きたや否や飛びついてきたメイドのせいで再び眠りに落ちそうになるがソフィアは何とかこらえる。
「え、えーと、ごめんなさい。悪いんですけど記憶があいまいであんまり覚えていないので、出来れば教えてくれませんか?あ、待って!あんまり親には心配させたくないのでこのことは内緒にしてください。」
これは大変だ、と直ぐに主人に知らせようとしたメイドをなんとかせいしさせ、ソフィアはそういった。メイドは少し考える素振りをし、それからソフィアの瞳を見つめ、ため息をついた。
「わかりました。今は、お嬢様の言う通りにします。(これ以上、心配させてしまうと倒れてしまうかもしれませんし。)」
小声で言った言葉が聞こえてしまったソフィアは顔を引きつらせる。その表情を見たメイドは見なかったことにして話を続ける。
「お嬢様、記憶があいまいだということは私のことも覚えていらっしゃりませんね。」
ソフィアは無言でうなずく。メイドは返事を理解し、少し残念で悲しそうな顔をした。
「そうです、か。では、私がお嬢様に殿方の悦ばせ方を教えて差し上げたことも覚えていらっしゃらないんですね……」
「なんか、すみませ…ってなんて事を幼女に教えてるんだよ!」
「ふふ、冗談ですよ。それよりも、畏まらずに話せるじゃないですか。」
あ、とソフィアは理解した。彼女は私の為に冗談を言ったのだと。
「では、改めて、私はお嬢様の専属の侍女でございます、ウィザスでございます。ウィズとお呼びください。」
「あぁ、よろしく頼むよ、ウィズ。」
「お嬢様、一つ聞いてもよろしいですか?」
「え、いいけどどうしたんだ?」
「いえ、さっきから気になっていたのですが…お嬢様、いや貴女様何者ですか?話しづらいのならば深くは聞きませんが。」
だらりと大粒の汗が流れる。「なぜ?いつから気づいたのだろうか?」そんな疑問ばかりがよぎるが、取り敢えず大きく息を吸って深呼吸をする。そうして早々にバレてしまった事を話す決心をする。
「まさかバレていたとは……あぁ、そうさ私はソフィアじゃない。私の名前は加賀 童だ。どうやら、この世界ではない、別の次元の世界で死んでしまって、この世界の今の体に入ったっぽい。」
「なるほど…」
「お嬢様を返して!」と言われないか内心ドキドキしながらも、ゆっくりと丁寧に話す。この世界が乙女ゲームと呼ばれる世界である可能性が高いこと、もう本当のソフィアとは会えないかもしれないということ。だが、
「あ、それは心配しなくても大丈夫です。お嬢様の魂はしっかりとお嬢様の体にありますので。まだ眠っていらっしゃいますが目が覚めたら会話できますよ!」
「え、なんでそんなことわかるんだ!?」
当然のようにさらっとすごいことを言ったウィズに思わず聞いてしまった。
「なぜかって?ふっ、それはね……私が大魔法使いだからですよ!」
「は…え、え、えぇぇぇ―――――!」
物凄く香ばしいポーズをしながら間を溜めに溜めて言った。だが、ソフィアの表情はそれに反応したものではなく、に驚きに満ちていた。
大魔法使い……則ちそれは白夢語の世界の三大魔術師を意味する。星の断罪者であり、世界の守護者であるソロンモ、魔術大国インギリッシュの王にして、理想郷の番人であるマリーナ、最初の魔術師だとされ、正体不明であるwitch of first。つまり、今、目の前にいるウィズはwitch of firstであるということだ。ちなみに白夢語では、このうちのソロンモしか出てこない。
「まぁ、それは置いておいて……お嬢様はこのままではしんでしまうのですね…よし!分かりました。では私が童ちゃんに魔術を教えます。だから私の代わりにお嬢様を守ってくれませんか?」
「は?」
「だから、私の代わりにお嬢様を守って欲しいのです!」
「いや、ウィズが守ればいいじゃん。大魔法使いなんだから。」
当たり前の反応だろう。自身よりもずっと強いものに守って欲しいと言われてもその人が守る方がずっと成功する確率が上がるのだから。だが、
