第一章 捨てられた者たちの「王」
初投稿なので生暖かい目で読んでやってください。。。
「こら!また悪戯したでしょ!!そんな悪いことばかりしてると地獄に落ちるわよ!」
昔、母さんが悪戯をしでかした僕達によく言っていたセリフだ、隣で正座している幼い彼女は「地獄」という単語を聞くだけで僕の鼓膜が破けそうになるくらい泣き叫んだ。
僕はずっと疑問だった、死ぬ前に悪いことをした人々の行きつく先が地獄なのなら、地獄に落ちた人々はいつか救われるのだろうか?もちろん悪いことは悪いことだし、その罰として地獄に送られるのも分かる。
でも、彼らがどんなに悪い人だったとしても、業火に焼かれたり針の山に投げ込まれたりするのはあまりにも可哀想だと思った。
「地獄に落ちた人たちを助けるにはどうすればいいですか?」
友達や先生に片っ端から質問したが、誰も僕の問いに答えることはできなかった。遂に困った僕は小学校へと続く通学路、そのちょうど真ん中にある小さなお地蔵さまに毎日2回手を合わせてお願いをした。
「どうか、僕の代わりに地獄にいる人たちを助けてあげてあげてください」
-身に余る願いだと知りながら少年は願い続けた、雨の日も風の日も。それが意味のないことかもしれないと自分自身で分かっていたとしても。願うことだけしか少年にはできなかったのだから。
-----------------------------------------------------見つけた、私たちの「王様」を
皆さんは「加護」を受けているだろうか?
神による「加護」が本当にあると話したら、どれくらいの人が信じてくれるだろうか。
加護とはざっくりと説明すると神様が気に入った人間に力を加え、守り助けることである。(「気に入った人間」というと語弊がある言い方かもしれないけれど)
つまり加護の種類や私たちに加護を与えてくれる神様の違いによって個人差が生まれるということだ。
分かりやすい例を挙げると、例えば「すごく運がいい人」だ、「すごく運がいい」人間は幸運を司る神様の加護の恩恵を受けている人間が殆どだ。逆に言うと「すごく運の悪い」人間は不運を司る神様の加護を受けている場合が多い。しかしこの二つのタイプの人間も珍しい方であり、普通の人間はどちらの加護も与えられていない。
基本的に神様は自分の管轄下にある人間に加護を与えることが普通であり、そのためメジャーな宗教を信仰している人間は宗派ごとの小さな違いはあれど基本的に同じような加護を受けていることになる。
そもそも平和な現代において加護自体にそこまで強力な力はなく、人より風邪をひきにくくなるなどの小さな加護しか与えられることはない。そもそも「加護」自体が人々の間では知る人ぞ知る都市伝説レベルの話であり、信仰の薄く加護を持たない大多数の人々は信じようともしなかった。
ある日、物好きたちの間で強力な加護を受ける「加護持ち」と呼ばれる人々の噂が流れ始めた。
例えば大事に飼われていた犬が飼い主を守る守護霊となり、さらに時代を経て大犬神へと進化し、それを従えるようになった犬神使い、例えば墓場の管理人が生霊達の加護を少しずつ受けることで死体の軍団を操ることができるようになった、などの眉唾ものの噂が流れるようになった。
こうして嘘のような「加護持ち」の人間たちの噂は見事オカルトオタクの話題を席巻し、その界隈ではUMAや幽霊に次ぐメジャーな存在となっていった。
そして、幼少期の無垢な小さな願いを聞き届けられた優しい小さな「王」は、成長しその身に余る「加護」に日々手を焼いていた。