「私もそうしたいのはやまやまなんですが…本業で別世界に行かないといけないんですよ。ハス…なんちゃらさんていう触手だらけでめっちゃ気持ち悪い奴なんですけど。そいつちょっとぶっ殺さなきゃいけないんですよ。本当最悪ですよ!まあ、それは置いといて…取り敢えずあと1ヶ月ぐらいはいるんで大丈夫です!それに、時間操作で時間速度を通常の百倍の速さにもできるので!世界最強レベルにはしますよ!覚悟してくださいね!」
また、さらっとやばいことを言った。ハスなんちゃらさんって名前で触手と言えば、十中八九クトゥルフ神話のハスターだろう。それを「ちょっと散歩行ってくる」みたいな感覚で倒そうとしているのだ。さらに1ヶ月のの百倍、つまり8年と4ヶ月間分の時間を一か月間で過ごすということだ。それも世界最強レベルということはその時間でもほぼ無理だろう。だが、
「え、本当か!魔術なんて日本人みんなの夢(偏見)じゃん!それもウィズみたいな大魔法使いに教えて貰えるんなんて最高じゃねぇか!」
興奮しているはソフィア気づかない。無理もないだろう魔術なんて日本人みんなの夢(偏見)なのだから。そうして、ウィズの地獄の訓練が始まった。
「そう言ってもらえると嬉しいです!いやー実は産まれてこの方弟子なんて取ったことなんて無かったので、上手く教えられるか分かりませんが、死んだら元も子もないので、最低でも死なないことだけを考えていれば大丈夫です。」
「わかっ…え、いまなんt」
「そうと決まったらさっさとやるよ!時間は1分1秒も惜しいんだから!」
ソフィアの言葉を遮りるように大きな声でウィズはそう言った。まるで「やっぱ無理です。」と言わせないように遮ったようだった。
「いや、だから…あ!ちょっ、まっ!」
「さあ!私の世界へ行くよ!das Jenseits !」
そう唱えるとソフィアの意思など関係なしに小さく開いた次元の穴に吸い込まれたそこは木々の生い茂る森林だった。そうして、ウィズの地獄の授業が始まった。
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ソフィアの日記・1日目
ウィズさんは鬼の化身、いやもっと質の悪い生き物だ。絶対無自覚のままひとを殺している。あの人は人の限界というものを知らないんだ。世界で一番教師にさせてはいけない。はぁ、これが後何年も続くのか。あ、もうこんな時間だ。明日、朝早いから寝ないと…でないと死ぬ。日本人の夢を叶えるため、がんばれ、明日の私。
ソフィアの日記・2日目
今日も死ぬかと思った。限界まで魔力を渡されて、魔術を使う、でも失敗。また魔力を渡されて、また魔術を使って、また、失敗。そしてまた、魔力を…以下省略。ダメだ、頭が回らない。もう寝る。
ソフィアの日記・3日目
なんとか理由をつけて休もうと思い、「親が心配するから流石にそろそろ戻らない?」と言ったら「大丈夫です!そのために魔術があるんですから!」と言われた。やっぱ私が守る必要なくね?
ソフィアの日記・4日目
なんだろう、最近記憶が飛んでいる。気づいたら授業が終わっていた。もしこのままこの調子ならいけるかもしれない。
ソフィアの日記・7日目
やっぱ無理だった。(赤いインク)
ソフィアの日記・30日目
今日、ウィズの魔術を避けられず死んだ。でも生きている。なんでだろう?死にかけすぎて幻想でも見たのかな?
ソフィアの日記・360日目
まだ生きている。今日は魔術と武術を組み合わせた実践をした。何度か「あ、しまった。」とウィズの声が聞こえたあと、頭がぐしゃぁ、とされる幻想を見た。妙にリアルだったけど、幻想だ。多分。
ソフィアの日記・1927日目
まだ生きている。まだ生きている。まだ生きている。
今日は時間操作の魔術を習った。どうやら指定した物体の時を戻すことができるらしい。時間は限定されるが。もしかしてあれは幻想ではなくて…いや、きっと幻想だ。幻想だと祈ろう。
ソフィアの日記・2880日目
今日、ウィズに聞いた。やはり、1927日目の予想は当たっていたらしい。…私は今、生きていると言っていいのだろうか?
ソフィアの日記・2900日目
今日、ソフィアの意識が目覚めた。ソフィアは優しくて、可愛い。私の唯一の回復剤だ。授業中も話すことができて嬉しい。もちろん、感覚は遮断しているが…
ソフィアの日記・2999日目
やっと、やっとだ!やっと明日でこの地獄が終わる!
この地獄が終わったら私は満足するまで寝ると決めた!明日が楽しみだ。
ソフィアの日記・3000日目
ゲンジツセカイデアトイチニチダイジョウブダッテ、アトヒャクニチガンバルゾ…
ソフィアの日記・3001日目
きょうは、からだの、いろんなところから、いっぱい、ちがでました。くるしかったです!あしたもがんばります!(全て丸文字)
ソフィアの日記・3050日目
魔法とは魔術の一部であり、しかして魔術ではない。魔法とは、魔力を使わずに同じ現象を行うことができないものをいう。
そして魔法を使うことのできる者を魔法使いといい、現状では私を含め十人しか使えない。さらにその十人の中でトップ3が星の断罪者であり、世界の守護者であるソロンモ、魔術大国インギリッシュの王にして、理想郷の番人であるマリーナ、最初の魔術師だとされ、正体不明であるwitch of firstである。
魔術にも勉学と同じように科目が分かれており、大まかに理学科、文呪科、霊科、神秘科、に分かれており、さらに理学科は物理魔術、化学魔術、に分かれ、文呪科は古代文呪魔術、現代文呪魔術、美術魔術、に分かれ、霊科は、降霊同化魔術、霊化魔術に分かれ、最後に神秘科は、神秘神霊魔術、神秘神言魔術、神秘自然魔術、そして、例外である事象変動魔術これが魔法であり、上記の通り、魔術であって魔術でない理由だ。
また、この世界は私の世界と酷似していた。例えば、月や太陽、星だ。しかも名前までがまったく同じなのだ。更に言うと神話もほぼ同じで、唯一違うものといえば魔術ぐらいだ。あ、あとは化学があまり発展していないことだろう。
そして、私が習得した、私の使用する魔術は化学魔術であり、魔法である化学的錬金魔術である。これは物質が原子で作られていて、更に原子は決められた数の電子が原子核の周りにあり、その原子核の中には決められた陽子と中性子があることによって原子が確立される。つまり、その陽子、中性子、電子を爆発させずに操作できれば、錬金術師の求めた真理、石ころから金を生成できる。そう、やろうと思えば私は世界最大の金持ち貴族になれるのだ。まぁやらないけど…なんだか今日は妙に頭が冴えた。おっと、書きすぎてページがなくなりそうだ。なんか…嫌な予感がする…
ソフィアの日記・ ¥%+○日目
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ソフィアの日記・3099日目
危なかった。ソフィアのお陰でなんとか理性を保つことができた。やはり、ソフィアは私の唯一の回復剤だ!でもなんか不吉な予感がする。しかも、今までの比じゃない。なんか ここにいないはずの黒猫が横切ったり、靴紐が切れたり、食器が触ってもいないのにバリバリ割れたりで、不吉な予兆が起こりまくってて怖い。…明日本当に死ぬんじゃないかな…
4000日目……
「童ちゃん、今日までよく頑張ってくれました!初めて弟子を取ったのでどうなるか心配でしたけど、私教師にむいてますね!」
「あんたがむいてんなら、この世全ての人が向いてるわ!人を殺したくないなら、もう二度と教師にはなるな。」
「?時間変動魔術があるから死なないよ。」
「こいつ、もうだめだ…で、今日は何するんだ?今日が最後だからパーティーでもするのか?」
「いえいえ、そんなわけないじゃないですか。」
「だよなぁ、はぁ。」
ソフィアは思わずため息をつく。8年も一緒にいて、何度も殺され、教えられたのだ。しかも休みの日などなしで。分からないという方がおかしいだろう。そうしていると、
「大丈夫です!童様ならきっと乗り越えられますよ!」
そういったのはソフィアである。ソフィアはウィズの魔術によって肉体と魂を切り離されたことで今、半透明の魂の状態で見守っている。
「仕方ないなぁ、よし!頑張るか。」
「では、最後の私の授業は…こいつを倒すことです!えい!」
ウィズは掛け声と同時にいつのまにか現れた杖を地面についた。すると、幾重にも重なる魔方陣が展開される。そして、ぱっと一瞬光ると黒い瘴気と共に赤黒い目をした三首の猛犬が現れた。
ア"ア"ア"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"_______________
魂をも震わせる雄叫びが響いた。一瞬の静寂。直後、六つの目がソフィアを凝視する。金縛りにでもあったかのように体が硬直する。
「おいおい、嘘だろ…こいつ、まさか…」
「そう!最後の授業はこのケルベロスを倒すことです!」
そう言うと同時に再びケルベロスは開戦の合図かのように雄叫びを上げた。
前書き、後書きって何書けばいいかよくわかんないですよね…
あと、ウィズが何でソフィアが生きているか分かったかというと霊的物体を捉える目を持っているからです。